ギルド
情報では、角が生えた魔獣を貫く剣と槍が交差しているシンボルがギルドの印らしい。
そしてその看板がある大きな屋敷の様にデカイ店がギルドであるみたいだ、本当にデカイ。
そのギルド内から笑い声やガラスが割れる音、破砕音が聞こえる程盛り上がっているらしい。
私は殺気を身に纏わせ扉を開く、すると私目掛けて飛んでくる人間。
衝突する寸前で左に身体を逸らし躱す。
そして飛ばしたであろう人間は馬鹿笑いをしながら飛ばされた人間に言う。
「弱いお前が悪い! 弱者は強者に従え! それがこの世界の理ってヤツだよ バーカ! ハハハハハッ!」
あぁ、良かった、アイリスを連れて来なくて本当に良かった。
コイツ、喰える。
万が一連れてきてたらアイリスことカチューシャにこの汚物が当たり怪我をしていたことだろう。
最高に楽しいな!
フハハハハ!
気分が高揚してる所に水を差す様に右肩を叩かれるポンポンと、振り返ると狼さんは首を横に振り態度で『殺すな』と言う。
そう、殺さなければ良いのなら後はどうとでもなる、今の私を縛る鎖は一つ、なら引きちぎり目の前の弱者に『世界の理』を説いてやろうではないか!
そして、音が鳴る様にガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャンと音を鳴らし、汚物を投げた大きな態度を取る人間の前に立つ。
威圧する様に、逃さぬ様に、目の前に立つ大男の人間に私の吸収した亡霊達を可視化させ言う。
「世界の理は貴様が言うのは弱肉強食なのだろうか、それとも、弱者支配か? 問う、答えよ、穢れ溝鼠の色をした魂よ、貴様は本当にそれで良いのか? よく考えよ、でなければ人間として死ねない呪いをくれてやる」
そう言うだけで、目の前の人間は全身が震え歯をガチガチと鳴らし浅く早く呼吸を繰り返し過呼吸になり、胸を押さえて膝をつく。
そしてトドメの如く私も膝をつき人間の肩に触れ言う。
「貴様は運が良い、私の最愛の者と宝物に傷を付ければ、魔獣に改造した後、魂を私が食べてた所を回避したのだ、なぁ、答えろよ、笑えよ、幸運だろ、フフフ」
私がそう言った後、目の前の人間は子鹿の物真似かガクガクと膝をを揺らしながら立ち私に言う。
「お、俺は、さ、さっきまでそう、思っておりました! で、ですが! それは誤りでひた! で、ですからどうかお許しください! お願いです! まだ死にたくない!」
そう叫んだ後、勢い良く膝をつき地面に頭を擦り付け泣く
ああ! あぁ! これだ! この光景が観たかったのだよ! 強者ぶっていた弱者が自分を正しく把握するこの惨めな光景を!
さてデザートを食べて皿の上少しだけ食べ残せば、この人間は只の生きる屍となり白紙に戻るだろう、後少し、もう少しでその頭に手を置ける!
そこで、伸ばしていた右手を掴む細くしなやかな腕を辿れば、狼さんが辞めろと目で訴えていた。
それは『この世のルールに反する』と、『お前を壊したくない』と必死に留めるとその目は訴えていた。
仕方なく、手を引っ込め、そいつの耳元でで告げる。
『命を捨てずに済んで幸運だったな』と告げるだけで震えは止まり神に祈るかの様に両手を胸の前で組みひたすらに呟いていた。
「ありがとうございます! ありがとうございます!」と涙を流し、鼻水で顔をぐしゃぐしゃに濡らした顔でひたすらに呟いていた。
そして、エントランスを抜けて私は成り行きを見ていた受付人にギルド登録を済ませてギルドを後にした。
後に、エントランスで起きたこの事件を「死神と女神の幸運」と名付けられ、ギルドのエントランスや他の者に迷惑をかけるといずれ死神に魂を喰われると言い伝えが出来、それ以来、乱暴者や迷惑者は『死神』の手により殺されはしなかったモノの恐怖を叩き込まれ、大人しくなり、常にビクビクと震える人格になった為に、ギルドでは粗悪者は暴れ無くなった。
そして、『死神』に許された唯一の人間の大男は真人間になりギルド内では名前が売れる程の人間になったが、その者の言葉は口癖の様に呟く。
「周りに迷惑をかけないそれが平穏に過ごす為の、秘訣。 それが判らない奴は死ぬだけさ」といつも呟くと言う。
主人公はリミッターが外れると、とても残忍になります。
人間を人間と思わぬ所業をしたり、色々とやります。
ネジが外されているからです。