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黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》  作者: Siranui
第四章 剣血喝祭篇
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第九十八話「歪んだ闇」

 任務 ロスト・ゼロ作戦の成功

 遂行者 黒神大蛇、白神亜玲澄、エレイナ・ヴィーナス、武刀正義、カルマ、エイジ、ミスリア・セリウス、クロム・セリウス


 正義がトドメを刺すべく生徒の方に向かってくるが、彼は動く動作を微塵も見せず、ただ敗北という名の現実に嘆いていた。


「くっ……こんなところで負けるのか! まだ始まって3日も経ってなっ……!?」


 言い終わる途中に突如視界に白銀の刃先が迫ってきた。まるで最後の言葉を聞くかのように、正義は冷酷な目で生徒を見つめていた。


「黙れ。目の前の事にしか考えれねぇクズが」

「んだと……? いつまでも調子乗るのもやめたらどうだ女たらし!!」

「ゴアアアアアアアッ!!!」

「きゃっ……!!?」


 何故か先程の化け物が一回り小さくなってはいるものの少女の背後から闇の炎を吐き出す準備をしていた。


「――!」


 ブレスが来る前にすぐに少女を抱えて後方に下がる。その直後、少女がいた場所は黒く焦げ落ちていた。


「危ねぇなおい……」


 あと少し遅かったら俺も少女と共に灰になってただろうな。咄嗟(とっさ)の行動だったが故に俺の脳に救われた。俺も、この子も。


「お兄……ちゃん」


 誰か分からないような、されども助けを求めてるかのような目で俺をじっと見つめてくる。小学生くらいだろうか。俺は少女に笑いながら一言投げかける。


「あんなバケモンは兄ちゃんが何とかしたる。変身して華奢な格好して魔法なりなんなり使ってやるわけではねぇが、ぜってぇ嬢ちゃんには指一本も触れさせねぇよ」

「……ありがと、お兄ちゃん」


 安心したのか、少女はにっこりと笑った。この顔がいかに愛おしいことか。そんな顔見せられたら有言実行以外の選択肢なんてねぇだろ。


 一先(ひとま)ず俺は少女を安全な場所に避難させるべく、店の中に入れる。


「いいか、ここから絶対出るなよ。終わったら迎えに来るからよ」

「う、うん……負けないでね……!」


 余裕の笑みを浮かべ、すぐに振り返って正面に刀を構える。その下で生徒の身体に黒い塵が取り込まれていくのが見えた。


「何だ……あれ……」

「―――――!!!!!」


 言葉ではとても表現出来ない程の狂った声を発しながら生徒は闇を己の身体に取り込んでいく。佐世保の空を闇に染める。生徒の身体も、アルスタリア高等学院の制服も黒い塵に覆われる。


「ゼンブ……コワス……ミナゴロシダアアアア!!!!」

 

 床に落ちた剣を拾って頭上に掲げると同時に赤黒い闇が落雷の如く刀身に纏い、正義の方に振り下ろす。

 一瞬にしてとてつもない音と衝撃が店を襲った。建物はバラバラにされ、その向こうに広がる川の一部も真っ二つに斬り裂かれる。


「マジかよ……」

「オレニクワレロオオオオオ!!!!!」


 化け物と一体化した生徒は強く地を蹴っては赤黒く染まった魔剣を振り下ろす。正義も必死にその攻撃を受け止める。


「くそっ……どうなってんだこのバケモンは!!」

「ミンナ……コロス!!」


 力で押し負けそうになる。ミシミシと正義の踏み込む足と剣を受け止める両腕が悲鳴を上げる。


「アアアアアアアアア!!!!」

「ちっ――!」


 このままでは押し負けると判断し、正義は剣を滑らせると同時に後方に引き下がる。滑った直後に剣が地面に突いてはクレーターのような巨大な穴を作り出す。


「なんちゅうパワーしてやがんだ!」

「ガアアアアアアア!!!!」


 化け物が地を蹴る度に一気に距離が縮まる。その度に魔剣が振り回され、危機一髪で受け止めては避ける。反撃の余地など無い。


「追いかけっこは通用しねぇってか!!」


 先程石段にぶつけた時の痛みを背負いながら、正義はひたすら化け物との距離をとる。しかし、その倍の速さで化け物は迫ってくる。


「オレにコロサレロオオオオオ!!!」

「ちっ、正面突破しかねぇのかよ!!」


 正義は距離をとるのを諦め、後ろに刀を構える。


七剴抜刀(しちがいばっとう)疾風迅雷(しっぷうじんらい)!」

「ウセロ……!」


 化け物の剣が再び赤黒い闇に包まれ、正義の刀が青白い光を(まと)った。お互い相反するオーラを纏わせながら突進する。

 

 刹那、光と闇の二刀が交差した衝撃で佐世保市が大きく揺れた。しかし市民はこの戦闘など知りもせず、地震だろうと勘違いしては納得するだろう。


 長崎の危機を目の前にして――

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