窮地を救った者
「えっ?ここどこ……」
「やられた。罠だよ、罠!」
アラタとツナは2人、薄暗い洞窟の中周囲を警戒しながら言葉を交わす。
「言ってただろ?このダンジョンには罠が一杯あるって。元々ここまで罠に遭遇しなかっただけ……」
そう言いかけ、アラタは腰を少し下げ剣を一気に抜刀し振り抜いた。
金属音が辺りに響き渡り、アラタは持っている剣から伝わる振動で手が痺れる。
「えっ?な、何?!」
ツナがアラタに問いかけるがアラタが答えるより前にそいつは姿を現した。
金属質な紅色の厚い鱗に身を包み、大きな翼を生やし、トカゲの様なその体躯に付いている巨大な鎌首を持ち上げ不気味な琥珀色の瞳でアラタを見つめた。
『ギュルルルル、ギァガガガガガガガガガガ』
その魔物、コカトリスは唸ると悍ましい雄叫びを上げ長い牙を剥き出しながらアラタに突っ込んで来た。
「痛ったぁぁぁ」
間一髪、アラタはツナを抱き抱え脇に飛びのき事無きを得ていた。
ふと、アラタ達が元立っていた場所を見るとアラタの背中に悪寒が走った。
岩が30センチほど抉れ、あのままアラタ達が突っ立っついたら一撃で2人ともやられていた。そう確信出来るほどの、痕を残していた。
コカトリスの攻撃の痕を見た瞬間、アラタはツナの片手を引き必死で走り出した。
ヤバイ。ヤバい!あんなのと戦ったら死ぬ。
後ろを振り向くと、獲物を逃したコカトリスが辺りを見渡していた。
そのコカトリスの琥珀色の瞳とアラタの目が合う。
『ギアャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャ』
コカトリスは、叫び声を上げると再びアラタ目掛け突進をしようと口を開け凶悪に光る牙を剥き出し走り出した。
それを見てアラタは更にスピードを上げ全力疾走をする。
後ろから、迫り来る死神の足音。
アラタは片手にツナの手の温もりを感じながら、走った。走り、走り続けた。
そして遂にアラタは、その動き続けた足を止めた。
「くっそぉぉ」
目の前に続いているはずの道は無く、有るのは立ち塞がふように有る石の壁。行き止まりに来てしまった。
少し距離は離れたが、以前変わらず後ろからは一定のペースで死神の足音が聞こえて来ている。
アラタは膝に手をつきながら息を乱しているツナと向き合う。
「な、なに?アラタ?」
ツナが膝に付いていた手を離し、アラタに向き合うと、アラタは何も言わずにに突然ツナを抱きしめた。
「えっ??」
ツナが、あたふたとしているとアラタはゆっくりと一言だけ言った。
「ここに居てくれ、必ず戻ってくる」
アラタはツナの反応も見ずにまだ走り出した。
ただし、方向は先程とは逆のコカトリスがいる方向に向かって。
ツナには、アラタの小さくなって行く後ろ姿をただ、見守っている事しか出来なかった。
来た道を走り戻って行くと、紅色の鱗を獲物を逃した怒りで更に紅潮させたコカトリスが見えてくる。
アラタはコカトリスが見えてくるや否やすぐさま剣を引き抜き、その顔目掛け思いっ切り剣を振り下ろした。
『バギィ』
しかし、アラタの渾身の一撃はコカトリスの顔に引っ掻き傷を付けるに留まり更にアラタの剣が嫌な音を立てて折れた。
折れた?!……いや、知らねえ!
次の瞬間、コカトリスが突然の攻撃に怯んでいるのを見てアラタはその折れた剣をコカトリスの琥珀色の右目を目掛け勢いよく突き刺した。
『ギャァァァァァァァァァァァァ!!!』
右目を刺されたコカトリスはその痛みに叫びながら突然暴れ出した。
「ぐぅ!?」
暴れ出したコカトリスの太い尻尾にアラタは腹を叩かれ、肺の中空気を全て吐き出しながらその余りの威力に壁まで飛ばされ背中を岩壁に打ち付ける。
「おぇぇぇ」
物凄い威力で腹を打ち抜かれたアラタは、血が混じった物を戻してしまう。
肺が痛い、息が苦しい。このままじゃ、本当に死ぬ…………
朦朧とする意識の中、アラタは右目から血を流し、こちらにゆっくりと歩いて来る、巨大なトカゲの様なコカトリスを霞む目で見ていた。
目の前までに迫ったコカトリスが口を開け凶悪なその牙でアラタを食べようとしている。アラタはここが最後だと踏み目をしっかりと瞑る。
しかしいつになってもアラタに噛み付こうとした牙が来ない。
恐る恐るアラタは目を開けると。
アラタを食べようとして居たコカトリスが反対に更に巨大なトカゲの魔物、別のコカトリスに捕食されて居た。
アラタを襲ったコカトリスより紅色のその鱗は黒色に近く、体躯も1.5倍ほど大きいその、コカトリスはアラタなど興味も無い様に、今までアラタを襲って居たコカトリスをゆっくりと食らって居た。
「あぁ…ぁ……」
アラタは痛む身体にムチを打ち、ゆっくりと立ち上がり、別のコカトリスを刺激しない様にゆっくりと壁に手をつきながらツナの元へと戻り出した。
今回で10話目です。
この調子で20話50話と続けていきたいです。




