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あんたの家、変やねん!!

作者: アッハッハ

初めての短編で、なんだか長いです。

最後まで読んでいただけたら、嬉しいです!!

 ウチは1年6組1番、安達蜜柑(あだちみかん)

テニス部や。たった一つの自慢は、動体視力がいいことやねん。テニスに向いてると思わへん?

でも、それ以外はどこにでもいる普通の中学生や。

 一方、隣の林田檸檬(はやしだれもん)は変わってる……、変やねん。どこが変かはそのうち分かるわ。あと、同じくテニス部。



「なぁ、なぁ蜜柑、なんで靴下って穿かなあかんの?」


 はぁ、なんでそんなこと訊いてくんねん。メンドくさっ。


「別にいいやん、靴下ぐらい」


 ウチはめっちゃ適当に応えた。


「そんな適当に応えんといてぇな!」


 はぁ、メンドい。


「適当!? 何言うてんの? こんなに真剣に応えてるウチに、適当!? どこがやねん!」


 よし! ここまで元気に言ったら真剣に聞こえるやろう。


「いや、目ぇ死んでるで?」


 失礼な。



「ウチの目は、いつでもどこでも活き活きしてますけど何か?」


「いや、だから現在進行形で死んでるって。生気ないもん」


「ケッ、そんなものわかりの悪い子に教えることはありません」


「そんなん言わんといてぇや! なんで靴下穿かなあかんの?」


 ああ、目ウルウルさせて、メンドくさいなぁ。



「靴が履きやすくなるからやろ? ってかなんでそんなこと訊くん?」


「だって、私靴下嫌いやねんもん……」


「はぁ!?」


 なんて? 何言ってんの、この子は?靴下が嫌いって、あんな害のないものを?



「なんでやねん?」


「だってな、靴下穿いてもいいことないやん」


「いや、あるやろう」


「えぇ!? どこに!?」


 そんなに驚かんでも……。



「靴下穿いたら靴履きやすいやん。それに冬もちょっと温かい」


 制服スカートのウチ等としたら、冬に靴下なしとか考えたくもない。



「まぁ、冬は温かいっていうのは認めるわ。でも、スポーツするときに靴下は、穿かへん方がいいと思うねん」


「は? なんで? 靴履くときこそ穿くべきやろう」


 何を訳分からんことを言ってるんや?



「だって考えてみいや、靴下穿くと、靴穿きやすいんやろ?」


「うん」


「じゃぁ、逆に言うと、靴下穿いたら靴脱げやすいってことやろ?」


「う〜ん、思ったよりも考えててんなぁ。でも、靴下穿いててもそんなに靴脱げへんで」


「嘘や!」


「ホンマ!」


 だって、靴下穿いて、靴を履いて運動してきて13年、ウチは靴が脱げたことなんか2、3回しかない。



「嘘や! だって私のおばちゃん、靴下穿いてて靴脱げたせいでこけて、腕骨折してたもん!」


「そ……、それは気の毒やったな。ってか、どんくさっ」


「酷い……」


 だってホンマのことやん。



「まぁそんなん、すっごくどんくさい人しかコケへんから大丈夫!!」


「ホンマに?」


「ホンマホンマ。なに? ウチを信用しいひんの?」


 ちょっと睨みを利かせてみた。



「い、いやいやいやいやいや、そ、そんな訳ないやん!! な!」


 アッハッハ、おもしろい、冷や汗ダラダラ流しながら焦ってるで。そんなに恐がらんでいいのにな。



「じゃ、この件は解決! ってことでいいな?」


「いや、まだ……」


「え? まだあんの? めんどい〜」


「酷い〜、聴いてぇなぁ!」


「はぁ、チャッチャとしてや!」


「うん!」


 はぁ、元気がよろしいなぁ。ウチは疲れた。



「あんな? 家の中では流石に危ないやんな?」


「へ? 危ない? ……そんなことはないやろう」


「え? だって、靴下穿いてたら、床に罠が仕掛けてあっても気づくのに時間かかるやん?」


「罠って、そんなんある家あんねんやったら一回見てみたいわ」


「え? 蜜柑の家には罠ないん?」


「そんな、罠があんのが当たり前のように言われても……」


「当たり前やろ?」


 マジで? ホンマにマジで言ってんの?

な? 変わってる子やろ? ってかアホやねん。

多分アレやで。床に水がこぼれてたりしてたときに気づかずに、滑ってしまったことがあるんやで……、どんくさっ



「そんなん言っといて、実際は水がこぼれてた、とかそんなんやろ?」


「ちゃうわ! しっかりした罠やって」


「どんな?」


「う〜ん……、床のある部分を踏んだら四方八方から矢が飛んできたり……」


「はぁ、2点。 そんな嘘に騙されるとでも思ってんの?」


「2て……え!? 嘘ちゃうって、本間やって!!」


 見え見えすぎるわ。



「いやホンマやって! 信じて! あ、じゃ一回来て!!」


「めんどい」


「ホンマお願い! だってホンマやもん!」


 めっちゃ必死やん……。



「はぁ、しゃーないなぁ……、気が向いた時にな」


「やったー! いつ? 気が向いたときっていつ?」


「いつか」


「じゃ、今日来て! だって、早く信じてほしいもん!」


「ん〜、じゃぁ、今日の部活でちゃんと靴下穿いて、一回もコケへんかったら、見に――」 


「わかった! じゃ、コケへん!」


 ……セリフの途中で遮られた……ムカつく。



「じゃぁ行かへんで」


「え!? なんで? まだコケてへんで!?」


「最後まで話聞け。一回もコケへんかったら、見に行かへん!」


 当たり前や。こける確立のほうが低いもん。



「え? マジで!? そ、それは遠まわしに今日家に来るって言ってんの!?」


「言ってへん、言ってへん」


 手を横に振りながら応えた。



「こけると思わんから、言ってんねん。あ、わざとこけたら行かへんしな、永久に」


 最後の「永久に」を強調しながら言った。



「も、ももも勿論やで。そ、そんなズル、する訳ないやん?」


 するつもりやったんやな。

見るからに焦ってるし、冷や汗でてるし、声が上ずってるし……。

ホンマに見え見えやなぁ。



「……まぁいいわ。あ、そろそろ部活行く?」


「あ、うん。そうやな」




 ――テニスコートの近く――


「じゃぁ、1年は素振り100回やっといてな! 2,3年はサーブレシーブで」


「はい!」



 みんなが声を合わせて応えた。

素振りかぁ……、ウチ、素振り嫌いやねんなぁ……。

同じことの繰り返しやし……。

 1年はみんなで10人やから、1人10回ずつ数えていくことにした。



――1、2、3……


  ………………100!


「終わった!」

「疲れた……」

「お茶飲んでくる!」

「あ、ウチも!」

「私も!」


 それで、みんなでお茶を飲みに行った。

飲んでたら、キャプテンの野山美智(のやまみち)先輩から、次の指令が来た。


「お疲れ! じゃぁ、次は半分に分かれて、試合形式の審判と素振りをやって!」


 んな!? ……嘘やん、また素振り?


「は……はい」


 みんな力なく応えてるわ。 ウチもやけど。



 ――1時間後――


「はい! 今日は終わり!」


 ふぅ、やっと終わったー!! 疲れた! 茶! 茶はどこや!?


「お茶ならここやで〜」


「あ、檸檬、ありがとう! ゴク、ゴク、ゴク、ゴク……プハァ! 旨い!」


「蜜柑……おっさんみたいやで?」


「……気にしんといて。」


 あぁ、今のはすごく傷ついた……。



「あ、いや、……大丈夫! 若々しいで! どこからどう見ても元気な中学生や! な? だからそんなに暗くならんといて!!」


 檸檬……、あんたはいいやつやったんやな。 って、あ、忘れてた。



「そうそう、今日こけた?」


「へ? なんで? こけてへんけ……あ!」


「そうか! こけてへんのか! じゃぁ、あんたの家に行かんでいいな!」


 よかった! 面倒なことにならへんかって!



「そんなに喜ばんといて〜! なんか哀しいやん!」


「気にするな! よし! 帰ろっか!」


「……うん」


 ちょっと檸檬の元気が無くなってしまったな……ま、いいか!




 ――帰宅――


「じゃぁ、バイバイ、また明日!」

「バイバイ」


 う〜ん、檸檬、ちょっとだけ元気なかったなぁ。

なんでそんなに来てほしかったんやろ?



 ――おっと、もう家の前や。


  ガラッ


「ただいま〜」

 

「おいコルァ蜜柑!!」


 うわ!? 何や、なんでこんなにお母さん怒ってんの? 巻き舌やん! 

いいな〜、ウチもできるようになりたいなぁ……。



「あんた、2階の電球割ったやろ? なんであんなことしたんや?」


「……はぁ? なんのこと?」


 何言ってんの? 電球? 

それにしても、口悪いなぁ。あ、そうそう、ウチら安達家は、切れたら毒舌になんねん。



「とぼけんのも大概にせい!」



 言いながら、顔に向かって鉄拳がとんできた。って、あぶな!

ウチは慌てて顔を右にズラして避けた。

 よかったぁ、動体視力よくて。

ってか、なにやねん! このおかん!! ウチじゃなかったら、避けれへんとこやったで!!



「おい、なにすんねん!? 娘に向かっていきなり右ストレートは、ないんちゃうん?」


「知らんわ! で? なんで電球割ったんや?」


「知らん! ってか、なんでウチが犯人やと思ってんの?」 


「あんた以外に誰がいるってゆうんや!?」


「ウチ以外にも、柚子とか、タマとかいるやん!」


 柚子はウチの妹で、タマはウチの猫やで。



「柚子もタマも、そんな悪いことはしませ〜ん!」


  プチッ



「ほう、……フッ、えらい自信やん? なんか確証でもあるんか?」


「確証もなにも、犯人はあんた以外にはいいひんから!」


「なにやねん、その根拠のない自信は! ……ハッ、まぁしゃーないか、あんた、あたま空っぽやもんな!」


「はぁ? あたま空っぽ? ハハ、まぁ否定はしいひんけどな、でもな、あんたには負けるわ」


「あぁ? 毎日毎日、アホみたいに顔にファンデーション付けまくってるあんたには負けるけど!」


「はぁ? なんや――」


「そんな、1瓶のうちの4分の1も使ったところで、しわもシミも隠れてへんで? はい、残念でした〜!!」


 とびっきりの笑顔に怒りのオーラをまとわせながら言った。

これは結構効いたかも。 ざまぁみろ♪



「こんの……家から出てけぇ!! 反省するまで帰らんでよろしい!! つーか、帰ってくんな!!」




 ――と、言うわけで、突然家を追い出されてしまった。

てか意味わからんわ、なんであらぬ疑いを掛けられた上に、追い出されなアカンねん!

あ〜〜、ムカつく!

 ウチは怒りをこめて、近くに転がってた空き缶を蹴っ飛ばした。


  カツーン……ガンッ


「いたっ」


 ゲ、ヤバ、誰かにぶつかった……。



「いったぁ……誰やねん!?」


 うわぁ、あちらさん、えらい怒ってるようやな……。

ってか、この声は……。


「ウチは蜜柑やけど、あんたもしかして檸檬?」


 のような気がする……。

ハッ、しまった! 間違ってたらメッチャカッコ悪いやん!!



「へ? 蜜柑!? あんた、何の恨みがあって私に空き缶当てたん!? 一体私が何したっていうん!?」


 よかった〜、檸檬やった! 当たってた!



「アハハ、ゴメンゴメン、ちょっとムカつくことがあったからな……」


「へ? 何があったん?」


 あぁ、思い出すだけでも腹立たしい!



「ウチのおかんがキレて、追い出されてん……」


「え!? マジで!? じゃぁ大変やん! 心配になってくるわぁ!」


 ……心配してくれんのは嬉しいけど、なんでこんなに嬉しそうに言ったはんの、この人?



「なんか楽しんでる?」


「え!? なんで!? 大切な、たいせつ〜な友達が家追い出されて、楽しいわけないや

ん!」


 そうかな? なんか目が活き活きしてんねんけど……。



「そんなことより! 家に帰れへんねんやったら困るやんな! 私の家に来たら?」


「え!? ホンマに? それは助かるわ!」


 あ、いやでも、檸檬の家ってなんか怪しいような……。いやいや、檸檬の嘘に引っかかってどうすんねんや!


 ――とまぁ、そういう訳で、檸檬の家に行くことになった。



「これでやっと、私が嘘ついてへんってことが証明されるわ!」


 嘘ついてるって思われるんがそんなに嫌やってんな……。

でも、罠あるとか結局嘘やろ?




 5分くらい歩いてたら檸檬の家に着いた。

なんか昔ながらの和風の家って感じで、憧れるような家やった。

でも、何故か急に檸檬が止まる。



「急に止まってどうしたん?」


「う〜ん……ちょっと待ってて!」


 そう言って、檸檬は1人で門の前に行って深呼吸した。

ウチが今いる位置は、門から5メートルぐらい下がったところ。

 ってか、檸檬は一体何やってんの? いや、深呼吸ってのはわかってるねんで? でも、なんで深呼吸してんの?


「スー、ハー、スー、ハー……よし! あ、蜜柑? 門開けるから気をつけてな!」


 何故!?

 ウチの心の中の疑問は無視して、檸檬は門を開けた。



  ――ひゅっ



 ……? 何があったん? 

なんで門を開けた途端に、鉄のバケツが飛んできたん?

 しかも、檸檬は軽々と避けてるし……。



「蜜柑!? 何してんの!? 早く行くで!」


 へ? なんでそんなに危機迫った感じなん?



「早く!!」


 仕方なく、ウチは檸檬についていった、ダッシュで。



「敷居を跨ぐときは、落とし穴があるから気をつけてや!」


「うん? って、えぇ!?」


  ズボッ


 アカン、はまってしまった。



「以外にも蜜柑って、どんくさかったんやな」


「はぁ!? 五月蝿いわ! 大体、檸檬が忠告するん遅かったから悪いんやろ!」


 檸檬のヤツ、敷居を跨いでる途中で言われても遅いわ!!



「まぁ、とにかく! 早く行くで!」


 そう言いながら、次は……? ゴム手袋? なんでやねん……。

何故か檸檬はゴム手袋を手にはめてた。



「なぁ、なんでそんなんはめてんの?」


「え!? 家の戸を開けるからに決まってるやん!」


 戸を開けるためって……あぁ、檸檬って、潔癖症やったんやぁ……。



「ちょっと離れといてや! 電気来るから!」


「電気? どこか――」



 バチバチバチバチ



「ど、どうしたん!? 静電気!? 強すぎるわ!!」


 檸檬がドアノブに手をかけた瞬間、すごい電気がバチバチ鳴ってるのが聞こえてきた。

ヤバイ、こんなに静電気強かったら、死ぬで!



「なに変なこと言ってんの? こんな静電気があったら、自分の家の戸を開けようとしてショック死してしまう人が出てしまうやん」


「いや、まさに今檸檬死にそうやったやん! 潔癖症のおかげで助かったな!」


 ゴム手袋はめてへんかったら、死んでたやろうなぁ……こわっ



「潔癖症? 私はあんまり気にせえへん方やで」


「え? だって、ゴム手袋はめてるやん」


「……蜜柑って、天然?」


「そんなわけないやろ!」


「じゃぁ、アホやろ?」


「違うわ! 失礼な!!」


 なんでこんなに言われなアカンねん!



「私、電気が流れてくるから、ゴム手袋はめてんけど……」


「えぇ!? そんなにいつもいつも、激しい静電気がくんの? よう生きてたな」


 すごい生命力やん! ちょっと見直したで!



「……こんな静電気、あるわけないやん」


「今あったやん!」


「違うわ! 今のは罠や! あと、触っても一応死なへんで、気絶ぐらいしかせえへんし。安心してや!」


「安心できるか!!」


 てか罠!? なんでやねん! いつの時代やねん!?



「ってか、次行くで! 早くしな、どんどん次の罠が迫ってくるしな! 時間との勝負やで!」


 言いながら、檸檬は走り出した。ウチもついていった。

てか、なんでなん? 一体なんで罠があんの?

しかも、家の中でそんなに暴れてええんかいな? まぁ、こんな丈夫そうな家やったら大丈――ぬわぁ!!



「うわ、蜜柑、大丈夫!? また落とし穴にはまったん!?」


「いったたたたた……落とし穴っていうか、あまりにも暴れるから、床が抜けてし

まったんやん!!」


 どうしよう、人様の家の床を抜いてしまった……。



「いや、落とし穴やって。だって、周り見てみ?」


「へ? 周り? ……あ」


 なんか、ウチの周りがきれいな正方形になってる。うん、確かに落とし穴や。弁償せんで済む! よかった〜



「ちゃうわ!!」


「え!? 何が!? 何が違うん!?」


「何で家の中に落とし穴があんねん!? 危ないやろ!!」


「罠やもん。しゃーないやん」


 何がしゃーないねん!



「そんなことよりも、早く行こう! 居間まで行ったら、とりあえず大丈夫やし」


「あぁ、もう!」


 なんでこんな目にあわなアカンねん!? もうマジギレ寸前やで!

とりあえず周りに手をかけて、落とし穴から出る。……よっこらせっとぉ。

ふぅ、出れた出れた。



  カチッ



「あ! ああああ!!! そ、そそそそそこ、罠のスイッチや……」


「はぁ? また? どんなんやねん?」


「四方八方から矢が飛んでくんねん」


「はぁ?」


 そんな訳ないやん、と思って周りを見回すと、本間に矢が飛んできてた。

なんでやねん、ホンマにムカつくわ〜



  ブチッ



「さっきから次から次から、罠とか抜かしやがって……ウチをなめんなよ!?」


「み、蜜柑!? 切れてる場合違うって! これは、私の家族でもどうにもならへんで!」


 檸檬が叫んでる間にも、矢がどんどん飛んでくる。



  シュシュシュシュシュシュシュシュッ



 マジで、この家、ウチをなめてんのか!?



「だからぁ……」


  ババババババババババババッ


「ウチをなめんなって言ってんのが、わからへん?」


  カランカランカランカランカラン、カランッ



 ウチは、掴み取った矢を床に落としながら言った。



「……はへ?」


「何、間抜けな声だしてんの?」


「すごい……」


「はぁ? 何がやねん。」


「何がって、飛んでくる矢を全部素手で取ったやん! 人間離れした技やで!!」


 なんか尊敬の眼差しで見てきてるけど、人間離れって、失礼違う?



「ってか、初めの自己紹介で言ったやろう。ウチは、動体視力がめっちゃいいねん!」


「うん! 尊敬してんで!」


 ……はぁ、話が噛み合ってヘん。



「とにかく、早く行こう。また罠が来るんやろう?」


 あぁ、折角毒舌をブチ撒いてやろうと思ったのに……こんなに尊敬の眼差しで見られたら言えへんやん。



「大丈夫だいじょーぶ!! 蜜柑の動体視力があれば、どんな罠も恐くないって!」


「はぁ?」


 ……照れるやん。



  ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……



「ん? ゴロゴロって……」


「あ! しまった!! 入って5分たったら鉄球が転がってくる仕掛けやってん!!」


「どんな仕掛け!? ってか、殺す気満々やん!」


 うわぁ、でっかい鉄球が、勢いよくこっちに、出口に向かって転がってくる……。



「ウチの動体視力、関係ないやーん!!」


「ごめ〜ん! もう私等の人生終わりや!」



 何言ってんねん! 檸檬のヤツ! こんな人生の終わりとか、絶対嫌や!!

 なんか……なんか方法があるはずや!!


 

 ――生き続けるための突破口が、何か! 考えろ、考えるんや!! 




 ――あぁ、もうすぐそこまで来てる、もうアカン……

 

   いや、諦めるな! 考えろ! ……あ!



「檸檬!! こっちや!!」


「えぐ、えぐ……あ〜ん……ごめ〜ん蜜柑……」


 何泣いてんねん! こんなときに!? 

いや、こんなときやからこそ泣いてんのか……って、分析してる場合違う!!



「もう、こっち来い!!」


 ウチは無理やり檸檬の手を引っ張って、目的地へ突っ込んだ。

 これで助かるはず……



  ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……



 よし! 向こうに行った! 作戦成功!!



「檸檬、大丈夫? もう鉄球は向こうに行ったで」


「えぐっ、えぐ……え?」


「『え?』違うわ! 泣くな、鼻水汚い! だから、鉄球は向こうに行ったって!」


「へ?」



  ブチッ



「ホンマにものわかりが悪いな! 鉄球は向こうに行ったって言ってんねん! わからへんの!? あんたそれでも日本人!?」


「え、え? ……ごめん」


「ごめんで済んだら警察はいらんわ!! 大体何やねん、この家は!? 落とし穴やバケツはまだいいとして、ドアノブからは電気流れるわ、四方八方からは矢が飛んでくるわ、ドでかい鉄球は転がってくるわ……何がしたいねん!? 殺す気か!?」


「……ごめん。ってか、ひとつ訊いてもいい?」


「はぁ? 何やねん?」


 ウチの怒りはまだこんなもんと違うで!!



「ここどこ? ってか、どうやって助かったん?」


「へ?」


 わかってへんの!? にぶっ



「めっちゃにぶいやん! わからんの!? ここは落とし穴の中で、この穴の中に入って鉄球を避けたんやん! なんで体験しといてわからんの!? ビックリやわ!!」


「え? なんで落とし穴の中にいんの?」


「ウチが、必死になってあんたを引っ張ったんやん!! 覚えてへんの!? なんかショックやわ!! 認めて!! ウチの努力を認めて!! 悲しいやん!! いや、人知れずする努力とかもカッコいいけど、やっぱりウチは認めてほしいわ!!!」


 なんかもう、いっぱいいっぱいで思ってること全部言ってしまった。

『認めて』とか、なんか……強要すんのって……我ながらカッコ悪っ



「……すごい」


「う……もういいって、強要してすごいって言われても、嬉しくないし……」


 あぁ、誉め言葉やのに、なんか自分が情けなくなってきた……。



「いや、ホンマにすごいって! すごいすごいすごい!!!」


「ぬ!? て、照れるやん!! 自分で言わせてても、そこまで、すごいすごい言われたら、

さすがのウチも、照れるで!!」


 しかも、また檸檬の目がキラキラ光ってんねん!! ああ〜〜、めっちゃ照れる!!



「本心やって! まさか、生き延びれるとは思わへんかったわ。蜜柑は命の恩人やな! 有り難う!!」


「照れるわ!」


 照れ隠しで、ちょっと強めに言ってみた。ってか、照れるって言ってる時点で、隠れてへんな。



「よし! じゃぁこの調子で、いざ、居間へ!!」


「『いざ、居間へ』って、言いにくいわ!! ってか行かへんで!」

 

 冗談じゃないわ。これ以上進んだら死ぬ、ってか一刻も早く帰って寝て、このことを夢やと思いたい!!  ウチの心の底からの望みや!!



「え? あともうちょっとやで?」


「あと一歩で着いたとしても、行かへん! もう帰る!!」


 言いながら、出口へとダッシュする。ウチはホンマに早くここから出たいねん!!



「あ……蜜柑?」


 檸檬の言葉なんか無視や!! 早くこんな家出たんねん!!



 ウチは、早く出たい一心で、ドアノブに手をかけた。



  バチバチバチバチバチバチッ


 しまった!! 気づいても、時すでに遅し――



「ぎゃぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!」


 ドアノブの電気に、や、ら……れた…………、ガク


  





――――――――――――――――――――――――――――――


 ――ん、…………かん、……みかん、蜜柑!!


 ん? 誰かがウチを呼んでる? 誰が? なんで?



「いい加減に起きんか! こんの、超ド級のアホがぁぁぁあああ!!!」


  バコッ



「いったぁ……誰やねん、寝てるヤツの頭を叩く、不届き者は!? 喧嘩売ってんのか、コルァ!!!」


 あ、巻き舌できた! やったー!!

って、違う違う、誰やねん、ウチの頭叩いたヤツは!?



「あ! 蜜柑! 起きたん!? よかったぁ」


 あれ? なんで檸檬がいんの?


 ―――あ、思い出した。ウチ、檸檬の家で、倒れたんやった。



「蜜柑! 他所の家に迷惑かけたらアカンやろ!! 何やってんの!?」


「はぁ? ってか、なんでお母さんがここにいんの?」


 周り見る限り、ここはどう見ても檸檬の家やんな……。



「決まってるやろ? 蜜柑を迎えにきたんやん」


「へ? どういう風の吹きまわ―――、あぁ、電球割ったヤツの正体がわかったんやな?」


「う……ま、まぁね。お母さんの勘違いだったみたい! ごめんね」


「きもっ、おかんが標準語で言ってもきもいだけやわ」


「お、おかん!? あれ?」


「大体、なんでウチが犯人やと思ったんかも甚だ疑問やわ!! まぁ、今回のことで、さぞ自分の馬鹿さに気づいたことやろうなぁ」


「あ、あれ? みかんちゃん? 切れてますかー?」


「切れてますけど、何か? 切れへん方がおかしいやろ? ウチを追い出した上に、さっきの言葉、何やねん? あぁ? 『超ド級のアホ』? 自分のこと言ってるんと違うん?」


「ど、どうしよう檸檬ちゃん? 蜜柑、カンッペキに切れてるわ……」


「どうしま――」


「聞いてる? そこの超ド級のアホ2人組み、あんたらこんなにウチを怒らせて、何がしたいん? どうせなら、あんたらの頭、形変わるまで殴ったろか? もしかしたらそのショックで少しは頭がよくなるかもな」


「「ホンマにごめん!!」」


「ごめんで済んだら警察はいらんわ!!! 大体なんで檸檬の家はあんなに危険やねん!?」


 ホンマにこれだけは不思議でしゃーないわ!



「だって、罠がないと泥棒に入られるかもしれへんやん?」


「なんでやねん!! 鍵とか掛けといたら、ほとんど大丈夫や!!」


「私の家には鍵ないねんもん!!」


「はぁ?」


「えぇ?」


「「んな、無用心な!! あんたの家何考えてんの!? アホちゃう?」」


「ぬあぁ〜〜!!! 親子で説教は止めて!!」


「「五月蝿い!!」」


「てか、おかんは黙っとけ!」


「……はい」


「てか、もういいわ! もう疲れた! 帰るで!!」


「「あ、でも……」」


「何!?」


 何やねん、2人して……そんなに帰んのが気にくわへんの!? 何故!?



「も、もう朝の7:30、やったりして……」


「はぁ? 何しょうもない冗談言ってんの!?」


 まだ怒らせたりひんのか!?



「それが、嘘じゃないねん」



 言いながら、檸檬が時計を見せてきた。

まさか……冗談やんな?


 ――え!? 嘘やん!?


 

 時計の短針は紛れもなく7を、長針は6を示していた。ついでに秒針は1を指してるってことは今は7時30分05秒ってことやな! え、どうでもいい? そんなことわかってるって! でもな、ウチ寝起きやで? 少しくらい現実逃避したっていいやん?


 って、アホなこと考えてる場合ちゃうわ!


「う、うわぁぁぁああああああ!!!! 遅刻や!! 何してんの!? 早く行くで!! 檸檬!!」


「う、うん! ……でも」


「でも、何やねん!?」


「蜜柑の荷物、ないで?」


「あ……しまったぁぁぁああ!!」


 制服は今もまだ着てるからいいとして、鞄が……。



「ちょ、お母さん!」


「え? お母さん? 蜜柑! 機嫌なおったんやな! よかった〜!」


「そんなんどうでもいいから! 学校行くから、ウチの鞄、8:20までに持ってきて!!」


「え〜、なんで〜?」


 こんの、諸悪の根源がぁぁあ!!



「誰がウチを追い出したんか、忘れたわけじゃ、ないやんな?」


「い――」


「いや、とは言わせへんで……悪いと思ってんねんやったら、今すぐ帰って鞄届けろ!! 誠意を態度で示さんかい!!!!!」


「りょ、了解!」


 そして、おかんは帰っていった。



 ……ん? そういえば、罠はどうやって避けんねんやろ?



「ぎゃぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」


 ……あ、昨日のウチやん。



「あ〜ぁ……鞄どうしよう……」


「しょうがないで! 思い切って忘れて行ったらいいやん!!」


「ん〜、まぁ、そうやなぁ……じゃぁ、行こっか!」


「うん!」


 そして、ウチらは学校へと出発した。




 ―――登校中―――


「蜜柑〜、私の言ったとおり、罠あったやろ?」


「うん、そうやなぁ。ってか、死ぬかと思ったわ」


「私も! でもな、しゃーないねん。家族はみんな忙しいし……」


「あぁ、いつも1人で危ないから、罠がいっぱい仕掛けられてたんやな」


 檸檬も結構大変やってんなぁ……。



「ん? いや、毎日みんな帰ってきてんで。違うねん、忙しいから、鍵穴に鍵差し込むんがもどかしいねん」


 はぁ?



「だから、手っ取り早く、罠にしてん!」


「いや、意味全然わからへんわ。ってか、どんだけめんどくさがりやねん!!」


「まぁいいやん! それより、めっちゃ面白かったな! また遊びに来てな!!」


「誰が行くかぁぁぁああ!!!!」


 二度と行くか! あんな家!!


そういう思いを込めて、ウチは力の限り叫んだ。



「あんたの家、変やねん!!!!」








 その叫び声は、恐ろしく、近くにいる人たちを、恐怖のどん底に陥れたという。



面白かったでしょうか!?

楽しんでもらえたなら嬉しいです!!

感想・評価もいただけたら、すっごく嬉しいです!!

読みにくいところがあったら、是非教えてください!!

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― 新着の感想 ―
[一言]  お久しぶりです! そしてここでは、はじめましてです。アハさん! 某所じゃ何時もお世話になってます!。  では、感想です。  いや~……おもしろかったです(笑)一人でバカ笑いしてしまいまし…
2010/03/25 18:28 退会済み
管理
[一言] はじめまして、アッハッハ先生。 さて、この小説『あんたの家、変やねん!!』を読みましてまず最初に思ったことは なんやこれ?おもろすぎやねん!いやほんまにおもろいちゅーねん!特に関西弁がおもろ…
[一言] アッハッハの名に恥じない文章かつ、物語の面白さでした。これの続編があったら見てみたいです。 では。水月五月雨でした。
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