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俺とお前の異世界冒険記  作者: 工藤翼
7/12

賢者の迷宮

遅くなり大変申し訳ございません。

次話も戦闘描写が多分入ります。

木製の馬車がカラコロと音を立てて心地いいリズムで揺れながら目的地に向かっていた。

馬車の数は10台程。

全ての馬車が一定のリズムを刻みながら、目的地を目指して馬に引かれている。


アラスター王国を出発して30分程が経ち、次第に馬車の揺れが小さくなっていき、肩を互いに預けて寝ていたアラタとツナをルナが揺さぶり起こす。


「おい、起きろ」

「うん?着いたのか?」


アラタとツナはまだ視界に薄っすらと靄がかかっている。

寝ぼけている脳と瞳を起こすように軽く頭を振り意識を覚醒させる。


アラタとツナは、しっかりとした視界で辺りを見回す。

2人が乗る馬車はまるで吸い込まれているように、山にポッカリと空いた巨大な洞窟の中へゆっくりと進んでいた。

他の兵士達が乗っている馬車もルナ達の馬車の後方について来ていた。

他の馬車には一台当たり5〜6人の兵士が詰めて座っており、兵士全員の話し声が洞窟の中にこだまして響いている。


洞窟に入り、馬車でゆっくりと進んで行くこと3分。

明らかに兵士達の話し声ではない、話し声が聞こえてきて、次第にその話し声は大きくなっていきやがて辺りは無機質な岩から喧騒に包まれた立派な街並みに変わっていった。


「「町?」」


アラタとツナが声を揃えて呟いた。


「あぁ。ドワーフ達にここの安全を確保してもらって居るんだ」

「そうそう。モンスター達が地上に出て行かないようにね」


家1つ1つが岩石を切り出して作った様な無骨な外見ながらも、そのを明るく照らす火の光とがっしりと筋肉が付いている低身長のドワーフ達の楽しげに笑う声や歌う声などで洞窟の暗いイメージは微塵も感じさせていなかった。


「ドワーフ?てことは他の種族もいるのか?」

「あぁ。ここには住んでいないが、エルフや獣人など様々な種族がいる」

「あれ?気になったんだけど、私達人間はじゃあ何て言う種族なの?」

「僕達人間かい?僕達は人族って呼ばれているよ」


話をしていると、丁度家が無い場所に馬車が止まりルナが『着いたぞ』と一言だけ言い、自分の武器の細いよくしなるレイピアを掴み馬車を降りる。


アラタも馬車に乗る前にルナから貰った刃渡り60センチ程の無駄な装飾が一切無い実践的な剣を掴み馬車を降りた。


「んんんんん、凄い所だねここ」

「あぁ、そうだな」


アラスター王国を出発してから2時間。

ずっと慣れない馬車に揺られっぱなしだったツナが馬車から降り背伸びをしながら言う。


周りを見ると、少し遅れて止まった馬車から兵士達が降りそれぞれダンジョンに入る為の準備などをしていた。

そんな兵士達の間から耳を澄ませば時折聞こえてくる会話がなぜか、アラタの耳にとまる。


「おい、あの2人が例の?」

「あぁ、そうだ」

「なんでも、男の方、アラタって言ったっけ?は初めての訓練でルナさんにボコボコにされたらしいぜ」

「本当かよ?!それで、勇者とかチヤホヤされてやがるのかよ……」


その話し声を聞き、思わずアラタは兵士達がいる方向に背を向け唇を噛む。


「アラタ?どうしたの?」

「いや、何でもない…」

「そう?なんか…元気ないなって思ってさ」


少し様子のおかしかったアラタを気にかけツナが声を掛るが、アラタは無理に少し笑って心配を掛けまいと振る舞った。


それから少しツナとたわいも無い話をしていると色々と話し合いをしていたルナがアラタ達に近づいてくる。


「2人は準備は出来たか?」

「あぁ、準備なら出来てる」

「では、行くぞ2人共」


そう言い緩い下り坂をルナは降りて行く。

アラタ達もルナに従い少し小走りで下り坂を降りて行った。

ルナの隣に行くとルナが視点は前を向いたまま今回の作戦についてアラタ達に説明を始める。


「まず、今回の作戦の前に2人はどのぐらいこのダンジョンについて知っている?」

「このダンジョンについて?」

「あっ!私はちょっと本で読んだから知ってるよ!えっと、確か名前は……賢者の迷宮で、過去の最高到達階層は23階層だっけ?それより下層はまだ分からないって事と……あっ!このダンジョンには罠がいっぱいあるって事ぐらいかな?」

「ほう。まぁそれなりに知っている様だな」


そう言いルナが少し微笑む。

アラタはそんな2人のやりとりを見て、少し嫉妬にも似た感情を抱いていた。


何だよ!みんなして……こんなのだったら何で俺も召喚したんだよ!ツナだけでよかったじゃねえかよ!


そして直ぐにそんな感情を少しでも抱いたアラタは自分自身に嫌悪感を感じて、軽く聞こえないほど小さな溜息をついた。


しかし、3人とは少し離れた場所で準備をしていたサクヤはアラタのその様子をしっかりとその小さな唇を歪め見ていた。



『ギィ』


ダンジョン一階層。

緑色の肌をした醜い豚の顔のこのダンジョン最弱のモンスターゴブリンがアラタの剣に切り裂かれ、血飛沫を撒き散らし倒れた。


アラタの隣では、ブツブツと魔法の詠唱をしているツナがいた。


「今、我が元に炎よ集結し、悪しき者を焼却せよ!炎上」


ツナの詠唱が長い完了し、魔法のトリガーを引いた途端に何もなかった場所に火の粉が見え始め途端に、アラタ達の周りを取り囲んでいたゴブリン6体の体から炎が上がりやがて黒い炭にした。


もう残っている敵は居ない。そう判断した別の場所で戦っていたルナとサクヤが2人別に近寄り声と回復魔法を掛ける。


「大丈夫かい?アラタ。もし君に死なれたら困るのは僕達なんだからね…」


少し離れた場所では、ルナがツナの世話を甲斐甲斐しく焼いていた。


「よし!もう行けそうかい?」

「あぁ、ありがとう」


そう言い再びサクヤは「無理はするなよ?」と優しく言いルナと後方へ戻って行く。


ルナとサクヤが位置するのは後方部隊の支援。

アラタとツナは前衛での実戦訓練を積むと言う名目で別に行動していた。


今回の作戦には、アラタとツナの育成の他、ダンジョンの深層進出と言う2つの目的があった。


ダンジョンは地上に生息している魔物より強い、魔物や地上では手に入らない。入りにくい物で溢れており、その貴重な物資を持ち帰るために人力車も何台か同行しておりダンジョンの進行速度は遅かった。


アラタはゆっくりと歩きながら、ツナと話に花を咲かせていた。


「いつの間にあんな凄い魔法を使えるようになってたんだよ?!」

「いやぁ。そんな事ないよ。あれだって後10発、撃てるか撃てないからだもん」

「やっぱり、魔法を使うと疲れたりするのか?」

「いや、疲れはしないけど…なんか撃ち過ぎると段々と怠くなって行くんだよね…」


しばらく話しながら進んで行くと、洞窟を削り出し作った階段が見えてきた。

その階段を一段一段をゆっくりと降りて行く。

ダンジョン一階層はまだ、ドワーフ達の町の灯りで照らされていたが、二階層までは流石に町の灯りも届いては無かった。

その代わりに壁や天井に生えた緑色に光る苔のような植物で周りは薄っすらと見える程度は明るかった。


歩いているとふと前衛の兵士達の足が止まり武器に手を掛けた。

すると薄暗い闇を縫うように5〜6匹の紺色のゴブリンが現れその後ろには、50〜60程度のゴブリンが控えていた。


「くそ!ゴブリンローグか……運が悪いな」


ある1人の兵士がそんな事を呟き一気に剣を抜刀する。

それを合図にしたかの様にゴブリンローグが一声鳴くと後ろのゴブリン達が雄叫びを上げながら一気に突進してくる。

それに負けじと兵士達にも雄叫びを上げ突撃する。


前衛の兵士の数は30程。それに対してゴブリン60ほどの数だったものの2つの軍勢がぶつかった瞬間からゴブリン達は数をどんどんと減らしていった。


アラタの前には3体のゴブリンが立ち塞がる。

『ギャア』

その内の一体が鳴き声を上げアラタに手に持っている岩で殴りかかる。

けして早くはないその攻撃をアラタはステップで躱しゴブリンの膝から下を剣で切りとばす。

ゴブリンの細い足は見事に切り飛ばされ床に倒れる。

その倒れたゴブリンの様子を見て少したじろいだ残りのゴブリンを一気に大振りの横薙ぎで首を切り落としていく。

床でジタバタともがいているゴブリンに剣を突き刺しその息の根を止めた。


今のアラタは首を切り落とした際に浴びた生臭い、返り血を浴び元々着ていた白色の服が赤く染まっていた。


アラタが事切れグッタリとしていたゴブリンを一瞥すると、周りが急に明るくなり残って居たゴブリンローグ達がその紺色の体を赤い炎で真っ赤に染めながら地面を転がっていた。

そのすく側では、少し疲れた様な表情をしていたツナが立っており、アラタを見つけるとツナは優しくニッコリと微笑みかけた。


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