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プラーダ美術館の様子

登場人物紹介

プラーダ 古の悪魔族の女性。別名、美術品を収集する悪魔、金貨。

カティ  古の悪魔族の女性。別名、夢を閉じ込める悪魔、箱。

ルディオ 古の悪魔族の男性。別名、死を奏でる悪魔、音。

シャルネ 古の悪魔族の女性。別名、繋がりを断ち切る悪魔、文字。


オブジェ 古の悪魔族の祖。別名、絶望。

クリム  絶望の娘?



 五村の麓に建てたプラーダ美術館。


 その館内では、演奏する魔道具が静かで落ち着く音楽を奏でている。


 ……


 魔道具の近くでスタッフの一人、ルディオが見張るように立っているのは一種の名物みたいになっている。


 彼は音の出るものが好きだからな。


 それはいいのだが、ずっと立っている彼は仕事をしているのだろうか?


 まあ、サボっているならプラーダが注意するだろう。



 館内に設けられたコーナーの一つは、箱の展示となっている。


 そこには古今東西のあらゆる箱が置かれている。


 箱なんてと最初は思ったが、こうも多種多様だと見ていて楽しいコーナーだ。


 ここはスタッフの一人、カティが担当しているらしい。


 彼女は箱が好きだからな。


 適任だろう。


 え?


 ここに展示している物の大半が、カティの私物?


 へー。


 あ、でも、ここを倉庫代わりにしているわけじゃないよな?


 その側面もあるけど、賑やかしにはちょうどいい?


 まあ、そうか。


 なんだかんだ人の姿があるから、好評なのだろう。


 カティは、ときどき箱の販売を希望する客と話を弾ませている。


 箱を独占したいわけじゃないのか。


 ……マニアは同好の士を求めると。


 なるほど。



 シャルネは美術館の展示準備室で、スタッフたちに指示を出していた。


 彼女は文字の書かれたものが好きだったな。


 読まないけど。


 変わった趣味だと思ったが、彼女が一番働いているようにみえる。


 しかし、プラーダに言わせると彼女にも問題はあるらしい。


 なんでもスタッフたちからの報告は、なにかしらの物に書かせて提出させているのだそうだ。


 ……


 職権の乱用じゃないか?


 いいのか?


 記録が残るのはいいことだから見逃している?


 まあ、そうか。


 プラーダがいいなら、俺はなにも言わないよ。



 しかし、なんだかんだスタッフも増えたな。


 そりゃ少数では美術品の管理は難しいだろうけど……


 ぱっと見ただけで五十人はいる。


 休みの者や、ここにいない者もいるだろうから百人以上はいると予想できる。


 百五十人ぐらい?


 よく集められたな。


 貴族関係でくすぶっていたのをさらってきたと。


 ……


 誘拐じゃないよな?


 普通に募集したり、勧誘したんだよな?


 よかった。


 え?


 スタッフを募集したとき、窃盗団が内通者として潜り込ませようとした?


 大丈夫なのか?


 どうみても挙動がおかしかったから捕まえて、ルディオのピアノを少し聞かせたら全て自白したと。


 仲間のことも喋ったから、窃盗団もほぼ逮捕できたと。


 たしかルディオは音が出るものが好きだけど、自身で奏でるのは苦手だったな。


 そこまで凄まじいのか。


 興味は惹かれるが、聞くのは怖いなぁ。



 ところで、スタッフをみるに警備員らしき者もいるが……必要なのか?


 プラーダたちでどうとでもなるだろ?


 目に見える警備員がいるだけで、防犯になる?


 なるほど。


 まあ、そうだな。


 警備員がいるのに悪さはしにくいか。


 悪いことを考えている人は、入口に配置されたオブジェを見て引き返していると。


 うーん、制作者としては複雑な気分。


 もっとしっかり見てほしい。




 さて。


 俺がプラーダ美術館を訪れたのは、プラーダから要望書が届いたからだ。


 要望の内容は、増えたスタッフの宿舎や食堂の建設。


 敷地内なら自由にしていいと返事をしたのだが、敷地内は倉庫にするので敷地外に建ててほしいとのことだ。


 となると、現場の様子も見ずに許可は出せない。


 というわけで足を運んだ。



 とりあえず、プラーダ美術館の運営に関しては……かなり赤字。


 美術品の購入費、維持費が高いのもあるが、増えたスタッフの人件費もそれなりだ。


 ああ、わかっている。


 美術に関しては利益を重視しちゃ駄目だよな。


 住人の娯楽と文化保護。


 そう割り切って、五村から予算はしっかりと出す。


 この方針には、ヨウコも賛成しているからな。


 窃盗団逮捕の功績もあるし、村議会も予算を削ったりはしないだろう。



 さて、増えたスタッフの宿舎や食堂の建設。


 プラーダ美術館の周囲の土地は……


 まだ空いている。


 ただ、ヨウコや村議会がなにか予定しているかもしれないので、建てるなら急いで確保しないといけない。


 建築費の見積りは……プラーダがすでに用意していた。


 ちゃんと周囲の土地が使えない場合のプランB、プランCもあるのに感心する。


 わかった。


 俺からヨウコに話してみよう。


 大丈夫だと思うが、駄目な場合はすぐに連絡する。


 しかし、宿舎がない現状。


 スタッフはどこで寝泊りしているんだ?


 表向きは、家がある人はそこからの通いで、ない人は宿から通っていると。


 じゃあ、裏向きは?


 準備室の隅や倉庫で雑魚寝?


 ……


 宿舎の件、早く動けるようにするよ。


 わかっている。


 食堂も急ぐ。



 美術館の様子をみたので、そろそろ帰ろう。


 っと、その前にオブジェにお供えをしないと。


 今回は関係者入口を使ったから、オブジェの前を通らなかったのでうっかりしていた。


 クリムに頼まれたんだ。


 苦い物ばかり供えられて、嘆いているって。


 嘆いているだけならいいけど、切れると天変地異を呼び起こすからなにかしら甘い物を供えたほうがいいらしい。


 天変地異は冗談だろうと思いつつも、大樹の村で収穫したフルーツをいくつか供える。


 心なしか、オブジェが喜んだような気がするな。


 今度、フェアリーフェアリのケーキを持ってこよう。





プラーダ「苦い物ばかりで手を出さなかったのに、甘い物があるとなると……」

カティ 「甘い、苦い、苦い、甘い、苦いと……苦い物にも手がでますね」

ルディオ「まさに絶望」

シャルネ「そのあたりも楽しめるのはさすがだと思う」



ヨウコ 「あのあたりは、ヴェルサ殿が大型の展示場を作りたいと計画書を……まだ認可していないから、横にずらして認可しておこう」




今回、ちょっと短くてすみません。


少し宣伝。

異世界のんびり農家、書籍19巻、8月29日発売中。

異世界のんびり農家、コミックス15巻、9月9日発売予定。

異世界のんびり農家、スピンオフコミック「異世界のんびり農家の日常」6巻、9月9日発売予定。

異世界のんびり農家、アニメ二期、2026年放送予定!

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
ヴェルサが逆ピラミッドの展示場を作ろうとしている
アニメ二期おめでとうございます!欲を言えば今度は動物が描ける絵師キボンヌ。クロやザブトンは勿論、アイギスやオルとか重要キャラ多数いますし。あと、天使族はズボンで。どうせパンツは描けないんだしw
アニメ2期ですか、1期はワイバーン襲来など村長の強さが極まっていましたが 2期は新しい村作りや温泉回がメインになるのかな?
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