僅かな希望
「くっそ!どこにあるんだよ」
「………………」
アラタとツナが迷宮の深部に罠で飛ばされてから2〜3時間が経ちアラタとツナは上層より遥かに強い魔物達を避けて歩き続け、いつ遭遇するか分からない状況に精神的に疲弊しきっていた。
「ねぇ、もしかしたら、もう戻れないかもね。私達」
「そんなの……まだ…分からないだろ!」
「でも!こんなに探したのに上に行くための階段はおろか坂道さえないじゃない!きっと、その内またあの化け物が出てきて今度こそ、殺されちゃうんだよ私達」
「っ!進もう……まだ、分からないさ」
アラタは力無く立ち上がりツナの手を掴み、再び上に続く道を探し歩き出した。
下層でアラタ達が再び動き出した頃、上層のルナ達もアラタ達の元へ動き出していた。
「それじゃあ、アラタ達はここより16階層下の21階層にいるのは確かか?」
「勿論だよ!僕を誰だと思ってるんだい?」
「うーむ。となると………」
そう言いルナは各々自分の仕事をしている、兵士達を見渡して呟いた。
「ここにいる、殆どの兵士では実力不足だな……そうだ!兵長!兵長はいるか!」
「わっ!!?」
呟いていたと思ったら突然叫び出したルナにサクヤが肩をビクつかせ驚く。
「おっと、すまないな」
「もう、なんなんだよ!ビックリしたじゃ無いか!」
サクヤがルナに向かってプリプリと怒っていると、少し遠くから動き回っている兵士達の合間を縫って、どんよりした空気感な立派な髭を蓄えた初老の筋骨隆々の兵士がこちらに歩いて来ていた。
その兵士がルナ達の近くに近づいていくにつれ、キリッとした表情に切り替わり、サバサバとした足取りでルナ達の前まで来た。
「遅れて申し訳ないです。ルナ殿」
「どうした?表情が暗いぞ?ゲルド」
ルナがゲルドにそう聞くと、ゲルドは力無い笑いを浮かべて、話し出した。
「いえ、私の分隊に配属された新兵が死んでしまった故……少し……」
ゲルドは話しているうちに段々と、歯を食いしばり拳を固く握り締め、ワナワナと震え出した。
「私の力がない為に、あの新兵を戦死させてしまった。私は…….」
「ゲルド……」
ルナが、なんと声掛けをすれば良いか悩んでいると、隣で聞いていたサクヤがふとした一言を言った。
「うぅん。ゲルドさんが、そんな風になってるのをその新兵が見たらどう思うんだろうね?」
「そ、それは?」
サクヤの言ったことを、ゲルドが聞きかえす。
「だから、そのまんまの意味で、悲しむくらいなら、さっさと、この任務を終わらして、新兵の家族に報告して、墓に埋めてやるのがゲルドの役目じゃないかなぁって思ってさ……」
サクヤは悪気は無いんだよ?と言い、そう説明した。
それを聞いていたゲルドは、少し微笑み次には元気を取り戻したかの様な、スッキリとした表情になっていた。
「もう、大丈夫か?」
そうゲルドにルナが問いかける。
「はい。申し訳ないです。サクヤ様ありがとうございました。それで、青年の件ですな?」
「おぉ!流石、話が早い」
「では、装備と私の分隊を連れてきますゆえ、暫しお待ちください」
そう言うとゲルドはしっかりとした足取りで、装備と分隊を連れて来るために戻って行った。
ルナ、サクヤ、ゲルドがアラタとツナを探しに出る頃。
一方アラタ達も、少しづつだが、確実に上に向けて歩いていた。




