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ティゼルの野望 その一

人間の国に行ったティゼルのお話です。


 こんにちは。


 俺は征服王と呼ばれている人族の男。


 ジドエン王国の王だ。


 そう王だ。


 もっとも偉い。


 しかし、そんな偉い俺でも理解できない状況がある。


 まあ、偉いからと賢いわけではないからな。


 ははは。


 ……


 なぜ、こうなった?



 俺の国は、四十ほどの小国が乱立する地域にある。


 この地域の呼び方は多種多様だが、俺の国ではケイルランド地域と呼んでいる。


 大昔に結ばれた契約、ケイルランド契約がその語源だ。


 まあ、どこからどこまでがケイルランド地域かは不明なんだが……


 これまでは気にする必要はなかった。


 誰も気にしていないからな。


 俺は目の前の問題に対処するだけだった。


 食料がない。


 ならば、食料がある国を攻める。


 金がない。


 ならば、金がある国を攻める。


 場当たり的?


 そうだな。


 その通りだ。


 それのなにが悪い?


 予定を組め?


 災害や敵は予定通りに来るのか?


 馬鹿なことを言うんじゃない。


 俺は王として、部下や民を守らないといけない。


 言って悪いが、他国の者などあと回しだ。


 他国に気を使えるほど、裕福ではないからな。


 それが王であろう。



 ……


 ああ、考えればゴズラン王国を攻めたとき。


 内政に優れた第三王女を逃がしたのが悪かったのかもしれない。


 あのときはユーノデンナ王国を脅して……ユーノデンナ王国に頭を下げて、文官を二十人も回してもらえたからリカバリーできたと思ったのだがな。


 逃したゴズラン王国の第三王女。


 彼女の紹介で、三人組の女冒険者がやってきた。


 女ばかりとは珍しいと思ったが、王に対する礼儀はなっていたので滞在を許可したんだった。


 そしたら、いつのまにかあの女冒険者が国政を握っていた。


 嘘みたいな話だと思うかもしれないけど、事実なんだ。


 俺の国の内政大臣室で働く文官たちは、嬉し涙を流しながらティゼルなる冒険者に席を譲っていた。


 譲るだけならともかく、指示まで喜んで聞く始末。


 内政など気にもしない将軍たちは、エカテリーゼなる冒険者に力で従えられた。


 あの将軍たちが子供扱いだった。


 一蹴というか……よくわからない武術で叩きのめしていた。


 以後、将軍たちは俺よりもエカテリーゼの言うことを聞く。


 いや、俺の言うことも聞いてくれるが、聞いたあとにエカテリーゼの顔色をうかがうんだ。


 それでいいのか、将軍たちよ!


 そして、残る一人の冒険者、イースリーは……俺の国に潜んでいた他国の諜報員を次々に捕まえた。


 こんなにいたのかと驚く俺に、喜々としながら処刑方法を提案してくる。


 怖かった。


 そして、俺は抵抗した。


 他国の諜報員とはいえ、問答無用で殺すのはよろしくない。


 相手の国に苦情を入れ、賠償金を取ったほうが得だと俺が説明しなければならなかった。


 なぜ俺が他国の諜報員をかばわねばならんのだ。


 見つかった諜報員は、その場で殺されるのが名誉?


 どこの風習だ!


 魔王国との最前線でも、そこまで乱暴ではないはずだ!


 あー、いや、たぶん。


 詳しくは知らない。


 なんにせよ、諜報員は牢屋に放り込んだ。


 それに不満を持ったのか、イースリーは山賊とか盗賊を狩り始めた。


 こっちは処刑でもいいですよね?


 よくない。


 駄目。


 いやいや、癒着ゆちゃくとかじゃなくて。


 山賊も盗賊も、俺の国の民。


 いや、偽善とかじゃなくて。


 生活に困窮して山賊とか盗賊をやっているだけだから。


 その証拠に、誘拐とかそういった系のことはしてないでしょ?


 食料を奪って終わりにしているはずだから。


 そりゃ、被害が皆無だとは言わないよ。


 無理やり奪うんだから、誰も傷つかないなんてことはない。


 でも、それには仕方がない部分もあってだな……


 ほ、ほら、ティゼルも殺しちゃ駄目って言ってる。


 そうだな。


 殺しちゃ駄目。


 うんうん。


 強制労働……え?


 待て待て待て。


 それって遠まわしな処刑じゃないか。


 違う?


 そんなもったいないことはしない?


 山賊とか盗賊をやるぐらい困窮しているなら、働かせて食事を与えればいい?


 それができるなら、そもそも問題になっていない。


 このあたりは慢性的な食料不足なんだよ。


 ……


 よそから買ってくる?


 周辺国も慢性的な食料不足なのは一緒だ。


 ケイルランド地域は食料の生産性が悪いんだ。


 ケイルランド地域外から買う?


 それも無理だ。


 この地域を相手に商売をしてくれるところはない。


 なぜって?


 外からやってくる商人、襲いまくってるから。


 仕方がないだろ。


 食料がないんだから。


 商人は殺してないぞ。


 ちゃんと追い返している。


 荷物はほぼすべて奪っていると思うけど。


 エカテリーゼのツテで外から商会を呼ぶから襲うな?


 ツテってどこだよ?


 小さいところが来ても、食料が足りない……え?


 ここって超大国で有力になってる大商会じゃないか?


 俺でも知ってるところだぞ。


 そこにツテがあるって、どんな人脈しているんだ?


 エカテリーゼは、その超大国の元公爵令嬢?


 その商会を立ち上げたのもエカテリーゼ?


 ……え?



 とりあえず、商会の一団が来ても襲わないことを約束。


 周辺国にも一報、入れといた。


 超大国の御用商人を襲って、得することなどないからな。


 知らなかったではすまない話だ。


 でも、その商会から食料を買えるとして、支払いはどうするんだ?


 言ってなんだが、金はないぞ。


 探せばなにかしらの鉱脈はあるかもしれないが、いまから探しても間に合わんだろう。


 当面は借金?


 いくら知り合いだからって、返済のアテがない借金はさせてくれないぞ。


 なにかしら担保はいる。


 見つけてもいない鉱脈は担保にならないだろ?


 よくわからないけど。


 内政大臣室で働く文官たちが、口うるさく言ってた。


 大丈夫?


 そ、それなら任せるけど……


 ん?


 どうしたティゼル?


 俺に仕事?


 国のためになる?


 そう言われたら、俺は王だからやるけど……なにをすればいいんだ?


 会議を開くから、周辺国の王を呼べ?


 違う?


 周辺国じゃなくて、ケイルランド地域のすべての王を呼べ?


 いやいや、近隣は武力で脅せば応じるかもしれないけど、遠方の王は無視するだろ。


 攻めろ?


 え?


 応じたところは素通り?


 応じないところは、代表を会議に送るまで攻める?


 いや、国を広げても統治が……


 統治はしない?


 とりあえず、会議に参加させる?


 全員を集めろと?


 ……………………………………


 行軍には金と食料がいるんだけど?


 そこを無視すると、内政大臣室で働く文官たちがうるさいぞ。


 大丈夫?


 すでに大国のユーノデンナ王国に話をつけて、行軍のための金と食料を用意してもらっている?


 三十日以内に到着するから、軍の編成をしろ?


 えーっと、よくわからないけど得意分野だ!


 任せろ!


 わ、わかっている。


 まずは手紙を書いて、会議に呼ぶんだな。


 苦手だけど、頑張る!


 あ、待って。


 どこからどこまでがケイルランド地域か知らない。


 どうしよう?


 それを決めるのが王?


 ……俺の判断でやっていいんだな。


 やっちゃうぞ。


 やっちゃうからな。





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― 新着の感想 ―
さすが!ティゼル。やることが凄いなあ。 ここら辺りも大樹村の傘下だな。
ジドエン;ジ・エンド、つまり終わっているんだ ケイルランド;ケールかな? 美味しくないと(個人の感想です)
征服王ってどの口が言うんだって感じなんだけど。蛮族国家乗っ取って何がしたいのかな?ティゼル。 統治しないからお金も食料もないんだよ
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