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紙なの?それとも電子なの?

作者: S.S

20XX年出雲大社。今年も神在月がきた。

そして、ついに宿命のライバルである

紙書籍の神「紙野原」と電子書籍の神「ストレイジ」が出会い、

「朝まで生バトル。紙か電子か?時代が選ぶ本の未来」という討論会が密かに始まった。


紙野原「俺の方が歴史が長い。伝統はなくならない。1000年以上だからな!

新参者が大きな顔して、これからは自分の時代だとか言うのはおこがましいぞ」


ストレイジ「いや、伝統ってけっこう消えてますよねぇ実際!

今どきテレホンカードとか使う人いないのと同じっスよ。

いつの時代も伝統にしがみつく人っているもんですねぇ~」


紙野原「失礼なことを言うんじゃない!いいか?君みたいな電子書籍はな。

例えスマホで読んでいても、まわりにはゲームしてるようにしか見られないんだからな。

俺は違う。

持ってるだけで何となく知的な感じに見える。ある意味でファッションアイテムとしても成立するのだ」


ストレイジ「知的な感じを演出するって不安の裏返しじゃないんスか?

それに持ってるだけでいいなら、下手すりゃ中身は読まれてないっスよね」


紙野原「読まれているかどうかは分からないがな。そっちだって似たようなものだろう」


ストレイジ「いいえ。ある程度、読者がどこまで読んだのかってデータ集計されるから分かりますよ」


紙野原「ば・・・バカにしてくれちゃって!

でもな、本棚に難しそうな本がびっしり並んでいると女子ウケもよくなるんだぞ」


ストレイジ「そんなの見透かされるっスよ。女子のカンの鋭さをナメてるでしょ?

むしろね。今は持たない生活がトレンドなんスからね!

電子版は場所を取らないからそのニーズに応えているし、

更に言えば、紙の本と違って、いくら持っていてもリアルな重量は変わらないから

持ち運びにも便利っスよ」


紙野原「ふん。それはまぁ認めよう。

でもな、紙書籍は全体の分量が把握しやすいし、本を開くためのハードルも低い。

バッテリーも関係ないからな。いつだって読める」


ストレイジ「バッテリー言いますけど、

今はカフェとか空港とか割とどこでも充電できるからそこまで気にならないいっスよ。

全体の分量って言っても、この忙しい時代に全員が全員、本を最後まで読まないと思うんスけどねぇ」


紙野原「いいや!読む!本が好きな人は最後まで必ず読む!そこは譲らん」


ストレイジ「ふ~ん。でも近年は名著のマンガ版とか凄いブームなんスよ。言いたい事わかります?」


紙野原「マンガは日本の文化だからな。マンガの方が読みやすいってことだろう」


ストレイジ「つまり原作本は敷居が高いってことっスよ。

それって最後まで本を読めない人が増えてる証拠じゃないっスかね。

まぁ実際、世の中IT化で仕事はラクになるどころか、

ラクになった部分に詰め込むもんだから前よりも忙しくなって本を読む時間も減っているわけっス」


紙野原「本が読まれなくなりつつあるということか!

でもそうなると、紙とか電子版とかいうどころの問題じゃないだろう」


ストレイジ「そういうことっスよ。我々危機感もっていかないといけないわけっスよ」


紙野原「そうは言ってもなぁ~。何だかんだで日本人は仕事を詰め込む傾向あるからな。

メンタルに関わる部分だから変えるのは難しいぞ」


ストレイジ「かといって放っておけば状況はますます悪くなるばかり。

動画神のチュウブさんらの勢いは増すばかりっス。子どもたちをトリコにしつつあるっス。

手を打たなければリアル書店はショッピングモールの中だけになってしまうっスよ」


紙野原「そんな!嫌だそんなの!我々だって動画に負けないぐらいの魅力があるんだぞ!」


ストレイジ「今の状況があるんでスグにでも積極的に打って出ないといけないっス。ひとまず休戦っス」


争っている場合ではない。本の神々は争いの無意味さに気づきつつあった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 文字離れが問題視されて久しいですが、このなろうのような無料の小説投稿サイトが大きくなっているのを見ると、文字でストーリーを楽しみたい人の素地はけっこうまだまだあるんじゃないかと感じます。でも…
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