いざ逝きたくない!そして迷った!
…………………
「あああぁぁ………………だりぃ……………ねみぃ…………………帰りたい……………なんで俺が、朝っぱらこんなところに来ることに………………」
そう愚痴りながらため息をつき、同時に顔を上にあげる。
目の前には、見上げるのもしんどいレベルの、王城と大差ない大きさを誇る学園があった。
それを見て俺は、2度目のため息をつく。
王立学園オルタナ
王国屈指の学園にして、五星学園の一つ。
かつての五大賢者が設立した学園の一つで、それぞれの力の象徴である『剣術』『槍術』『魔技術』『神聖術』『錬金術』の5つに分かれている。
そしてそれぞれの科目に合わせた試験が行われ、上位5人がランクA、その下の20名がランクB、それより下の30人がランクCとなっており、ランク上位者にはそれに見合う特権などが与えられる。
つか、何故こんな長ったらしい回想をしているかと言えば、現実逃避直下の面倒ごとがあるからだ。
事の始まりは昨日。
寝ぼけながら行った会議場で、いつも通り軍の会議中に寝ていると、いつの間にか多数決で王女の護衛騎士に任命されていた。
いや、ほんとに何を言ってるのか分からないかもしれないが、俺もよく分からないから責めないでほしい。つか、軍の奴らの頭が逝ってることだけは理解出来たが。
そして国王にめちゃくちゃ頭下げられて頼まれたため、渋々護衛になることになった。決して学園寮に最高級の寝具を設置するという言葉に誘惑されたわけじゃない。
いや、ほんとに。
ま、そんなわけで学園に入ったわけだが…………………
「迷った……………」
いや、仕方ないじゃん?誰に弁解してるのか分からないけど仕方なくない?だってめちゃくちゃ広いんだよこの学園!しかも何故か人いないし。
つか、大講堂ってどこよ。入学式……………サボっても大丈夫なんかな?
よーし。気を取り直して………………サボろっと。
そう思いながら周りを見渡すと、丁度いい影を見つけた。
人目なし。人気なし。日光なし。
最高のサボりスポットだろう。
早速俺は、柱の裏側に周ると…………………いや、うん。もう何も言うまいて。最近の俺には疫病神でも取り付いているんだろうか。絶好のサボりスポットには、先客がいたようだ。
2人。
一人は押さえつけられながら、涙を浮かべている。
もう一人は、下卑た笑みを浮かべながら女を組み伏せ、学園の制服のスカートに手をかけている。
どこからどう見ても、これからレ◯プ現場になること間違いなしの、ヤバイスポットだった。
「あぁ………………うん………………なんだ、その………………流石にこんな場所で盛るのはちょっと…………………いや……………うん。まじでどうしよ」
思わず、というか無意識のうちに声が出ていた。
するとそれに気づいた二人が、驚いたように一斉にこちらを向く。
「どなたかわかりませんが助けを呼んでください!お願いします!」
と、押さえられた女は申しやがり、俺は無視出来ない状態に陥りましたとさ。はい。
そう現実逃避しているのも束の間。今度はと言うべきか予想通りと言うべきか、盛った獣が、肉食獣の如く俺へと向かってきた。
「テメェ、見られたからには生かして返すわけには行かねぇなぁ!死ねやゴラァ!」
あーーー、うん。唐突に死ねとか頭おかしいし逆切れもいいところ過ぎないか?俺、ほとんど何もしてないんだが…………まぁいっか。
「こちとら厄日でめちゃくちゃ機嫌わりぃんだよクソが!」
そう言って俺は、盛った獣の玉を思いっきり蹴り飛ばす。
獣は気色の悪い叫び声を上げ、校舎の壁に叩き付けられ糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた。
決してこれは八つ当たりではない。だって殺すって言われたんだもの。むしろ逆に殺さないだけマシだと思う。
と、自分自身を肯定していると、恐怖で流したのであろう涙を拭いた、襲われていた女の子が近づいてきた。
「あの…………助けて頂だいて感謝します。私、バルセーヌ伯爵家の長女。フランシスカ・バルセーヌです。このお礼は、後日必ずさせていただきます。」
そうつらつらと言って、制服の裾を持ち上げる彼女。
そして上げた先には……………少しズレた、紫色の下着があった。
多分、盛った獣に脱がされかけていたのだろう。
「あーーーーうん。なんだ。その………………とりあえず下着を上に上げたほうがいいんじゃないか?」
俺が彼女にそう言うと、彼女はブリキのようにギ、ギギと下を向き……………直後、茹でダコのように顔を紅くした彼女が、光の如くパパっと下着を上げ、上目遣いでコチラを向いた。
「…………………みました?」
あーーーーなるほどね。うん。この選択肢が来るかぁーーーー……………正直、世の恋愛小説では『見てないよ。』というのが定石だろう。
だが、結局のところ殴られるのならば、もはや関係ないんじゃないのか?というか、むしろ言い訳は通用しない気がする。だって見たから注意したわけだし。
「まぁ、うん。いいんじゃないか?紫。俺は好きだぞ?なんかこう………………大人っぽくて」
「ッッッッ?!!」
俺が正直にいうと、彼女は声にならない悲鳴を上げて顔を隠す。って、あれ?
これ、勝ったくね?全世界の主人公の皆さん!正直に言えば殴られなかったぞ!
と、深夜テンション的な状態で考えていたところに、ドッタドッタガッシャガッシャとうるさい音を立てながら甲冑を着た騎士が2人ほど走ってコチラに来る。
「王国騎士団学園治安維持部隊第二隊副隊長カイン・オルテです!こちらで凄い音がなったと通報を受けて駆けつけました!」
「同じく王国騎士団学園治安隊第二隊隊長のガルム・ゼータだ。少年、ここで何が起こったか教えてくれないか?」
なるほどね……………理解理解。てかさぁ……………………
「お前らさ、遅くね?コイツ、俺が来なかったらやばかったぜ?ちょっと弛んでんじゃないのか?なんなら学園でやり直したほうがいいぜ?」
そう言って俺は、まだ顔を隠してる彼女を親指で指す。
「ッ?!貴様!騎士団を馬鹿にするとは舐めているのか!貴様を国家侮辱罪で捕ら「待て。カイン!この少年の言うとおりだ……………済まなかったな、少年。カールはまだ入団したてなのだよ。許してやってくれ。
それと、流石にそこまで言われる筋合いはないと思うが?我らはただ普通に巡回していたのだから。責められることは何一つないがな。」
ぁあーーーーーーー……………コイツ、止めに入ったかと思えばやっぱプライドの高い高経歴エリート精神持ってやがったか…………………まぁ謝る気なんて微塵もないが。
「んで?その責められる要素が一つもないプライドの塊の操り人形さんは?ただ巡回ルートを辿るだけの使えないゴミ屑だったと。なら魔導人形のほうが自由に動き回る分使えるんじゃないですかぁ?
そんなんだから学園の騎士団はごっこ遊びとか言われるんだと思うが?」
そんな感じで俺が言うと、化けの皮が剥がれたのか声を荒らげる。
「ッ!貴様ァ!こちらが下手に出ていればつけあがりやがっ「ハイハイ。そこまでそこまで。静粛に〜〜」っ?!!」
あーーーーーーーこの声....................面倒くさいのが来たなぁ。
「全く、入学式に来ないと思ったら、こんなところで脂売ってたんですか?また団長に怒られますよ?」
と、口うるさい近所の人のように話しかけてくる女騎士。見覚えしかない顔だ。
「知らねーよ。つか、お前はなんでここにいんの?」
「なんでって、私がライラの側付きになったからですよ。ライラ、方向音痴の癖に一人で行くから探すの大変なんですからね。あと、私のことはシルと呼んでと言ったでしょう?」
「なるほどあのクソジジイの差し金か」(あーー、そう言う理由かーー。納得納得)
大体世界はアイツかクソジジイが悪いってレベルだよなぁ……………早く寝たい。
「多分何かを考えていると思いますが言ってることと考えてることが逆ですよ。あと、あの方をクソジジイと呼ぶのは不敬ですよ。」
「知らんがな。んでさ、俺はこれからどうするわけ?正直、ここに来てからどうするか全く知らん。というかさっさと寝たいんだが」
そう適当に返すと、恐ろしい返答が返ってきた。
「ライラには、王女様の護衛着任にあたる発表のため入学式に出てもらいます。なので早速「あの!」……はい?あなたは………………バルセーヌ伯の娘さんの……………確かフランシスカ嬢でしたよね?」
「はい!覚えて頂けていて光栄です!王国近衛騎士団副団長シルフ・ヴィーナ様!それで何ですけど……………ライラさんが王女様の護衛、というのはどういうことなんですか?だって王女様の護衛ってことはつまり…………」
「まぁ、そういうことですよ。」
「いや。どういうことだよ」
俺さ、なんでそっちのけにされてんの?てかそういうことって何?なんかあんの?
「まぁ、ライラには関係ありません。というか、もう入学式は始まってるんですよ!ほら、早く向かいますよ。フランシスカ嬢も、一緒に向かいましょう。」
「はい……………」
んて!
「俺は行くなんて言ってないぞ!というか、俺はさっさと寝たいんだよ!」
「はいはい。入学式終わってから好きなだけ寝てくださーい……………あぁ、あなたたち、そこの倒れてるのを拾っときなさい!じゃっ」
「あーーーー…………………」
襟首を掴まれた俺は、抵抗虚しく入学式へと(強制的に)向かうのだった。
そこのあなた。また新作かよ、と思いましたね?どうもるなるなです。
明日か明後日にはちゃんとマジック&ガールズの方を更新します!
あと私的な話何ですけど、自分基本的にスマホで書いてるんですよ。
それで新人賞に応募してみたいけど何で書けばいいとかあるんですかね?
ついでに今日ツイッターで低能死ねって言われたのでとりあえず出直してきて土の中からって言っときました。あーゆーのは無視するのが一番!(無視してない)