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触手になりたいお姫様 ~カッコイイ触手に弟子入りして超柔軟になった体で立派な姫を目指します~  作者: エタメタノール


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最終話 触手姫は今日も元気にうねる

 ミリアが手招きする。


「こっちこっちー!」


「う、うん」


 森歩きに慣れてないエディはだいぶ手こずった。

 森の奥深くでは、師匠がいつもと変わらぬ様子で佇んでいた。


「この方が……私の師匠よ!」


 陸上の巨大イソギンチャクな師匠に、エディが挨拶する。


「初めまして……!」


「初めまして。弟子が世話になっている」


「いえ、僕の方こそミリア姫には助けられて」


 師匠が値踏みするようにうねる。

 ウネウネウネ……。


「なかなかどうして……いい目をしている」


「ありがとうございます!」


「エディ様、あなたは弟子じゃないからへりくだらなくてもいいのに」


「いやぁ、この触手さんの迫力の前だと……」


 笑うミリアとエディ。


「さっきの私の戦いぶり……ビックリしたでしょ」


「うん、驚いた」


「あれ……全部師匠に教わったんだ」


「そうだったんだ……ものすごく柔らかかったものね」


「ひょっとして……ちょっと嫌いになったりした?」


 すると、エディはきょとんとした顔をした。


「嫌い? なんで?」


「だって……あんなにうねる女の子嫌でしょ?」


「全然!」


「え……」


「さっきのうねる君……本当に凄かった。あまりに凄くて、大ピンチなのに美しさすら感じてたよ。君のことを嫌いになるなんてありえない。

 むしろ……ずっとあんな君でいて欲しい」


 社交辞令ではない、本当の愛情がそこにはあった。


「ありが……とう」


 抱きしめ合う二人。


 師匠が祝福するようにうねりながら、エディに言う。


「俺の大切な弟子だ……悲しませたら承知しないぞ」


「はい……もちろんです! 僕はミリア姫を……ミリアを幸せにしてみせます!」


「お前の心には決して折れぬ強い“芯”を感じる。触手なミリアとは相性がいいのかもしれんな」


「だから私たち、こんなにラブラブになれたんですね、師匠!」


 嬉しそうにうねるミリア、笑うエディ。師匠は安心した。この男になら弟子を託せると――


 その後、エディのことはミルド率いる王子部隊が厳重に警備し、リナートへ送り届けた。




 なお、ミルドはこの日二人を完璧に守れなかったことをいたく反省し、


「お前らーっ! 今日からビシバシいくからなーっ!」


「おおおおすっ!!!」


 王子部隊の更なる強化を誓う。

 ミリアは「あんまり無茶しないでね……」と兄を窘めるのだった。



**********



 お忍びデートから半月後、プラン・リナート両王国の国境近くの砦にて、『ミリアとエディの婚礼』及び『同盟の結成式』が開かれることとなった。


 ウェディングドレスを着たミリア。


「おお……よく似合ってるぞ。まるで天使のようだ」


「綺麗だわ。母として誇りに思います」


 娘の晴れ姿を喜ぶ両親。


「素敵です、ミリア様!」


「うう……いいものを見られましたぞ。この目に焼きつけまする」


 感激するリンとセバス。


「ミリアアアアアアッ! 最高だ!」


 無駄に熱いミルド。が、この熱さが今となっては恋しくもある。


「ありがとう、お兄様!」


「さあ、弟が待ってる。行ってこい!」


「はいっ!」


 ウェディングドレス姿のミリアを見て、エディは凛々しい表情でささやく。


「綺麗だよ……ミリア」


「ありがとう……エディ」


「行こう。みんなに君の美しい姿を見せてあげるんだ」


「うん!」




 盛大なファンファーレが鳴り響き、婚礼が始まった。


 レッドカーペットを歩く二人。

 両国の重臣のみならず、市民も集まる中、ミリアとエディの姿に大勢が見惚れた。


「みんな、ありがとう!」元気よく手を振るミリア。


「皆さん……ありがとう!」微笑むエディ。


 そして――


「ねえ、エディ」


「ん?」


「あれ……やってもいい?」


「もちろんさ。今やらないでどうするんだい」


「そうだよね」


 愛する夫の快諾を得て、ミリアは前に出る。


「みなさーん、今から私がダンスを披露します!」


 知らない者は歓迎するが、知ってる者は「え!? やるの!?」という顔をする。

 ミルドはニヤリと笑う。


「いきまーす!!!」


 ウネウネウネウネウネウネウネウネ……。


 ウェディングドレスを着た、17歳を迎えたばかりの姫による触手ダンス。


 最初は呆気に取られてたが、すぐにみんな気を取り直し、拍手を送った。

 ミリアの奏でるダンスはもはや芸術の域に達していた。だいぶ前衛的ではあるが、みんなの心をぐっと掴んだ。


「私、素敵な姫でありながら……素敵な触手を目指します!」


「僕は妻の夢を心から応援します!」


 会場は大盛り上がりとなった。

 プラン王国もリナート王国もノリのいい国民性だった。


 呆れながらも微笑む両親、大笑いするミルド。


「よくやったぞ、ミリア! 妹を頼むぞ、エディ!」


 婚礼後の同盟結成式も滞りなく終わり、プラン・リナート両王国は正式に手をつないだ。この同盟が両国にもたらす利益は計り知れない。



**********



 婚礼から三ヶ月後、ミリアはリナート王城で暮らしていた。

 新米の侍女がミリアに話しかける。


「ミリア様」


「はーい」


 グルンッ。首を勢いよく曲げる。ありえないほど曲がっている。


「んぎゃあああああああっ!!!」


 悲鳴を上げる侍女。


「あ、ごめんなさい。あなた入ったばかりで、私のことあまり知らなかったっけ」


 侍女を優しく撫でるミリア。その師匠譲りの撫で方に、新米侍女もたちまち笑顔になってしまう。


「ミリアー!」


 顔つきがいくらか逞しくなったエディが声をかける。


「あらあなた。なあに?」


「今日はいい天気だ。一緒に出かけないか?」


「そうね。ピクニックを楽しみましょ!」


 どうやら上手くやっているようだ。

 ミリアは嫁ぎ先でも柔軟性を発揮し、リナートの“触手姫”として名を馳せていくこととなる。



**********



 ある日森の中、熊が師匠に新聞を届ける。

 どこかにあったのを、こっそり拾ってきたのだ。


「ありがとう、クマ公」


「ガル」


 師匠が新聞を見る。

 一面にはリナートに嫁いだミリアのことが大きく載っていた。


『またまたお騒がせ触手姫!? 城に入った賊を得意の柔軟性で捕獲!』


 この記事を読んで、師匠は嬉しそうにうねった。


「相変わらず元気にうねってるようだな。我が弟子……ミリアよ」






~おわり~

以上で完結となります。

自分としては長い作品となりました。

読んで下さりありがとうございました。

感想等あれば書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

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[一言] お祝いのうねうね(人間の範囲で) いつまでもお幸せに
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