罠
水色のドロドロとした原型の無い体を滑らせる様に一匹のモンスター、スライムが1人の新兵に近づく。
新兵の名前はドレッド。
周りの人達からは親しみを込めてドレと呼ばれている好青年だ。
幼い頃から正義感の強かったドレットは、女手一つで育ててくれた母親に楽をさせる為に、今年、宮殿の兵士に志願したばかりの新米だ。
当然、今回のダンジョン遠征が初の任務だった。
まだ実力に乏しいドレッドに任された任務は、後衛から前衛の兵士達に回復薬のポーションなどを渡す補給係。
「ドレェェェェ!!」
1人の同期の兵士が叫びながら剣を振るうも時すでに遅く、母親思いの好青年ドレッドは、体を水色のドロドロしたスライムに覆い被され、事切れていた。
場所は4階層。
3階層を抜け直ぐに魔物の大群と遭遇し、戦況は最悪だった。
奇襲を受けた前衛の新米の兵士は1階層や2階層のモンスターとは比べ物にならない強さのモンスター達に圧倒され、あっという間に次々と戦闘不能へとされて行った。
「クッソォォォォォ」
1人兵士の悔しさや怒りが入り混じった叫びが戦場にこだまする中、また1人モンスターに囲まれてながらも全く引けを取らずに四方八方から襲いかかるモンスター達を、倒している少年がいた。
その動きは、洗礼されており熟練の剣士にも引けを取らない動きでモンスター達を斬り伏せていく。
その少年を殴ろうとするとその拳が届く前に、腕を切り落とされ。
蹴ろうとするとその脚を切り落とされ。
捨て身で掴みかかろうとすると手脚を切り落とされ、少年の周りには今までその少年に切り落とされた様々なモンスターの腕や脚また、手脚を失った胴体が転がり死体の山となっていた。
その隣では可憐な金髪を揺らしながら、自分の得物の細身のレイピアで敵を滅多刺しにしている、美人の女性が居た。
またその遠くでは、2人肩を並べブツブツと魔法の詠唱をしている2人の人影が見える。
「どいてぇ」
魔法の詠唱をして居た少女の声が響くのと同時に死体の山に居た少年と金髪の女性。アラタとルナはその場をすぐさま跳びのき退避する。
アラタとルナが退避したのを見ると魔法の詠唱が完了した2人。ツナとサクヤが同時に魔法のトリガーを引いた。
「炎天!」
「雷搥!」
炎と雷の強烈な嵐が、優に100体を超えるモンスター達を一瞬にして灰に変える。
広いダンジョンの部屋の中に吹き荒れる爆音と暴風に後衛の兵士までもが耳を塞ぎ目を瞑った。
兵士達が目を開けた頃には、先程までそこに居た醜悪な顔付きで殴りかかり噛みちぎり兵士達を苦しめたモンスター達は居なく。
代わりに残って居たのは、白くサラサラしたモンスター達が焼かれて出来た灰のみだった。
途端に新兵達から、歓喜の声が上がり、座り込む者。抱き合う者達が安堵で表情を崩す。
「おい!貴様ら!何を喜んでいる!喜んでいる暇があれば、傷ついた仲間を助け、果敢にも散っていった仲間を弔ってやらんか!」
安堵で表情を崩して居た、新兵達に向けルナが一喝する。
ルナの声を聞き、今まで表情を嬉しそうに崩して居た新兵達がハッとし辺りを見渡す。
地面は灰で覆われており、その灰の上に倒れ込み肩で息をしている者。無残にも食い千切られ息絶えている者。傷ついた仲間を助けている者。
1人また1人と次第に皆、自分自身で出来る事をやりにそれぞれの持ち場に駆けて行った。
「はぁぁぁぁぁ」
少し離れた位置に来ていたアラタは少し溜息を吐きながら、その場に腰を下ろし、傷を負った兵士を回復している兵士達をボーッと見ていた。
「ねぇ。あれ、なんだろうね」
「ん?」
隣に来て立って居たツナがある方向を指差して居た。
ツナが指差す方向には拳ほどの大きさの綺麗な水色に光る水晶のかけらがあった。
「なんだか分からないけど、綺麗だねこれ」
「………………」
何だろう。嫌な感じがする。
2人、水晶のかけらを取り囲み眺めていた、その時、徐にツナが手を伸ばし淡く光る水晶に触れようとした。
「ま、待て!」
「えっ?」
時すでに遅く、既に水晶のかけらに触れたツナが、突然叫んだアラタを見ようとするが、今までは、淡い光を放って居た水晶のかけらが突然眩い光を放ち地面に2人を囲むように直径2メートル程の魔法陣を描き、発動させた。
あまりの眩しさに目を瞑った2人が、目を開けるとそこは、先程の慌ただしい兵士達の喧騒の声や松明の灯りは無く。
聞こえて来るのは、気味の悪い唸り声と何かを引きずる音だけが木霊する薄暗い荒々しい岩肌の洞窟の中、ツナとアラタ2人でポツリと立って居た。
このぐらいのペースこれからも投稿して行こうと思いますので、宜しくお願いします。




