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四話、現実改変

 


 基礎訓練と個人訓練を繰り返して10日目、魔力の基本的な扱い方が板についてきた四人は次のステップに移る。


 魔力はそれだけであらゆる物、現象に対して干渉する手段だが、その力を使い現実を改変することで、同じ量の魔力であらゆる場面に大きく影響できる。


 例えば木でできた建物を壊すのに、大きな魔力の塊をぶつけるのか、炎を作り出して燃え上がらせるのか、どちらが楽か。


 そして魔力はあくまでもただの力、そのまま放っておくと消えていくエネルギーでしか無いため無駄なく消費する事が理想だ。


 魔力を操ることを総称して魔法という中で、特にこの物や現象に落とし込む行為を『現実改変』と呼ぶ。


「はいはい!よくわかりません!!」


「だね!私にだって難しいさ、まあ魔力ってのは世界を変える力がある事!変えることが少ないほど魔力の消費が少ない事!それだけ覚えてればあとはどう使うかは体で教える!」


 10日間の付き合いで鳴の頭が割と残念なことを十分に理解したミルンは説明を雑に進める。


「とりあえず手のひらに魔力を集めて何かに変われって念じてみな」


 そう言ってミルンは手のひら大の魔力球を作り出すとそれがすぐさま鉄に変わりミルンの手のひらに落ちた。


「魔法を扱う上で大事なのは手順や結果、どういう成り立ちをしてるかを強くイメージする事だけど適当にやっても出てきたもんがあんたたちの得意な改変さ」


 四人は見よう見まねで同じ工程を行う。


「ちょっと熱いですね、逆に直接触ってる割には熱くないのかな?」


 緋色の手のひらの上には炎が現れ徐々に消えていった。


「これは……便利……」


 真中の手には水が現れ、重力に従って手のひらにおちた。濡れてしまったが本人は気にしていない。


「すっごいバチバチしてるし光ってるしかっこいい!」


 鳴は雷を作り出したがすぐに放出されて消えるので面白がって魔力で改変を続けている。


「何も考えてないと魔力が消えるだけでした……ちゃんと考えるとできたんですけど……」


 統也はまたも自分には何も無かったことを悔しがりながらもこれから先のために正確に自分の状態を伝えた。


「そりゃいいね!適当にやって出てくるもんは魂に強く刻まれたイメージがあるって事さ、そうなれば改変が苦手な物も出てくる。統也、あんたは何でも同じように改変できるんだ、そいつは才能だよ!」


「はっはは!ほんとだー!ボク雷以外のもの出せないや!」


 ミルンの言葉を聞いた鳴が試して早速失敗する。


「あんた達もやってみな」


 ミルンの言葉で緋色と真中も続いて魔力を使って改変を行う。


「あ、鉄は少し出せましたけど水と雷がうまくいかないです」


「私は……火以外はできた……でも水と違って壁がある?……感じ……」


 それぞれの四種の改変の結果が出揃ったところで満足そうにミルンが頷く。


「そう、慣れればどんな改変でもできるようになってくるけど苦手だったり慣れない改変は無駄が多くて同じ魔力を使っても結果はあんまり良くないのさ」


 そう言ってミルンは統也と真中の作った鉄を拾う。


「統也と真中でも少し統也の方が大きいし緋色の作った鉄なんてもっと小さい、この辺はイメージする力や知っている情報の差なんかが関係してるね。あんた達二人は料理をしてるって言ってたから包丁やフライパンでいろんな鉄の状態を明確にイメージできたんじゃないかい?」


 言われてみてそう言えばそうだと二人は頷く。


「んじゃ次だね、ただの鉄の塊なわけだけど私はこれがコップになるイメージをする、熱した鉄はくっつくんだから鉄はくっつくもんだ、コップの形は取っ手のあるタイプがいいね、こうやって自分が納得できる理由や目的を考えてやると」


 ミルンの手のひらで統也と真中が作った鉄がコップへと姿を変える。


「こうなるもんだ、まだ終わらないよ。ちょっと中の水を飲んでみな、全部は飲むんじゃないよ?」


 いつの間にかコップの中には液体が入っている、それを四人が少しずつ口にする。


「何が入ってた?」


「「「「水」」」」


「じゃあもう一度飲んでみな」


 ミルンの手に返ったコップがまたも四人に回ってくる。


「あったかい!」


 飲んですぐに衝撃を受けた統也がすぐに緋色に渡す。


「美味しい!」


「ボクも早く飲みたい!はやくはやくー!」


「すぐ渡すから……最後なら全部飲めるよ?」


「じゃあ待つ!!」


 真中が鳴を落ち着かせてから少し飲んでほぅ……と息を吐く、真中からコップを受け取った鳴も残りを飲み干して満足そうに大きく息を吐く。


「特製はちみつレモン、美味しかったろ?」


「「「「はい!」」」」


「変形や変質も現実改変さ、元々あるものを使ってる分改変する事が少ないから魔力の消費が少なくて済むし色々と便利だね。食べ物だって魔法で賄えるけど魔力の消費もしっかり考えるんだよ」


「「「「はい!!!」」」」


「んじゃ、後は今日最後の大事な話さ。魔法はだいたいなんでもできる、それこそ理論上は生き物の構造全てを完全に理解してれば命だって創れると言われてるさ、でも実際には不可能(・・・・・・・)だ、それにかかる魔力も、血管や神経なんかもうまく作る事なんてできない。

 だから生き物の体を作り変える事だけはするな」


「「「「……はい……」」」」


 重い言葉を胸に刻んで四人も真剣に答えた。


「んじゃ!今日の訓練は終わり!ゆっくり休みな!」



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