五村訪問
五村のヨウコのもとには、日に何人もの訪問者がやってくる。
事前に訪問者たちの訪問目的を秘書たちが調べるので、面会時間は短いのだが……
時々、面倒な者がいる。
貴族からの使者だ。
「我が主人がこの地での滞在を望んでいる。
ついては、屋敷を早急に用意するように」
貴族語かなと思ったら、ほんとうにそう言ってた。
ちなみに、貴族語だと意味としては、「滞在したいので宿の紹介をお願いします。できるだけ安いところを」となる。
これに対し、貴族語でないと知ったヨウコからは冷たく一言。
「失せよ」
貴族語で、「ごめんなさい。いまは無理なので、また日を改めてください」となる。
まあ、相手が貴族語を使っていないので、そのまま受け取るだろう。
そうなると使者は激高し、面倒になる。
何度もあったことだ。
それゆえ、ヨウコも対策を講じている。
面会室の扉がバンッと乱暴に開き、許可もなく誰かが入って来る。
「誰だ!
無礼者!
この場にハイドラ卿の使者である私がいることを……」
使者は乱入者に文句を言うが、途中で相手を理解して声が止まってしまう。
乱入したのは魔王。
「急ぎの用件だ。
ヨウコ殿、第三グラウンドの使用に関してなのだが……」
ヨウコは使者を放置し、魔王と話をする。
そして、魔王が退席後に……ヨウコが一言。
「それで、使者殿。
どのようなお話であったかな?」
使者はなにも言わず、そのまま帰った。
対策は成功のようだ。
そう、対策とは、隣の部屋に魔王が待機しており、タイミングを見計らって乱入してくること。
その効果を、俺はヨウコの横で見ていたのだが……
毎回、魔王を呼んでいるのか?
「そうではない。
魔王が暇なときに、面倒な面会を受けるようにしているのだ」
へー。
「魔王がいないときは、ビーゼル殿や、ビーゼル殿の母などに頼むこともあるな」
そうだったのか。
こっちから礼を言っておこう。
「いやいや、ちゃんと謝礼は出しておる。
村長が気にする必要はない」
そうか?
「うむ。
それより、村長が同席しているのに、意識されぬのがな」
ははは。
ヨウコの秘書に思われたのかもしれないな。
もう少し、立派な服を着るように心がけよう。
冬はザブトンが冬眠しているから、ついつい手を抜いてしまう。
いや、それでもそれなりにいい服を着ているんだけどな。
そんなことを言いながら、ヨウコと一緒に食堂に……となりの部屋で控えている魔王がこっちを見ていたので、魔王も誘って一緒に昼食をとった。
ヨウコセットのキツネうどんは美味しかった。
リリウス、リグル、ラテたち三人が、それぞれ単独で五村の近くの森に入るらしい。
これまでも訓練で何度か森に入っているけど、そのときは集団で。
指導してくれる者がいた。
単独で入るのは初めて。
せめて三人一緒でと言いたいけど、それだと訓練にならないらしい。
まあ、訓練なので比較的安全な森が選ばれる。
なら季節も選んでほしいなぁ。
五村の周囲は雪が積もらないけど、冬は冬。
食料の確保がむずかしい。
心配だ。
心配する俺の目の前には、やる気まんまんのリアたちハイエルフが装備の確認をしている。
リリウスたちの装備ではなく、自分たちの装備だ。
リアたちは、リリウスたちの護衛というか、救助要員として隠れて同行するらしい。
これは勝手にやることではなく、もともと警備隊は隠れて護衛を同行させる予定だった。
尾行の練習を兼ねているそうだ。
ただ、その護衛のポジションをリアたちが、交渉で手に入れた。
一応、リアからは「穏やかな交渉でした」と報告されているが……
警備隊からは「要求を突きつけて、あとは笑顔だった」と聞いている。
俺がリアたちのところに来たのは、注意するためだ。
注意の結果。
動けるハイエルフ全員が参加予定だったのが、六人になった。
そして、フウマも参加する。
野外活動の練習が必要と、本人と山エルフたちから要望されたからだ。
リリウスたちにバレないようにな。
「マーカーセーテー」
いつもの黒い服ではなく、緑を基調とした森林迷彩で全身を覆っていたフウマが手をあげ、返事をした。
五村のプラーダ美術館。
俺は不定期だが、顔を出している。
プラーダやほかのスタッフのやる気に繋がるからだ。
不定期訪問だが、邪魔にならないように事前に訪問することを伝えているし、スタッフへの差し入れも持参している。
嫌がられはしないとは思うが……
まあ、高頻度にならないように心がけている。
プラーダ美術館に行ったら、ついでにキッシンリー夫妻の娘である、カレンの入る整備槽の様子も見る。
俺が見てもなにもわからないが、ちゃんといることを確認するためだ。
一応とはいえ、キッシンリー夫妻から預かっている形だからな。
プラーダ美術館を出たら、近くにある洋菓子店フェアリーフェアリを訪問。
こちらも、店長代理の獣人族の娘、ロロネに事前に訪問すると連絡している。
まあ、出迎えとかを期待しているわけではないが……
盛大な飾りは不要だぞ。
うん。
こちらにも、スタッフへの差し入れがある。
ああ、洋菓子店フェアリーフェアリを守っているザブトンの子供たちにもあるぞ。
いつもご苦労さま。
怪しいやつはいるか?
いない?
それはなにより。
洋菓子店フェアリーフェアリの周囲が開発されて人が増えたからか、お客がそれなりにいる。
「飛行船の発着場が近くにあるのが大きいですね。
乗らない人も見物に来ますので、その帰りに寄ってくださる感じです」
そうか。
もう少ししたら、ホテルやショッピングモールもできるから、さらに忙しくなるかもな。
「はい!
頑張ります!」
いやいや、ほどほどにな。
赤字じゃないんだし。
無理や無茶は駄目だからな。
「スタッフに強く言っておきます」
よろしく。
洋菓子店フェアリーフェアリを出た俺の今日の予定は、これで終了。
あとは自由だけど……
クロトユキと酒肉ニーズに行くか。
近くに来たのに、顔を出さないのかと言われるからな。
一応は、俺が店長だしな。
麺屋ブリトアは……常に忙しいから営業時間は遠慮したい。
となると、開店前……も迷惑か。
閉店後に行くとしよう。
そう決めた俺のところに、デルゼン製紙、デルゼン印刷の代表代行であるエライザがやってきた。
職場は洋菓子店フェアリーフェアリの近くだったな。
「製紙や印刷のところには顔を出されないので?」
エライザの顔は、村で見ているだろ?
「代表が顔を出してくれるだけでスタッフのやる気があがります」
……わかった。
ただ、差し入れはないんだが?
「フェアリーフェアリのケーキが喜ばれます」
急な大量の注文は迷惑じゃないか?
「受け取りは後日でかまいません」
注文しておこう。
「ありがとうございます」
俺はエライザの案内で、デルゼン製紙、デルゼン印刷を見てまわった。
ロザリンド 「エライザさんの出番、多くありません?」
クラカッセ 「多いですね」
ロアージュ 「潰す?」
エライザ 「そっちはアニメに出てますよね?」
ラッシャーシ「最近……私の出番が……」




