ようこそ!
すいません。
この前言っていた血の描写、もとい戦闘描写は今回でてきません。
恐らく、恐らく、次の話になると思います。
初めての訓練終了後、ツナとアラタはゆっくりとした足取りで部屋を目指し歩いていた。
「初めて、この宮殿の外に出れるね。楽しみだけど同時に少し不安だなぁ」
ツナが呑気そうに笑いながら言った。
そのツナの笑いにつられアラタも笑いながら言う。
「そうだなぁ。実戦と言ってもいきなりめちゃくちゃ強い奴と戦うわけじゃないし、ルナとサクヤの他に兵士達も来るって言ってたし、大丈夫だよな」
あれこれ話しているうちに気づけば、部屋の扉の前まで来ていた2人は扉を開け部屋に入る。
部屋の中は清掃されたのか、ベットのシーツは皺1つなくピシッと糊付けされ貼り付けられている様に敷かれ、アラタ達が元々着ていた高校の制服も綺麗に折り畳まれ置いてあった。
「ん?ノート?」
アラタが机の上に置いてあった、見覚えの無いノートを見つけ手に取る。
革製の黒い表紙には何も書いておらず、ノートの中身も全て真っ白な紙で埋め尽くされていた。
アラタがノートをパラパラとめくっていると、ツナが寄ってきてノートを覗く様に見てから一言、言った。
「日記でも書いたらどう?」
「えっ?でも。このノート誰かの物かもしれないし……」
「大丈夫だよ。きっと、ここを掃除してくれた人がわざと置いてったんだよ」
「そうか?」
「うん、きっとそうだよ!だからアラタ。この世界に来てからの事を日記にしてまとめてみたらどう?」
「日記かぁ」
そう呟きながらアラタは、制服のポケットに入っていたままにして洗濯されてしまった。
今は制服の上に置かれてある、ボールペンを持ち、真っ白な紙に今日起きた出来事を大雑把にまとめて行く。
日付はわからないけど、日本では丁度9月から10月に変わろうとしていた頃だったから、多分今は10月2日だと思う。
昨日、この世界に召喚されて来た俺とツナは今日は俺は剣術の訓練を、ツナは魔法の練習を、こなしてきた。
俺たち2人共まだまだ弱いけれど基礎ぐらいは覚えたと思う。
明日は、宮殿の兵士達とルナとサクヤと俺たちでダンジョンに行く。
ルナは気をつけろと言っていたが、何故か大丈夫な気がする。
これから毎日この世界での出来事をまとめて日記にしていこうと思う。
「よし!こんな所で良いだろう」
「うわぁ……全部、箇条書きじゃん。日記じゃ無いみたい」
アラタが書き上げた初めての日記を、ツナが読み、クスクスと笑いながら言った。
それにしても、俺って昔から文を書くのって苦手だったよな。
アラタは心の中で1人苦笑しつつ『さて!』
と言い椅子から腰を持ち上げ背伸びをする。
「明日早いし、今日はさっさと風呂入って寝ようぜ?」
「そうだね。もう、お風呂入って寝ようか…」
それから2人は浴場に向かい、風呂に入って昨日と同じく備え付けのバスローブを着て部屋に戻りベットに潜り込む。
今朝の事で、ベットに入った瞬間、ドギマギし出したアラタとツナは『おやすみ』と短く言うと背中を向けて眠りについた。
フクロウがホーホーと一定のリズムを刻み鳴いている。
深夜帯にアラタは目が覚めた。
身体を少し起こし月明かりに照らされほんのりと明るくなっている室内を少し見渡し、まだ眠そうにアラタは呟いた。
「うぅ、まだ夜中か?」
城内は静まり返っておりシンとしていた。
アラタの隣ではスースーと寝息を立てて気持ち良さそうに寝ているツナが居た。
アラタはツナを見て何故か少し微笑むと再び横になり瞼を閉じ眠りについた。
アラタが寝静まり本当に物音1つしない室内には、アラタが書いた日記帳だけが淡い月明かりに照らされていた。
まだ日が昇り始めさほど時間が立っていない霧が立ち込める朝。
ダンジョンに行くと言うこともあり、城内は様々な喧騒に包まれていた。
ドンドンと少し荒々しいノック音が部屋の中に響き、アラタ達は少し肩をビクつかせ驚き、扉を開ける。
扉の外にはいつもの、磨き上げられ鏡の様な金属の鎧を着ているルナと、ゆったりとした動き易そうな黒いのローブを着たサクヤが立っていた。
「もう、2人は準備出来たかい?」
サクヤがまだ少し眠そうに目をこすりながら2人に聞いた。
アラタは、ルナと同じ様な作りの金属の鎧を身に纏い腰に剣を差し、ツナはサクヤとは対照的な白いローブを着ていた。
「あぁ、たった今準備が終わったところだ」
「そうか、では。行こうか」
そう言いルナとサクヤは、アラタ達に背を向け城内の入り口へと向け歩き出した。
城内は様々な武具に身を包んだ兵士達が慌ただしく、予備の武器や食料などの物資を外に停めてある馬車をめがけて運んでいた。
しばらく進んで行くと城の入り口の重厚な扉が見えてくる。
しかし今は物資を外に運び出しているので、開けっ放しになっていた。
それでも、扉は厚く金属で縁取られており、3メートル程の高さがありアラタとツナはついつい扉を見上げてしまうほどだった。
そんな重厚な扉を潜り抜けた先には、薄い靄に包まれた町が見えた。
町の殆どの家の屋根が赤煉瓦で作られていて、壁は日干しレンガ造りの石材中心の家ばかりで統一感がありついついアラタとツナは足を止め、宮殿が小高い丘の上に建っている事と薄い靄が手伝って魅入ってしまうほど神秘的で美しい統一感が出ていた。
「綺麗だな、この町は」
「うん、そうだね。綺麗だね」
2人の様子を見て、サクヤは微笑みながら言った。
「確かに、僕達は見慣れているからこそそこまでの感情は無いにしろ、この町は綺麗だよね。改めて、ようこそ、アラスター王国に!」




