ティゼルの野望 その三
こんにちは。
俺は征服王。
ジドエン国の王だ。
ああ、いや、ジドエン領の領王かな。
まだ?
勝手に変更すると混乱するから、統一王が決まった段階で一気に変更するのね。
了解。
会議が終わり、集まった王たちを歓待する宴が始まった。
エカテリーゼ先生のツテの商会との取引で、大量の食料がある。
溢れんばかりの酒がある。
飲めや歌えの大騒ぎになった。
宴での大きな話題は三つ。
一つは、統一王とその選出戦に関して。
これは当然だな。
会議の目的はこれだったのだから。
そして、二つ目は魔法に関して。
このあたりで魔法は珍しいからなぁ。
みんな、興奮している。
三つ目は、エカテリーゼ先生による礼儀作法。
とくに王に同行した文官たちが、興味津々だ。
ん?
女性の文官たちは、礼儀作法よりもエカテリーゼ先生が関わっている商会の商品も気になるようだ。
俺にはよくわからないが、美容関係が強いらしい。
あとはいつもの馬鹿話ばかり。
聞き飽きた内容だが、共通の話題じゃないと会話が弾まないからな。
ティゼル嬢や、エカテリーゼ先生、イースリー嬢が、聞き耳を立てているのがちょっと怖いけど。
あの会議から五十日ほど経過した。
ティゼル嬢の指定した場所に各国から出された文官が集まり、統一後の内政の準備を開始。
同時に、統一王を選ぶ戦いは各地で行なわれた。
俺の国の代表は俺だ。
俺が一番強いから……というのもあるが、負けたときに納得したいからだな。
幸いにして、俺はこれまで勝ち続けたので、決勝トーナメントに出場できる八人に残った。
明日、この八人が戦い、勝者の所属する国の王が統一王となる。
気合を入れる。
絶対に勝つ。
が、その前に前夜祭だ。
前夜祭は、王に選ばれし八人の代表者。
それと、すべての王と護衛が揃っている。
明日の最終戦を見るためだ。
すでに敗退していたとしても、誰が統一王になるかは注目しているということだろう。
また、飲めや歌えやの大騒ぎのなか、いつもの馬鹿話が盛り上がる。
ティゼル嬢や、エカテリーゼ先生、イースリー嬢が、またもや聞き耳を立てているのがちょっと怖い。
ん?
ティゼル嬢が、明日の決勝トーナメントに残った出場者の所属する国の王を呼び集めた。
そして、会議室に移動。
なんだろう?
「統一王が決まる前に、話しておかないといけないことが三つ……いえ、四つあります」
決まったあとだと、聞いてないぞってなるからかな?
「一つ目は、対外戦争は当面禁止です。
これは内政を進めるためでもありますが、対外戦争を禁止するからとユーノデンナ王国から食料や物資をもらいましたので」
そうだったの?
「もちろん、相手から仕掛けてきたのでしたら、反撃はかまいません」
だよな。
ならばよし。
「二つ目は、いくつかの商会との商取引での税制面での優遇をお願いします。
そういったことを条件に、商取引をしてもらっていますので」
なるほど。
まあ、そういったことは文官たちに丸投げするから気にしない。
悪いようにはならないだろう。
「三つ目は、統一王の王都に関してです」
統一王の領地でいいんじゃないのか?
「それだと、統一王が代わるたびに文官たちが移動することになります。
効率が悪いです」
まあ、そうか。
「そこで、ここに統一王の王都の建設を予定しています。
ちょうど、空いていますから」
ティゼル嬢が地図を広げ、一点を指さす。
……
待て、ティゼル嬢。
そこは空いているんじゃない。
駄目な場所だ。
「ドラゴンですか?」
そうだ。
「大丈夫です。
すでに了承はいただいています」
……え?
了承って、誰の?
「ドラゴンのです。
知り合いの混代竜族でしたので」
………………………………
「ついでに王都を守ってもらう予定です。
水源も近くにありますし、ここに道ができれば発展するでしょう」
そ、そうかもしれないが……
えっと、ドラゴンの知り合い?
「あとで紹介しますよ。
なんだかんだで忙しいみたいですから、なかなか時間が取れなくて」
そうかもしれないが……
ふ、深く考えないでおこう。
「王都の建設に関してですが、こちらも私の知り合いが手がけてくれることになっています。
三十日もあれば形になります」
三十日?
家を数軒、建てるだけかな?
あ、いや、文官は各国から二十人前後……八百人は超えているはず。
それだと駄目だよな?
しかし、ティゼル嬢が適当なことを言うとは思えない。
なんとかするのだろう。
頭を使うことは、任せたほうがうまくいく。
「最後に四つ目ですが……
決勝トーナメントに残ったのだから、面子は十分。
このあたりで負けたらどうですか、もしくは優勝だけは絶対に避けてください。
そういったことを貴方たちに進言した者を……身分は問いません。
統一王に仕える文官として差し出してください」
え?
いいの?
何人かに言われたけど。
ほかの王たちも、心当たりがあるみたいだ。
「先が見える有能な人材です。
そういった者こそ、統一王のもとで働いてもらいたいので。
あ、逃げる可能性があるので、逃がさないように」
わ、わかった。
なんとかしよう。
ティゼル嬢からの連絡が終わり、また前夜祭の会場に戻る。
明日の戦いは、絶対に勝つ!
決勝トーナメント。
基本、なんでもあり。
激しい戦いだった。
だが、俺は勝利した。
俺は征服王から、統一王となった。
よかった。
そして、祝勝会。
いや、統一王、誕生の宴だ。
ありがとう、ありがとう。
ケイルランド地域を豊かにするために頑張ります。
挨拶をしたら、また馬鹿話で盛り上がる。
真面目な話は、文官たちがすればいい。
ほかの王たちも、似たような感じだ。
ん?
またティゼル嬢が呼んでいる。
今回は俺だけね。
「お聞きしたいことがあります」
なにかな?
「以前より気になっていたのですが、宴会で盛り上がるたびに天使族の悪口を言ってますよね?」
あ……
たしかに俺たちがしている馬鹿話の大半が、天使族に対する悪口……というよりは愚痴だな。
「なにか天使族に恨みでもあるのですか?」
恨みがあるのかと言われたら、ある。
俺がではなく、先祖が。
あれは……百年前?
百二十年ぐらい前か?
殲滅天使と悪名が高い天使族が、空を飛ぶ魔物を退治したんだ。
その魔物は周囲に迷惑をかけていたから、退治してくれたことはありがたいんだが……
戦闘の余波で、畑とか家がいろいろと駄目になってな。
「……なるほど」
俺が話していると、ほかの王……あ、今日から領王か。
領王たちが話に入ってきた。
「殲滅天使だけではないぞ。
皆殺し天使という三人組も、似たように暴れてな」
地形が変わったところもある。
「ほかにも、そういった話があります?」
もちろん、あるぞ。
俺が体験したわけではないが、何度も聞いた話だ。
統一王、誕生の宴は天使族への愚痴大会となり、大盛り上がりだった。
エカテリーゼ先生、イースリー嬢、必死になってメモを取らなくても。
ははは。




