大樹の村の鍋
短めです。
闇鍋。
参加者が持ち寄った具材を誰が入れたかわからない状態で鍋に投入。
箸で掴んだ物は食べないといけない。
ここまでなら変わり鍋なのだが、掴んだ物は食べないといけないというルールを悪用し、鍋に適さない物を投入されたりする。
食事ではなく、ゲーム感覚のものだ。
俺としては、食べ物で遊ぶのはよくないと思うので、村で闇鍋をする気はない。
村の住人も、食べ物を無駄にする感覚には抵抗があるので、闇鍋をやろうとはしない。
だからだろうか、大樹の村オリジナルな闇鍋が生み出された。
その名も、光鍋。
光鍋。
それは、鍋を囲む者が一人一回のクジを引き、具材を決める鍋。
一応、白菜とキャベツは追加自由。
そうしないと、野菜が一切ない鍋とかになる可能性があるから。
栄養面から、野菜は食べてほしい。
鍋なら白菜かキャベツ。
出汁の種類に関しては、具材が出そろってから決めることができる。
これもどのような具材の鍋でも、美味しく食べてもらいたいから。
あとは……白ご飯、締めのうどんは自由。
具材の当たり具合によって、食べ応えのない鍋になる可能性があるからな。
そういった場合に備えてだ。
そして、今日の夕食は光鍋。
クジでみんな、一喜一憂している。
魚、魚、魚な鍋もあれば、野菜、野菜、野菜な鍋もある。
バランスよく具材が揃った鍋は……魔王のところだな。
珍しく魔王のクジ運がよく、五村産の豚肉を確保していた。
ちなみに同じ鍋をつつくビーゼルは豆腐。
ユーリは長ネギ、白ネギのセット。
フラウは鮭の切り身だ。
まあ、面白味がないと言ってしまえばそれまでだが、変な鍋になるよりはいいだろう。
俺は断然、バランスよく揃ったのを求める。
……
まあ、俺の引いたクジで選ばれたのはモヤシなんだけど。
モヤシ、嫌いじゃないからよし。
でも、俺と一緒に鍋を囲むルーもモヤシだった。
一瞬、モヤシ鍋が頭をよぎったが、ティアがホタテでハイエルフのリアがエビだったので助かった。
ありがとう。
あ、いや、モヤシも美味しいぞ。
うん。
モヤシ大好き。
おおっと、ホタテもエビも食べるぞ。
ちゃんと残しておいてくれよ。
鍋を食べ終わり、希望者にはデザートがふるまわれる。
今日のデザートは、氷の魔物のアイスが頑張って作ってくれたアイスクリームだ。
滑らかな舌触りになるように、何度も試行錯誤したらしい。
味は抹茶、紅茶、バニラ、チョコ、ストロベリー、オレンジ、ミルク。
鬼人族メイドたちがいろいろと工夫してくれた。
ありがとう。
美味しいよ。
まったりと食後タイム。
文官娘衆たちと家族レストランのメニューを考える。
……
食後なので、食べ物のことは考えにくいな。
「空腹時に考えるべきでした」
そうだな。
「あ、でも、さっきのお鍋なんですけど、家族レストランに取り入れられたらと思いました」
んー光鍋を?
でも、鍋はすでにメニューにあるだろ?
「はい。
ですが、それは一人鍋です。
みんなでわいわいと食べられる鍋を用意できればと」
そうだなぁ。
「それに、鍋だと材料を渡せば、あとはお客さまが調理します。
従業員の手間が減るかと」
なるほど。
お客に調理してもらうなら鍋はいいな。
ほかには網焼きやバーベキューもいいかもしれない。
「家族というコンセプトですから、家族でわいわいやれるほうがいいのではないでしょうか」
そうだな。
しかし、光鍋はどうだろう。
せっかくの家族での外食で、クジ運が悪くて具材に恵まれないとなるとトラブルにならないか?
「その点ですが、普通のお鍋を用意して、クジで一品追加する形式はどうでしょう。
これならクジ運が悪くても、楽しめると思います」
おおっ、それはいいな。
いや、大樹の村の光鍋もそうすべきか?
「大樹の村の光鍋は、このままでいいと思いますよ。
住人はなんだかんだと楽しんでいますし、会話のネタになりますから」
ふむ。
まあ、そのあたりは住人の要望を聞きながらだな。
今回の光鍋では、ヨウコとその娘のヒトエ、温泉地のヨルとクリムが一緒の鍋を囲んだのだけど、具材が悲しいことになっていた。
エリンギ、エリンギ、エノキ、エノキだ。
エリンギ、おいしい。
エノキもおいしい。
しかし、鍋のメインになれるかと言われると少し力不足だと思う。
四人は早々に締めのうどんに移行し、キノコうどん鍋にしていたなぁ。
あの四人は、一品追加方式のほうが喜ぶかもしれない。
聞いてみた。
「そのままでけっこう。
次は肉を当てる!」
「母に同意」
「負けたまま、ルールを変えるのは」
「現状維持で」
うーん、負けず嫌い。
でも、変えないでほしいという意思は受け取った。
しばらくはルールの変更はなしにしておこう。
文官娘衆「家族というコンセプトなら一人鍋は駄目では?」
村長 「ひ、一人でも気軽に入れる店にしてほしい」




