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六話、魔法使いといえば杖

 


「はい、緋色も脱落ね。真中の勝ちで三戦目終了、今日の模擬戦はこれで終わりだ」


 一戦目と二戦目は鳴が制し、その二戦で魔力を消費しすぎたため三戦目は早々に鳴が脱落し炎を得意とする緋色の攻撃を水を得意とする真中が、しっかりと防いで雷の魔法なども併用して下した。


 統也はと言えば一戦目は最初に集中砲火され、二戦目は前回の反省を活かし普段の自分なら取らない選択肢、つまり横に避けたが「一戦目を反省して別の方向に避ける」ところまで予測されまたも真中に捕らえられた。

 三戦目では鳴の雷に対して突っ込んでいき、魔力の盾を一瞬だけ張る事で対応し、真中の水の檻には槍のような円錐の盾とお得意の蹴り足と魔力の放出を合わせて抜け出すなどで対応したが、狙われ続け魔力がなくなり敗北した。

 しかし三戦目ではしっかりと鳴にも、そして真中ほど遠距離での魔法がうまくなく、鳴のように速さで負けているわけでもない緋色にも十分以上に戦えていた。


「また一位になれなかった〜」


「四戦目以降があれば……独壇場」


 真中の目は綺麗な茶色の髪に隠れて見えないが口もとからも得意げなのがよくわかる。


「こっちはもう魔力がカラだしな」


「ボクももうムリ〜」


 水の位置を固定する以外では魔力の大量消費がなく、攻撃的な魔法があまり使えないが安定して戦っていた真中には余力があり、使い切ったわけではないが消耗した緋色、残りの二人に至っては使い切っている。これ以上はない。


「上出来だったね、容赦が無さすぎてびっくりしたくらいだし本当によくやってくれたね、怖くはなかったかい?」


「最初はちょっと怖かったんですけど」


「みんな強いし!あとミルンさんが危なくなったらなんとかしてくれるって言ってた!」


「信頼……手抜きは失礼」


「真中の言う通りです、手抜きは相手のこともミルンさんのことも信頼してない証拠ですから。何より魔力の少ない俺がそんな風に奢りませんよ」


 大切な人に攻撃する事も、怪我をしてもおかしくない攻撃を受けるのも怖くないはずがない、それでも当たり前の様にそれを乗り越える彼女たちは人として(・・・・)異常で、魔法使いとして(・・・・・・・)正常だ。


 だが、だからと言って人間として大きく道を外れてはいない。ならば生きるための力をより早く身につけさせるべきだとミルンは考える、子どもではあるが四人に悪用の心配はないと信頼する。


「んじゃ、自分の適正がわかったところでアレを作りに行こうか」


「「「「アレ?」」」」


「決まってるだろ?魔法使いと言えば……杖さ!」


 -----


 杖、と言っても実際に杖の形をしているわけではない、形はある程度の大きさの水晶さえ嵌められれば何でもいい。ただ魔法を支えるという意味で杖と呼ばれている。


神器(アーティファクト)は知ってるね?」


「はい!知ってます!」


「はいはい!知ってる知ってる!」


 陽の国支部の、他のSB支部と比べても長い廊下を歩きながらミルンが講義を続ける、元気に手をあげる緋色と鳴だが与える印象は違ってくる。

 緋色がビシッと綺麗に右手を上げながら歩き、鳴は右手をあげながらぴょんぴょんと跳ねている。

 勝手な印象だが、色合い的に赤い髪に赤い瞳の緋色が活発そうで、紫の長髪と青い瞳の鳴が生真面目な印象を与えるのに表情で逆転するのだから面白い。

 統也と真中は普通に「はい」と答えるだけだ仲良し四人組だが相性がいいのは2:2で分かれているのかもしれない。


「今でも解明できない不思議な力を持った道具たち、それが神器(アーティファクト)、んでその中には魔力を使わずに特定の魔法を使える宝石のシリーズがあるんだけどね、そこに書いてある模様と宝石の形を水晶で真似をしてみたらね、魔力を消費して同じ効果を得られた。量産可能で魔力があれば魔法の助けになる、それが杖さ」


「それがあればボクでも火がだせるの!?」


 雷しか現実改変できなかった鳴が大いに食いつく。


「そういう事さ、さっきの模擬戦で足りないものは何となく見えてるだろう?欲しい力を見せてもらいな!」


 ミルンが開けた扉の先、沢山の本や資料に埋め尽くされた部屋の中、白衣を着た背中とボサボサの緑の髪をした人物が振り返る、目の下に酷い隈があるその女性は裏方(うらかた) 日陰(ひかげ)だ。


「いらっしゃ〜い、とりあえず私が作れる限りの魔法水晶の資料、コピーしといたから好きなの選んでね、杖の形の方も資料渡しとくけどつけれる水晶の数に違いがあるから気をつけるようにね」


 渡された資料は明らかに分厚い、薄い紙が厚さ10cm程の束になっている。


「あ、資料の量に驚いてる感じ〜?これでも私は超超超優秀だからね〜、定期的にいろんな支部へ赴いては新しい知識を取り入れてるんだよ〜。だからどこの誰にも作れる魔法水晶の量なら負けないよ〜、遠くの人とでも簡単にやり取りできる方法があればもっと楽なんだけどね〜、構想はあるんだけどやっぱり魔物の生存圏にどうやって配線を……」


「ああ、裏方がヒートアップし始めてるけど気にしなくていいから、家に帰ってじっくりとあんたらの新しい力を選んできな」


 裏方が最早早口すぎて聞き取れないレベルでブツブツと言い始め、ミルンは疲れすぎた裏方が簡単に自分の世界に入るのを十分知っているため付き合う必要はないと四人を家へと帰した。

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