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会議

誰がなにを喋っているかは気にしなくて大丈夫です。

わちゃわちゃと会議をしている様子をお楽しみください。


 小国ではないが、けっして大国ではない王国の王城。


 その一室に、七人の王が揃った。


 王城の主である王と、周辺国の王が六人だ。


 七人の王の関係は必ずしも友好的とは言えないが、それでも彼らは血縁で結ばれている。


 それゆえに集まることができた。


 もちろん、王だけではない。


 それぞれの王の後ろには二人から三人の大臣が控えている。


 一人の王が声をあげた。


六竜神国ろくりゅうじんのくには事前に渡した資料のとおりだ。

 どうする」


「資料が正しいとするなら、六竜神国に喧嘩は売れん。

 売ったとたん、近くのドラゴンが攻めてくる」


「待て。

 このあたりは悪竜の縄張りであろう。

 攻めてくるか?」


「資料では攻めるとあった。

 そして、悪竜は人の暮らしなど気にせんが、縄張りのなかで暴れられて大人しくしておるような竜ではない」


「となると……」


「悪竜の大暴れか。

 近くのドラゴンが攻めてくるより最悪だな。

 ますます六竜神国に喧嘩は売れん」


「いや、まて。

 悪竜との契約はどうなるのだ?

 このあたりでは暴れぬとの約定やくじょうがあったであろう」


「数百年も前の約定であろう?

 どこまで信用できるのだ」


「人同士ですら、約定は破られるからな」


「笑えん。

 悪竜と改めて約定を結ぶのはどうだ?」


「誰がどうやってだ?

 古い文献を調べても、方法はわからんのだぞ」


「待て待て。

 悪竜との約定はあとにせい。

 それよりも、六竜神国だ。

 喧嘩は売れんということだが……六竜神国と接する国への支援は、喧嘩を売ったことになるのか?」


「どうなのだ?」


 王の後ろに控えていた大臣の一人が許可を貰い、発言する。


「六竜神国と接する国、フルハルト王国、ガルバルト王国は魔王国との交戦姿勢を崩していません。

 なので、支援の内容によります。

 資金や武具の支援は敵対行為になります。

 食料は見逃される可能性が高いです」


 大臣の発言に、七人の王たちは小さく頷いた。


 今回、ここに集まったのは、これまで行なっていたフルハルト王国、ガルバルト王国への支援を継続するかどうかを考えるためだ。


 支援継続ならこれまで通りだが、支援を取りやめるなら足並みを揃える必要がある。


「ガーレット王国はどうなっている?」


「以前、ご報告した通りです。

 親魔王国派と反魔王国派で分裂し、内戦状態です。

 ですので、ガーレット王国への支援は停止しております」


「むう。

 天使族が裏切ったという話はやはり事実だったか」


「一部は残っているようですが、大半はガーレット王国を去ったそうです」


「行き先は魔王国だったな」


「大規模な軍事パレードで、天使族の姿を確認できています。

 また、以前より魔王国の王城で天使族の子供が出没していたそうです。

 なぜかひもで縛られていたようですが……」


 大臣はそう言って、一歩後ろに下がった。


「魔王国が天使族を懐柔したのか、天使族が魔王国を乗っ取ったのかわからんが……」


「天使族が入ってから、魔王国を守る壁のように建国された六竜神国」


「混代竜族だけでなく、悪竜と同じ神代竜族の姿も見ることがあったそうだ」


「喧嘩は売れんな」


「では支援は打ち切りだ」


「そうだな。

 支援を続けるのも楽ではない。

 民の暮らしが困窮こんきゅうするばかりだった。

 これで支援分を民に回せる」


「しかし、周辺国との関係を考えるとな。

 簡単に支援は打ち切れんだろ」


「だが、まごまごしておっては敵対と見られ、ドラゴンが暴れるぞ」


「だなぁ。

 隠れて支援するのはどうだ?

 それならば問題ないのではないか?」


「ドラゴンは我らよりも優れておる。

 あなどるような真似はつつしんだほうがよい」


「では、支援を即座に打ち切るか?

 周辺国が騒ぐぞ」


「それゆえ、こうやって集まって我らで足並みを揃えるのであろう。

 我らが結束すれば、そうそう手は出せん」


「だが、私の国の東に接する国は、魔王国討伐の強硬推進派だ。

 私の国が支援を止めたら、あそこは力関係など無視して攻め込んでくるぞ」


 王の一人がそう嘆くと、別の王の後ろに控えていた大臣が手を挙げて発言の許可をもらった。


「そちらの国ですが、王が近く交代になります。

 これは噂ではなく、ほぼ事実です。

 そして、新しい王を中心に魔王国との争いは止める方向で動くとの情報を入手しております」


「待て。

 私は知らん話だ。

 なぜ領地を接する国の王が知らぬことを、領地を接しない国のお主が知っておる!」


「私の妻、その国の侯爵の娘ですから。

 その伝手で得た情報です」


「なんで私の国の者でなく、遠方の国の大臣がめとっとるんじゃい!

 あ、私の国を攻める気だったな!

 挟み撃ちにする気か!」


「いいえ、ただの自由恋愛です」


「嘘吐け!

 知り合えるわけないだろうが!」


「いえいえ、私が大臣職につくまえの若いころ、旅をしておりまして。

 そのときに山賊に狙われていた妻……当時は侯爵令嬢ですね。

 彼女を助けた流れで結婚と……」


「そんな物語みたいな恋愛ことがあるか!

 うちの妻なんて、うちの妻なんて……」


 嘆く王に、隣にいた王が謝った。


「私の妹がすまん……」


「あ、いや、お義兄さんはなにも悪くないから」


「そうだ。

 捕食……失礼。

 捕獲されたお前が悪い」


「うむ。

 あんなにもあからさまな罠に、ほいほいと足を運んだ自身の迂闊うかつさを嘆け」


「妹がすまん……」


「お、お義兄さんはなにも悪くないから。

 油断した私が悪いだけで……」


「はいはい。

 家庭の話は、あとにしろ。

 話を戻すぞ。

 強硬推進派の国が攻めてくる可能性が低いのだから、支援は打ち切るでかまわないな」


「うむ。

 となると……どう打ち切るかだな」


「堂々と宣言するか?」


「それとも、徐々に減らしていくかだが……」


「ドラゴンが怖い。

 堂々と宣言すべきであろう」


「いやいや、それはそれで周辺国の動きが怖い。

 強硬推進派の国の王もまだ変わっておらんのだろう?」


「そうだな。

 その王が交代したタイミングで宣言するのはどうかな」


「しかし、ドラゴンが……」


「六竜神国に使者を送り、我らの意向を伝えてはどうか。

 考えれば、あそこはドラゴンを相手にものが言える場所だ。

 しっかりと伝えればドラゴンが攻めてくることはなかろう」


「それでよいが……誰が使者となるのだ?

 私は嫌だぞ」


「私も嫌だ」


「私だって」


「お、王が行く必要もあるまい。

 大臣の誰かにすれば……」


 七人の王たちは、それぞれ後ろに控える大臣を見るが……誰一人、目線は合わなかった。


「な、なら、王子か王女はどうだ?」


「うちの娘はまだ九歳!

 無理!

 絶対に無理!」


「そんな子供を使者にはせん。

 お前のところの王子はどうだ?

 三十手前でいろいろと遊んでいるんだから、かまわないんじゃないか?」


「いろいろと遊んでいるから、重要な話の使者には不向きだ。

 責任を取れん。

 うちより、そちらの第一王子はどうだ?

 次期国王となるなら、六竜神国と交渉したという実績は大きいと思うが」


「第一王子が国外に行ったら、第二王子が暴れる。

 動かせん」


「その第二王子、どうにかならんのか?」


「ならん。

 うちの国の内政は第二王子の派閥でなんとかしておるのだ。

 排除したら国が潰れる。

 あと、私の後ろにいる一人がその派閥の代表。

 変なことを言わんでくれ」


「すまなかった」


 会議は続いた。


 しかし、使者は決まらなかった。


 そんな会議をしている王城に、訪問者が現れた。


 本来、王たちの会議中に、訪問者の知らせなど伝えられるはずはない。


 しかし、三日も会議が進展しないままだったのと、その訪問者は天使族だったのが幸いした。


 訪問者の口上が、王たちに伝えられた。


「私はティゼル。

 六竜神国から御用聞きにやってきました!

 なにか御用はありますか?」






 とある建物の地下。


 広々とした空間の中央に配置された巨大な円卓。


 それを囲むように置かれた席についている七人の女性。


 一人が声をあげる。


「計画は順調に進行中です」


「すばらしい」


「来年か再来年には、実現できるでしょう」


「おおっ。

 世界に羽ばたくときですね」


「あまり表に出すのはどうかと思うのですが……」


「同志を増やすには、裾野すそのを広げなければ」


「それはたしかに」


「しかし、あのような大型の施設を維持できるのでしょうか?」


「維持は五村に任せます」


「それだと、私たちの目的は……」


「年に一度か二度。

 私はそれで十分です」


「なるほど。

 しかし、施設はかなりの広さになります。

 ガラガラだと、逆に寂しい感じになりませんか?」


「対策はあります」


「どのような?」


「範囲を広げ、参加者を募るのです」


「範囲を……どういう意味でしょうか?」


「私の趣味以外の参加も認めるということです」


「そんなっ!」


「おやめください!

 それは危険です!」


「静かに。

 慌てる必要はありません。

 私たちが埋もれると?

 ちると?

 ありえません」


「た、たしかに範囲を広げることで、私たちの存在を隠してくれますね」


「そうです。

 そして、確実に住人たちに浸透していくのです」


「素晴らしいっ!」


「しかし、範囲は広げると言われましても、どこまで広げるのですか?」


「無制限です」


「……………………本気ですか?」


「そのようなことをすると、汚らわしい不浄なものを近くに置くことになりますよ」


「ひぃっ!」


「同志よ。

 怯える必要はありません。

 それらすら私たちは、かてとするのです」


「糧に?」


「よい書き手や絵師を見つける機会になるでしょう」


「おおっ……さすがです」


「……すみません。

 そろそろ時間のようです」


「そうですか。

 では、本日の報告会はこれぐらいで。

 そうそう、当面はフェアリーフェアリの二階での活動は控えるように。

 村長に注意されました」


「あそこはわかっている者しか来ない、素晴らしい場所なのですが」


「村長を怒らせると、全面禁止の可能性があります」


「そうですね。

 当面は控えますが……

 ケーキを買いに行くのは?」


「活動をしなければ大丈夫です」


「よかった。

 娘によくお願いされるのです」


「移動販売もあるのですが、すぐに売り切れますからね」


「困ったものです」


 七人の女性が喋りながら解散して、少しした後。


 大勢の者が部屋に入ってきた。


「誰もいません!」


「逃したか!」


「ええい、周囲を探索!

 痕跡を見つけろ!」


「くっ!

 毎回、逃してしまう!

 誰かが情報を漏らしているのではないか?」


「我らのなかに禁書を崇拝する者はおらん!

 仲間を疑うな!」


「そ、そうだった。

 ここにいるのは禁書を敵視する者で構成されたチーム」


 実態は妻や恋人が禁書に毒された者たち。


「すまない。

 禁書撲滅のために、頑張ろう!」


「おう!

 ……あ、まずい!

 警備隊だ!

 逃げろ!」


 当然、捜査権など持ち合わせていないので、警備隊に見つかると捕まる。





●七人の王

王A 会議をしている王城の主。

王B 第二王子の派閥が内政担当。

王C 娘が九歳。

王D 竜が怖い。

王E 妻に捕縛された王。隣国を恐れる。

王F 王Eの妻の兄。

王G 部下の大臣が、王Eの隣国の侯爵の娘の夫。



●七人の腐人

女A ヴェルサ。

女B エルメ。メインで喋ってる。

女C ビー婆。

女D 広めたい派。

女E こそこそ派。

女F 存在するだけで感謝派。子持ち。

女G フェアリーフェアリで即売会をしたかった女性。



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― 新着の感想 ―
広めようって⋯コミケ?w
>うちの国の内政は第二王子の派閥でなんとかしておるのだ  排除したら国が潰れる 【征服王】(第九百十四話)の時もそうでしたが・・・人間の国も文官の人材不足で大変なようですね。 でも・・・【助けて】(…
竜に言わせりゃ「たかだか数年、どころか数日前の約定すら平気で破る人間と一緒にするな#」と言うところでしょうね。 まあ竜族の場合、あまりにもスパンが長すぎて、ナチュラルに忘れてる可能性も否定出来なさそう…
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