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第4話 戦いと決意

お久しぶりです。今回は続きどおり戦闘ですが血は飛びません、安心してください。

では、ゆっくりしていってね!

「こっちだ。」

「こっち・・・ですか?」

 外に出ると、お兄さんが私を案内してくれた。ついていくと、お兄さんは森の小道へと入っていく。

「こんな森の中でいつも鍛錬しているんですね。もっと家のそばかと・・・。」

「まあ、見世物でもあるまいし。静かな方が気が楽だからってのもあるが。」

 ところどころに石がむき出しになっているような砂利道を歩いていくと、木々のない開けた場所に出た。

「数年前の雷でここだけ木々がないそうだ。ちょうどいいからここを利用している。」

 お兄さんが説明してくれる。確かに近くの木々には小さな穴が空いていたり、切れ目が入っていたりしていた。きっとお兄さんの練習の跡なんだろう。

 お兄さんは腰に差した刀の調節をすると、私のほうを向いた。

「お前、魔道は?」

「攻撃も補助もそれなりに。ですが今回は純粋な剣術の勝負なので、特に魔道は・・・。」

「いいや、補助魔法くらいは使っておけ。曲がりなりにも刃物だからな。実戦でもないのに怪我されても困る。」

「そうですか。では、お言葉に甘えて・・・。」

 私も剣の位置などを調節して、剣を抜く。

「パワー。プロテクト。」

--パワー

--プロテクト

 筋力や体力の底上げを担う魔法『パワー』と防御力の底上げの『プロテクト』を発動する。

「お待たせしました。」

「準備できたか。ならば、よし。」

 お兄さんは私のほうへ向き直る。

「確認しておく。剣術のみを利用した純粋な模擬戦。相手を傷つけるのは禁止。いいな?」

「もちろんです。」

 頬を冷や汗が伝う。

 私の返事を聞いて、お兄さんは微かに笑みを浮かべた。刀に手をかける。

「それでは、始めるとしようか。」

 お兄さんは足元にあった小石を拾い上げると、適当に放り投げた。

 ・・・つまりは、あの石が地面に落ちたときが始まりの合図だ。

 緊張が高まる。小さく固唾を呑む。




 ────落ちた。

「はぁっ!」

 駆け出し、距離を詰める。お兄さんは刀に手をかけたまま動かない。恐らく受け止めるつもりだろう。

 相手の出方を探るため、とりあえず私は左から斬り下ろした。

 お兄さんの手が動く。

キン!

 刀に剣がはじかれる。

 そのままお兄さんは手を返し、横に振った。

 金属同士がぶつかる音が鳴り響く。

(速い。なんとか受け止められたけど、これに何度も襲われたら・・・。)

 剣同士は均衡しているが、例え魔法で強化していても力勝負では分が悪い。とりあえず、私は一度下がった。

 お兄さんも半歩下がり、高い位置に刀を構える。向こうからは仕掛けてこない。しばらくの間様子見のようだ。

 静寂が訪れる。

「・・・速いですね。」

「伊達に剣を振っているわけじゃないからな。」

 お兄さんは反応が速い。きっと目に見える範囲から攻撃を仕掛けては、どれも受け止められてしまうだろう。ならば────

「行きます!」

 私は地面を蹴り、再度接近。但し今度は普段より早く剣を振るう。狙いは────

「覚悟!」

 ────先に敢えて刀をはじく!

 私の剣はお兄さんの前ギリギリを横切り、刀へと向かう。高い位置へ構えてながら内へ入り込まれたら幾らなんでも、きっと!

「甘いな。」

「・・・へっ!?」

 本当なら、金属を金属で叩いた音と、それに見合う感触があるはずだった。

 私の剣は空を切っていた(・・・・・・・)

 それと同時にお兄さんが私の視界から消える。

「ハッ!」

 消えた刀、見えなくなったお兄さん、この状態から次、攻撃に移るとなれば────下、薙ぎ払い!

 とっさに地面を蹴り、飛び退く。低姿勢になったお兄さんと、私がさっきまでいた場所を横切る刀が見えた。

(読まれていたのか、いや、私が剣を振る一瞬の間に意図を読み取ったのか!?)

 お兄さんはそのまま踏み込み、斬り上げる。

ガンッ!

「くっ・・・。」

「筋は良かった。だが、詰めが甘かったな。」

 徐々に力負けし、剣が浮いてくる。

(ここは耐え切るべきか引くべきか。どっちだ・・・?)

 パワーの魔法は筋力を引き上げる。それこそ子供である私が成人男性に引けを取らなくなるくらいには。それなのに押し負けているということは、体勢が影響しているのか?

 しかしなんであろうとこのままでは押し切られてしまう。ならば、一度距離を取って・・・っ!?

 更に後ろに飛び退こうとしたそのとき、まるで読んでいたかのようにお兄さんは距離を詰め、斬りかかってきた。

 いや、読んでいたかのようにではない、読んでいたんだ!

 苦し紛れに襲い掛かってくる刀を受け流すが、これじゃ防戦一方だ。

 金属音が絶え間なく響き渡る。

「あっ・・・くぁっ・・・!」

 このままじゃジリ貧で押し切られてしまう。なにか、なにか打開策は!?

 ──左から来る刀を受け流す。

 ──右から来る刀を受け流す。

 この状況の中で最適な打開策は・・・踏みとどまりやすい体勢で受け止め、一方的な状況から脱すること!

 ──左から来る刀を受け流す。

 ──右から来る刀を受け流す・・・ここ!

 下げた右足で精一杯踏ん張り、防戦一方から鍔迫り合いに持ち込む。そのまま半歩、左に動き体の向きを変える!

 押し合う対象のいなくなったお兄さんの刀は空を切り、その隙に私は攻めやすい体勢へと立て直す。

(・・・お兄さんの刀はただ速いんじゃないんだ。一撃一撃が重く、相手に有利な状況を作らせないように振っている。それが分かったからにはなおさら、一方的な状況は作らせられない。)

 剣の持ち方を変える。これまでは両手持ちだったところを右手に。

 そう、お兄さんの一撃が重いのなら、私はその分手数で攻めればいい。私は片手剣、対するお兄さんは刀だ。重さの問題からどうしても刀の手数は減る。そこを突くことさえできれば・・・!

 一歩飛び退く。お兄さんも構えなおす。

「・・・よく逃げ切ったな。」

「ありがとうございます。」

 お兄さんの言葉に短く対応して、言い切ると同時に地面を蹴る。左右に揺れながら距離を詰め、右へ。

 お兄さんが斬りかかって来る。狙い通りだ!

「はっ!」

 右足を強く踏み込み、そのまま左へ跳躍。飛んでくる刀をあえて避けず、飛んで躱す(・・・・・)

 そのままお兄さんが空振った隙へ!

「っ!」

 ────届かない。あと5cm。

 読まれていたのか、それとも私が跳躍したのを見てすかさず避けたのか、お兄さんはさっきよりほんの少しだけ後ろにいた。

 着地した左足を伸ばし、前進。後退しようとするお兄さんに追撃!

 ・・・しかし、当たらず。まあ追撃は読まれていて当たり前だろう。お兄さんはすぐに空振りした刀を持ち上げ、斬り下ろした。

ガキィン!

 剣同士がぶつかる。いや、私の剣が刀を弾いた。

 ────これ以上ないチャンス!

 すぐさま手首を翻し、切りかかる。これこそ刀に比べ軽く動かしやすい片手剣ならではの利点だ。

 お兄さんは弾かれた勢いに従って距離を取ろうとするが、私にはさっき地面を蹴った勢いが残っている。

 これなら────届く!

「・・・ッ!」

 届いていない、あと1cm・・・!!

 もう一度手首を返して、当たるまで、何度だって!

「・・・惜しい。」

 空を斬る音が続く。お兄さんが飛び退くたびに追いかけるが、その差は段々離されていく。

(届か・・・ない・・・!!)

 刀が振るわれる。

カキン!

「ああ、惜しかった。もうちょっと、あとちょっと近ければ、な。」

「・・・くっ!」

 剣を振るうため、手を返す。それは、お互いに。

「終わりだ。」

 ────ぶつかる、弾きあう。

「いいえ、まだ終わりでは────」




 弾かれた刀が向きを変える。

 カチャ、と音を立て、私が反応するよりも速く、喉元に突きつけられた。

 『突き』の構えだ。

「勝負あったな。」

「・・・参り、ました。」

 お兄さんは頷き、刀を降ろした。

 私も硬直した体を深呼吸で整え、剣を鞘に収める。

「いい太刀筋ではあった。ただ、体格差と経験の差が少しばかりものを言ったかな。」

「いえ、体格差なんて関係ありません。私が距離を詰められなかった。実力不足です。」

「そうか。なら、それでもいい。」

 そう言うと、お兄さんは私に背を向けた。

「俺は普段の鍛錬に戻る。お前は先に戻っていてもいいし、見学するなら好きにしろ。ただ、見学するなら離れておけ。巻き込まれても困るからな。」

「あ・・・わかりました。」



 促されたとおり、距離をとる。少し離れた木の根元に座ったけれど、春の木陰はまだ少し肌寒かった。

 そよ風が吹く。

 火照っていた身体と脳が、少しずつ冷まされていく。

「そっか、負けたんだね。」

 やっと冷静になってきてた頭で、今の数分を思い返す。

「私もまだまだ弱いなぁ・・・このままじゃ、いけないな。」

 目頭が熱くなり、向こうで剣の修練に励むお兄さんの姿がぼやけてくる。

 手の甲で溜まった涙を拭うが、もう片方の目を拭うよりも先に、涙がこぼれた。

「・・・強くならなきゃ。身も心も。自分を守れるように、そして誰かを支えられるように。」

 頭は冷静になったが、感情は昂ったままだった。

 交錯する感情と思考は、脳を駆け巡り、ぶつかり合い、一つの結論を導き出す。

 それは私にとって、最善の選択肢。

 運命の分かれ道。

 そして何よりも、私が今よりも、もっともっと強くなる方法。




 私は恵まれていた。

 剣の師と、魔道の師に恵まれていた。

 女ながらもその体躯の細さとしなやかさをもって、剣技においては向かう先負けなしだった。

 それは、相手に近い年齢のものが多かったからかもしれない。

 しかし、問題はそこではない。

 負けたのだ、剣を用いた戦いに。

 もちろん、私が最強だなどと自惚れていたわけではなく、だが、心のどこかではそう思っていたのかもしれない。

 私は、わくわくしていた。

 世界が広がったのだ。

 これまで生きていた場所は狭く、世界はもっと広かったのだ。

『もっと知りたい』、と思うには十分だった。

 私は───




 日が高い位置まで昇り、少しずつ空腹を感じて来た頃、お兄さんは手を止め、刀を仕舞った。

 ここぞとばかりに、私は駆け寄った。

「お兄さん、お話があるのですが、聞いていただけますか?」

「話か。構わんぞ。だがそのお兄さんというのはやめてくれ。少し寒気がした。」

 お兄さんは眉間に皺を寄せる。

「俺はルビー。ルビー・ブリリアントだ。何とでも呼んでくれて構わない、小っ恥ずかしいものでなければな。」

「わかりました。ではルビーさんとお呼びさせていただきますね。」

 私が応えてからのほんの少しの静寂の間に、恥ずかしさ、怖さ、緊張、その他全ての負の感情を閉じ込める。

 コホンと咳払い、そして深呼吸をして、私はルビーさんの目をまっすぐと見た。













 



「───私を、ルビーさんの弟子にしていただけませんか!」

ここまで読んでくださりありがとうございました。

次回は5/5、19時に予約投稿をしておきますのでぜひお願いします。

あとなろうのシステムあんまりよくわかってないんですがお気に入り登録や感想などくださると嬉しいです。

それでは次回も、ゆっくりしていってね!

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