事実とバスローブ
ツナとアラタはフカフカのベッドの上で腕を枕にして、寝転びながらこれまでの事を話していた。
「もう、戻れないかもな」
「うん」
「なんでこんな事になったんだろうな」
「分からないよ」
2人とも話こそ続いているが、意識ここにあらずといった様子で話していた。
「だぁぁぁもう!」
「うぇ?!どうしたの?」
「いや、だからさ!」
急に頭を掻きむしりながら、ベッドから飛び起きたアラタをツナが目を丸くしてみた。
「もう、俺たちはその………狂った神?だっけ?を倒さない事には帰れないし、帰して貰えないんだよ!だからさ、ここでこんな風にいつまでもくよくよしてたって帰れない事には変わりないんだからさ。だったら、やれるだけやってみないか?」
アラタが分かりきっていた事を、ツナに説明する。
アラタの、説明により分かっていたが認めたくなかった事を次第に認めて行くツナ。
自分達が異世界と言う、予想も出来ない場所に来たこと。神を倒さない事には帰れないこと。など、理不尽な現実とここに来て始めて真っ正面から向き合ったツナの瞳から大粒の涙が溢れおちる。
「わ、分かってるよ!そんな事。…………………………アラタァァ」
ツナは、アラタの背中に抱きつくようにくっつきその思いの丈を全て吐き出した。
10分程が経ち、部屋にはツナの嗚咽しか聞こえなくなった時、急にアラタの肩が震え出し、次第にその震えは笑うのを我慢しているのだとツナが分かった時には、アラタは声を上げて笑っていた。
「なんで、笑うのよ!」
ツナが目を赤く腫れさせながらアラタの肩に顎を乗せムスッとしながら聞く。
「ごめん、ごめん。いやさ、なんかこうしてるとさ。見た目こそ変わってたけどさ、中身は変わってなくてさ。異世界とか関係なしに昔を思い出すなぁて思ってさ……」
「そうだねぇ。昔も私が泣くと、いつもアラタは黙って見守ってくれたよね。むしろ私的に下手に言葉掛けられるより、黙って見守って貰った方が楽だから結構、助かってたんだよ?」
それから2人がしばらく思い出話に花を咲かせていると、扉を軽くノックする音が部屋に響いた。
扉を開くとそこには、軽装の鎧で身を包んだ金髪碧眼で整った顔立ちのルナが立っていた。
ルナは2人の様子を見て少し微笑みながら、言った。
「その様子ですと色々と整理がついたようですね。では、父上が、領主様がお二人に城内を案内するついでにお呼びなので一緒に来て貰えますか?」
アラタとツナは頷き、部屋を後にしルナの後について行く。
城内はまさに迷宮の如く入り組んでおり、長い通路は無数の扉があり、その中から色々な人達の話し声や笑い声が聞こえていた。
しばらく城内を歩き10分程の時間が経ち、アラタ達は、高さ2メートルはある大きな扉の前に来ていた。
扉の前でルナが小さく息を吐き出して、キリッとした表情でこちらを向き忠告する。
「いいか。私の父上は寛大なお方だ。しかし、領主という立場でもある。だから決して粗相のないようにな。いいか?」
アラタとツナは、ルナの真剣味を帯びた表情にけおとされコクリと頷いく。
ルナは緊張している二人に少し微笑みながら『そんなに固くなるな』とだけ言って軽いノックをして扉を開く。
扉の先は決して広くは無く、簡素な玉座が1つポツリとあるだけの部屋だった。
しかし、今は恐らくこの城の使用人や兵士などが、異世界から召喚された二人を見るために中央の玉座のに続く通路を除き、部屋の中に所狭しと並んでいた。
ルナが一礼をして部屋に入って行く。
アラタとツナもルナの真似をして一礼をして部屋に足を踏み入れる。
部屋の中は酷く居心地が悪かった。
単に部屋の問題ではなく、その部屋にいる使用人、兵士などの殆どががアラタとツナの二人を値踏みをする様な目で見ていたからだった。
緊張しながら、玉座の前にまで進んだ二人を、初老の男性が玉座に背を預けて座っていた。
その初老の男性に向かい、ルナが一礼をしてアラタとツナの簡単な説明をする。
すると初老の男性は『うむ』と難しそうな顔で返事をすると、部屋にいた使用人や兵士などに持ち場に戻る様に言い渡した。
使用人や兵士など各々が自分持ち場に戻り、部屋にいるのは、ルナ、アラタ、ツナ、それに初老の男性のみとなった。
途端に初老の男性がブハァーと息を吐き出す。
「いやいや、済まなかったね。なにぶんこの世界が大変なのでね。皆、気が立っているのだよ。」
そう言い、先程とは比べ物にならない人懐こい笑みを浮かべて頭を下げてた。
アラタ達が頭の上に?を浮かべていると初老の男性は思い出したかの様に再び語り出した。
「おぉ、そうだった。私がここの。アスタ邸の主。そして、そこにいるルナの父親のアスタ・ルージュじゃ。宜しくの」
「え?あぁと。國井アラタと言いますこちらこそ宜しくお願いします?」
「はい?西村ツナです宜しくお願いします?」
余りのルージュの変わりぶりに、アスタとツナが少々呆けているとルナが少しアラタ達に呆れた様に言った。
「すみません父上。アラタとツナは。召喚の疲れが出ている様ですので。明日から、訓練を始めさせていただきます。」
それを聞いたルージュは満足そうに微笑みながら言った。
「うむ。では、アラタとツナ。急に召喚などしておいて言うのもアレだが。明日から訓練に励んでくれ。それでは、おやすみ」
「では、おやすみなさい。父上」
ルナはそう言いながら一礼をすると、視線でアラタ達に合図を送り、部屋を後にする。
アラタ達もルナに習い一礼をすると部屋を後にした。
玉座のある部屋を出て後は、終始不機嫌そうにしていたルナの『なんだ、あの受け答えは!』などと言う説教を聞いてしばらく歩くと、最初に通された10畳程の部屋に着く。
部屋に着くと、ルナが疲れた顔である事を告げる。
「じゃあ。しばらくはこの部屋で二人で寝泊まりする事。後で、使用人に服などを持って来させる。風呂はそこから、右、左の順で曲がればすぐ着く。他に何か質問は!」
「えぇと。ルナさんは………?」
アラタが不機嫌そうな顔で淡々と、色々な説明をしていたルナに恐る恐る聞いた。
するとルナは。
「もうねる!」
そうとだけ言い、足音荒く去って言った。
ルナ背中を見えなくなるまで見つめた後、アラタとツナは深い溜息を吐き、部屋に入って行った。
部屋の中でアラタとツナは、各々自分のポケットに入れたままで、この世界に持ってきていた物のスマホを操作していた。
アラタがスマホに視線を落としたままで聞く。
「どうだ?やっぱり。カメラとメモぐらいしか使えないか?」
「うん。カメラとメモしか使えないよ」
「そうか……」
「「はぁ」」
二人の溜息が重なる。
「それにしても、この世界に来てからは溜息をばっかりついてるよな俺たち」
「そうだね………」
「「はぁぁ」」
再び二人の溜息が重なり、思わず二人とも笑ってしまう。
「もう、疲れたし。さっき、ルナさんが言ってた風呂でも入って疲れ取って今日はもう寝よう?」
「たしかに、もう疲れたしお風呂入って寝たいし、お風呂行こっか?」
そう言うと二人ともスマホを机に置き、ルナの言っていた風呂に向かった。
風呂は、男女と分かれており、日本の温泉と大差なかった。
二人は各々存分に温泉で疲れを癒し、備え付けのバスローブを着て部屋に戻った。
ルナのバスローブ姿を見て、アラタは思わず目を奪われていた。
艶やかに濡れた黒髪。僅かに上気した白い肌。胸元の空いたバスローブから覗くその控え目ではない双丘の谷間。極め付けに少し湿った体に吸い付く様に、滑らかなボディラインを際立たせているその姿に目を奪われていた。
思わず、口から言葉が零れ落ちる。
「ありがとうございます」
「え?何?どうしたの?!」
「いや、何でもない。さぁ。寝るか!」
「えっと、うん」
二人、部屋の明かりを消しベッドに入る。
肌と肌が触れ合うか触れ合わないかの位置関係にドギマギしていたアラタがふと、隣に寝ているツナの顔を見て、思わずハッとした。
何、一人で舞い上がったんだよ俺は……
隣に寝ていたツナは静かに涙を流していた。
「お、おい。ツナ………っ」
声を掛けようにも掛ける言葉が見つからず中途半端に声を掛けてしまう形になった。
「あれ?何で私泣いてたんだろう?何でだろう?ただ、色々な事を思い出してただけなのに………何でだろう。何で……」
上を向き声は上げない、しかし次第にそこ瞳から零れ落ちる雫が大きくなって行く。
そんな、幼馴染の姿を見てアラタはあることを心にきめる。
「ツナ。もう泣かないでくれって言うのは無理だって分かってる。だから…。だから。もう、ツナが涙を流さないように。絶対にツナの事を守るから。守るから……今は、その溜まった物全部流しちまえよ。俺でよかったら聞いてやるからよ。」
アラタが少し微笑みながら声を掛けると、ツナはアラタの方を向き静かに声を上げまるでダムが崩壊するかのように涙を流た。
気付いたらツナは、アラタに半ば抱きつくようにして泣き疲れ眠っていた。
アラタもツナの頭を抱えるようにして、眠りについていた。
読んでくださりありがとうございます。
この話から、書く文字数を増やしていきたいと思います。
宜しくお願いします。




