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五話、分かりやすい差

 


 情けない、と統也は自分自身を評価する。自分が守らなければいけない少女達は自分よりもずっと強く、今も地に伏している自分の上で彼女達は魔力を噴出し飛び回り戦っているのだから。

 長時間飛び回りながら戦う魔力も、消費に対して効果の高い現実改変も無い統也が模擬戦で勝てる道理は無かったのだ。


 ーーーーー


「今日はそろそろ模擬戦をしてみようと思う、確実に戦闘不能になるって私が判断したら脱落扱いだ。死ぬ危険があれば止めに入るけどまあ、魔力を使った防御は基礎練で教え込んだから相手を信用して全力で戦いな!」


「「「「はい!」」」」


 そうは言っても最初はみんな控えめの威力の攻撃だった、しかし相手がしっかり防ぐ事を理解すると徐々に攻防はエスカレートして行き、自身の力を振るう楽しさもあり全員が全力で戦うようになった。


「進め!」


 その言葉と共に緋色が創り出して固定していたいくつもの火球が鳴へと飛んでいく、しかし鳴にとっては遅かった。


「沢山あっても当たらないよーだ!今度はこっちから行くよ!」


 魔力を一気に放出して移動した鳴が火球の範囲から逃れてすぐに緋色へと向かってまた加速する。近すぎず、遠すぎない。距離にして約5m、それは緋色が炎を出しても避けれる、そして鳴の制御が難しく拡散的になってしまう雷が当てられると判断した距離。


 鳴が手のひらに集めた魔力を雷へと変換して放つ、放射状に散ってしまうのは鳴の中の雷に対するイメージのせいであるがそれは長所でもある、なぜなら


「避けれ!ない!」


 雷の速さの前に防御に徹するしかない緋色は純粋な魔力の壁を作る。

 魔力であるが故にあらゆる物に干渉できる絶対防御と言えるが維持するにはそれなりに魔力を消費する。だがそれは鳴にいくつも水が打ち付けられる事で終わりを告げた。


「緋色が鳴を倒してくれないと……困る……」


「痛いじゃんか!真中!」


「攻撃だし……寧ろ直撃しても痛いだけ……」


 得意な改変以外では遠距離からの攻撃が難しかったために真中は水で攻撃したのだが、速度を出すのが難しく威力は低いものとなった。しかし鳴の攻撃を安全圏から止めさせるという目的は達している。


「反撃いくよ!って……ッ!」


 防御態勢を解いて再び攻勢に出ようとした緋色は、背後から魔力の放出と地面を蹴る力を合わせて一瞬で間合いを詰めた統也の左手から放たれる威力を抑えた雷で体が痺れてしまう、そして右手に持っているのは鉄で作られたナイフ。

 明らかに戦闘不能の条件が揃ったのでミルンから緋色の脱落が告げられると信じていた統也は油断した。


 統也は魔法による現実改変にある程度集中が必要だ、それに比べて他の三人は得意な改変に集中などいらない。


 ゴウッと緋色を中心に炎が広がった、咄嗟に統也も魔力で防御をするがそちらに気を取られて、絶えず改変を行わないといけない左手の雷が消えてしまう。


「「こっわ」」


 真中と鳴の口から出た言葉は緋色が咄嗟に出した大火力に対してか、少ない魔力消費で結果を出そうと四人の中で唯一肉体を使っての攻撃をしようとした統也に対してか、答えは分かりきっている。


「先に統也を倒すよ!」


「飛んで……消耗させる」


「ボクの独壇場になるけどね!」


 空中に留まるには魔力を放出するのだからそれだけで魔力量に差のある統也対策になる、攻撃にも魔力を大量に使う鳴も持久戦には向かないが速さという点で他を圧倒できる空中戦は願っても無い。


 単純だが非常に効果的な手段で、統也はその空中戦に参加するために空中に魔力の足場を作った。魔力を放出し続けるよりも消費は少なくて済むが自由度が低くなる、それはつまり


「突撃ー!」


 手のひらから雷を放出しながら猛スピードで突っ込む鳴に対して横にも後ろにも上にも歩数が足りず、下に行くには足場を消して放出しなければならない。先ほど見せた地面を蹴る足の力と放出を合わせた移動法を使うとして、最も魔力が少なくて済むのは足の構造的に力を込めやすい上。


 瞬間的にのみ鳴と同じレベルの速度で動く統也だが、その速さを維持はできない上に予測されている、自分から離れた位置の現実改変ができるのは今のところ真中だけだが、十分だ。途中で軌道を変えれない統也は真中の作った水に自ら突っ込む。


「捕まえた……このまま水が動かないようにしといたら……勝ち」


 鳴の雷を流されても終わりだ、10秒経って真中が動かないままにした水の中から統也が出る方法が無いと判断したミルンにより、統也の脱落が告げられる。


「統也対策にこのまま空中戦にしない?」


 統也に脱落させられかけた緋色はそう提案する。


「賛成……」


 大きな魔法は何一つ使わないままで、肉体と魔法を合わせた統也の戦い方に脅威を覚えた真中も


「ボクが有利になるね!」


 何も考えていない鳴も賛成する。


 かくして少年は一人空を飛ぶ少女達を眺めることになった。彼の胸にあるのは負けた自分の弱さへの悔しさ。


 魔力に差があるにもかかわらず少女達が一番脅威に感じたのが少年であることも、ミルンが魔法の使い方、二つの魔法の同時起動や体を動かしながらなど、器用さが天才的だと感じていることも彼は知らずにただただ悔しがる。


 彼が天才だと彼だけが気づいていない。

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