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触手になりたいお姫様 ~カッコイイ触手に弟子入りして超柔軟になった体で立派な姫を目指します~  作者: エタメタノール


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第6話 姫様、免許皆伝!

 ある日森の中、ミリア姫は熊と対峙していた。


「熊さん、手加減はいらないからね!」


「ガウッ」


 うなずく熊。いつの間にか意思疎通できるようになっている。ミリアは柔軟性以外のところも人間離れが進んでいるようだ。


「グオオッ!」


 熊が前足でミリアに殴りかかる。


「よっと」


 ミリアは危なげなくかわす。

 師匠が感心したようにうねる。


「ほう……」


 ミリアは触手三ヶ条を思い出していた。


 ――いつでもウネウネ柔らかく!


 恐るべき柔軟性で熊の攻撃をひらひらかわす。


 ――素早くしなやかに!


 熊のバックを取った。


 ――狙った獲物は逃がすな!


 熊の背中に飛びつき、絡みつくように首を両腕で絞める。

 だが、ミリアの腕力ではさすがに熊を絞め落とすことはできない。こればかりは人間の限界である。


「そこまで」


 師匠がストップをかける。

 互いによくやったと、握手を交わすミリアと熊。


「ミリア」


「は、はいっ!」


 師匠のいつにない雰囲気うねりかたに、緊張するミリア。


「今の戦いぶり、俺から見てもまさに触手だった」


「ありがとうございますっ!」


「免許皆伝だ」


「免許皆伝……!」


「お前はもう、触手を名乗ってもいい。人でありながら……立派な触手になった!」


 ミリアの目に涙が浮かぶ。熊も笑っている。


「ありがとうございます、師匠! うれじいですっ!」


「おいおい、鼻水まで出てるぞ」


「あ、すみません」


 ハンカチで鼻を拭う。


「しかし……免許皆伝といっても渡せるものがないな。これが武術の師匠なら、何かを授けたりするのだが」


「お気持ちだけで十分ですよ!」


「いや……何か考えておく」


「楽しみにしてます!」


 ついに師匠に認められるほどの柔軟性を身につけたミリア。

 まだまだ師匠のうねりには及ばないが、触手になるという夢は、一つの到達点に達したといえた。


 帰り道、ミリアは森の動物たちに自慢しながら帰った。


「私、ついに免許皆伝したの! すごいでしょ!? やったーっ!」


 ウネウネするミリアに、ウサギやシカがきょとんとしていたのは言うまでもない。



**********



 城内の通路を優雅に歩くミリア。所作は優雅であるのに、スピードはかなりのものだ。師匠の教え、「素早くしなやかに」を意識せず実践している。


「お兄様!」


「うおっ、どうしたミリア!」


「私ね、とうとう師匠から免許皆伝してもらったの!」


「ホントか!」


「ホントよ! 見て!」


 手足をうねらせ、柔軟性をアピールするミリア。皆の前でダンスを披露した時よりさらにキレが増している。


「すげえぜ……まさに人間触手!」


「ありがとう、お兄様!」


 ここでミルド、ある閃きが浮かぶ。


「ミリア、頼みがあるんだが」


「なに?」


「俺の王子部隊に、ちょっくら稽古をつけてやってくれないか?」


「稽古?」


「剣術にだって柔軟性は重要だ。ミリアの柔軟性をあいつらにも叩き込んでやりたいんだよ」


「無茶だよ! 私、剣に関しては素人だし、お兄様の部隊の人に教えられることなんてないよ」


「大丈夫だよ。熊と張り合えるお前なら、ましてあの触手に認めてもらえたお前なら、資格十分だ」


「うーん……」


 まだ悩むミリアに、ミルドはこの通りと頭を下げる。土下座までしかねない勢いだ。

 実の兄にここまでされては、ミリアも無下に断るわけにもいかない。自分だって、無理言って弟子入りしたことがあるし。


「分かった、やってみる!」


「よっしゃ、さっそく部隊の連中を呼び出してくるよ」



**********



 城の中庭にて、ミルド率いる王子部隊の演習は行われる。

 芝生に30人もの屈強な戦士が集まっている。

 剣を携えたミルドが、皆に告げる。


「みんな、ミリアの柔軟性は既に知っての通りだと思うが、今日はミリアが指導してくれることになった。

 ミリアは剣こそ使えないが、得るものは多いと思う。みんな、心して指導を受けてくれ」


「お願いします!!!」


 王子部隊の精鋭たちが、一斉に頭を下げる。

 ミルドが選抜しただけあって、一人一人が兵士数十人分にも相当する猛者だらけ。

 ミリアは気後れしないよう胸を張る。


「じゃあ、まず軽いストレッチからね」


 ミリアは前屈すると、楽々掌ごと地面についた。


「はいっ!」


 日頃から鍛えている精鋭たちもこれぐらいはできる。


「じゃあ、もっと曲げるね」


「え」


 ミリアはさらに前屈し、完全に折りたたまれてしまった。


「くっ……!」


「で……できない!」


「なんて柔らかさだ!」


 できない者が続出する。


「次は腕のストレッチね」


 グニャリ。これもありえないほど曲がっている。


「腰を曲げるよ」


 グルン。ミリアは足は前を向けたまま、真後ろを向くことができる。


「首を回すね」


 グリン。梟のような回し方をする。


 マイペースでストレッチするミリア。必死に喰らいつこうとして体を曲げるが全くついていけない精鋭たち。


 ストレッチが終わる頃には、王子部隊の面々はぐったりしていた。

 ミルドも途中までは頑張っていたが、息を切らしてダウンしている。


「あれ? みんなどうしたの?」


「ミリア……もういい。これ以上やると、みんな壊れちまう……」


「分かった! じゃあ私、家庭教師さんのところに行くからね! 姫としての修行もしなきゃいけないから!」


「ああ……頑張れ……」


 去っていくミリアを見つめながら、ミルドはつぶやいた。


「この短時間で俺の部隊を壊滅させるとは……。我が妹ながら恐ろしい奴……」

次回より隣国絡みの話になります。

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