ゴム製品
サンドイッチ。
パンで具材を挟んだ料理だ。
シンプルゆえに、具材選びさえ間違わなければ失敗しにくい料理となる。
だからか、得意料理を聞くとサンドイッチと答える村の住人が多い。
まあ、仕方がない部分だ。
鬼人族メイドたちは、複雑な料理名を言っている。
懐かしいなぁ。
村にやってきた当初は……あ、はい。
昔の話は止めましょう。
鬼人族メイドたちは料理上手。
それでいい。
巨大な猪のローストを挟んだサンドイッチが、子供たちのなかで大評判だ。
やはりこのロースト、美味い。
単体で食べても、パンに挟んで食べても問題ない。
鬼人族メイドたちも絶賛していた。
今度、手順を教えてもらおう。
子供たちのなかで次点で評判なのが、フルーツを挟んだフルーツサンド。
ただ、こっちは挟むフルーツで派閥がわかれている。
イチゴ、キウイ、オレンジ、マンゴー、メロンが強いかな。
いろいろなフルーツを使ったフルーツミックスサンドが好きな子もいる。
うんうん、どれも美味しい。
競う必要はないと思うぞ。
だけど、フルーツサンドばかりじゃ駄目だ。
カツサンドとか、ハムサンドとかも食べてほしい。
いろいろあるんだから。
ゴムの木からゴムは採れる。
村が出来て最初のころにゴムの木を植えているので、これまででかなりの量が採取できている。
採取したゴムは加工して、馬車やワゴンのタイヤ等に使われている。
タイヤに使うにはゴムに混ぜ物をして硬くしないといけないのだけど、これまでは適当に混ぜたもので十分に硬くなったのであまり研究されていなかった。
最近になって、その研究がされたというか……研究気質な天使族が頑張った。
そして現れたゴム製品。
ゴム手袋、ゴム長靴は水仕事をする者から喜ばれ、ゴムを使った靴底は滑りにくいと評判。
また、ゴム製のパッキンは目立たないが、山エルフたちはにっこり。
そして、ゴムを使った衣類。
締め付けなくてもズレないので、着やすく、なにより苦しくない!
これは村の女性陣から大絶賛!
ザブトンたちも、驚きの新素材に大興奮。
ゴムを活用して衣服を改造したり、新しく作ったりした。
最後に、ゴムを利用したボール。
これまでもゴムでボールを作ったことはあるが、なかなかちょうどいい弾力と強度がでなかった。
よく砕けていたんだ。
だが、そこも解消された。
嬉しい。
子供たちの遊びの幅が広がる。
ちなみに、クロたちにこれまで投げていたボールは、木の芯に獣の皮を巻きつけて丸めたやつだ。
木を削ったボールとか、いろいろと試したんだけど、獣の皮を丸めたボールがもっとも噛みつきやすいと好評だった。
ゴムのボールは……使ってみたが、数回で噛み砕いてしまっていた。
クロたちの牙って、思ったより鋭いからなぁ。
直径が五十センチほどの巨大なボールを作った。
目的は、体の大きいミノタウロス族や巨人族が使えるようにだ。
俺たち用のボールだと、小さくて扱いにくいからな。
ミノタウロス族や巨人族の子供たちが喜んでいる。
最初にその巨大なボールを使ってやったのは、ドッジボール。
なかなかの迫力だった。
そして、いろいろなボール遊びが楽しまれ、行きついた先が……
バスケットボールだった。
ただ、ボールにゴムを使ったのでよく弾むが、野外だとバウンドが安定しない。
地面がでこぼこなうえに、体の大きいミノタウロス族や巨人族が動き回るからだ。
そこで、バスケットボール専用のコートを作った。
もちろん、バスケットコートの広さやゴールポストの高さは、ミノタウロス族や巨人族に合わせている。
床は森の木々を加工しての全面板張り。
板の下にはゴム素材を使った下地を採用しており、ボールがバウンドし過ぎないように調整して配置している。
ゴールポストは木製だけど、要所に金属を使って補強してある。
当初はこれで大丈夫だと思ったのだけど、ロストボールを追いかけるために周囲に壁が必要だと判明。
あと、雨対策で屋根がほしいと俺が思った。
結果、できあがったのはミノタウロス族や巨人族用のバスケットボール専用スタジアム。
そのスタジアム内で接戦を繰り広げる、ミノタウロス族第一チームと巨人族第三チーム。
両チーム、四メートル超えの選手を並べているので大迫力だ。
おっと、巨人族がボールをスティール。
二回ほどドリブルしてからゴールポスト方向にふわりとパス。
そのボールを空中で別の巨人族がキャッチし、ゴールリングに叩き込む。
アリウープだったかな。
ミノタウロス族も負けていない。
素早く相手コートまでボールを運び、そのままシュート……と思ったところで巨人族が二人かかりでブロックジャンプ。
それを見たところでシュートを中止し、空いている選手にパス。
パスを受けた選手は深い位置からの三ポイントシュートを綺麗に決める。
一進一退のいい試合だ。
ミノタウロス族や巨人族は、相撲が人気だと思っていたんだけどな。
全員が全員、そういったぶつかり合いの力比べが得意というわけではないらしい。
その点、バスケットボールはあまりぶつからない。
力比べがないわけではないが、どちらかと言えばボールの扱いやパス回しが重視される。
ぶつかり合いの力比べが苦手なミノタウロス族や巨人族に、バスケットボールはとても喜ばれた。
巨人族が空中で回転しながらディフェンスをかわし、ダンクを決めた。
対してミノタウロス族は、三ポイントシュートでやり返す。
バスケットボールは普通のシュートが二ポイントなので、三ポイントシュートを多用するミノタウロス族が有利そうだが、難しいから三ポイントなのだ。
ミノタウロス族の三ポイントシュートは……三回に一回は失敗している。
このままではと思ったところで、ミノタウロス族のチームに動きがあった。
三ポイントシュートをするぞとディフェンスを引き寄せたところで、ゴール下に入り込んだ選手へパス、そしてシュート。
綺麗に決まった。
しかし、巨人族は慌てない。
取り返すぞと、速いパス回しで一気に相手ゴールポストに向かう。
ミノタウロス族もしっかりディフェンスはしているのだが、巨人族チームの選手は個々のボール捌きが上手い。
フェイントで相手のディフェンスを避け、しっかりとシュート。
シュートが決まったのを確認し、急いで自陣のディフェンスに走って戻る。
巨人族は攻守の意識がしっかりしているようだ。
おっと、審判が試合終了の笛を吹いた。
砂時計の砂が落ち切ったようだ。
うーん、時間が明確にわかるようなものが必要だなぁ。
それと、ロスタイムで時間が延びることや、ファールなどで時間が止まることもない。
砂時計は止まらないからだ。
このあたりも調整できるようにしたい。
バスケットボールって、時間管理もゲームのうちだから。
一定のリズムを刻む物があればいいんだけど。
余談になるが、ミノタウロス族、巨人族は褒賞メダルの大半をバスケットボール関連の物につぎ込んだ。
バスケットボール専用スタジアムは大樹の村に建設したが、ミノタウロス族の二村にはゴム床の野外コートや、ハーフコートなどを。
巨人族のいる北のダンジョンでは、内部の広い空間にコートが作られ、洞窟の各地にゴールポストが設置されていたりする。
ボールもそれぞれ十個ほどずつ交換していた。
そういった物に交換できるほど生活に余裕ができた、ということだろう。
いいことだ。
時計。
ではなく、時間を計るもの。
難しく考える必要はなかった。
砂時計ではなく、水時計に変えるだけで解決した。
水時計の水位をわかりやすく大きくし、現在時間をわかりやすく。
さらに、時間を止めるときは水門を閉じ、時間を追加するときは規定のコップで何杯か追加という形で落ち着いた。
砂時計を水時計に変えることを思いついたのはグラッツだ。
さすがだなぁ。
そのグラッツは、ミノタウロス族のチームの監督みたいなポジションで頑張っている。
「ディフェンスは腰を落として!
腕は大きく広げる!
当たって止めるんじゃなくて、相手を自由に進ませないことを意識!」
熱心に指導しているのはかまわないが、あまりこっちに力を入れるとまた参謀次長が注意してくるんじゃないか?
大丈夫?
このバスケットボールを軍のレクリエーションとして採用したい?
かまわないが、それなりに金が……コートにこだわらなければ、ゴールポストとボール一つでなんとかなるか。
わかった。
代金さえもらえるなら、ボールは用意するよ。
それはそれとして、綺麗なサンドイッチだな。
ロナーナの手作りか。
いやいや、欲しいわけじゃないから隠さなくても。
ロナーナの得意料理が気になっただけだ。
ああ、村で話題になっていてな。




