秋の終わりの村の様子
アルフレートから手紙が届いた。
ルーの翻訳によると、無人島をもらったのでそこを仲間と一緒に開拓中らしい。
おお、それは楽しそうだな。
頑張るんだぞと返事しておく。
しかし、なにをどうしたら無人島をもらうことになったのだろうか?
そのあたりを詳しく書いてほしい。
ルーやフローラが、隔離されたに違いないとか不安なことを言ってくるから。
あと、店をやる話はどうなったんだろう?
ティゼルからは手紙が届かない。
学園に行っていたときはそれなりに手紙があったのは、アサとアースが書くようにと口うるさく言っていたからのようだ。
内容も添削が入っていたらしい。
そっかー。
アサとアースには苦労をかけていたようだ。
そして、ティゼルからアサとアースを離したのは駄目だったのではないだろうか?
ちょっと不安。
ウルザからは……
なんだろう。
連絡は来るんだけど、傭兵団の活動報告書みたいな感じになっている。
どこそこで誰と友だちになったとあるが、その友だちが個人名じゃなくて組織名だし。
アサとアースが部隊長として活躍しているので、褒めてあげてとあるのは……かわいいおねだりなのだろうか?
あと、俺のところに届く連絡よりも、ビーゼルやユーリ、魔王のところに届く連絡のほうが量が多い気がする。
気のせいだと思いたい。
冬の試射に向けて、ヨルが夜な夜な弾作りをしているそうだ。
ヨルと一緒に暮らしているクリムから、夜は寝るように言ってほしいと頼まれた。
クリムから言っても聞かないそうだ。
いや、一応は聞くらしいのだが、クリムが寝たあとに起きて弾を作っているらしい。
あまりに酷いと試射をしないぞと脅しておいた。
試射をするかどうかの最終判断はクリムに任せようかと思う。
パイロットスーツの回収と、羽魔水晶があるとされている採掘場跡に行って多目的人型機動重機の本体や関連部品を探すこと。
これらは必須ではないし、急ぐ必要もない。
パイロットスーツに関しては、ザブトンたちが冬眠するから。
春以降でかまわない。
そして、多目的人型機動重機は、現状で手がいっぱい。
山エルフたちは飛行船のこともあるしな。
探しに行けば絶対に見つけられるわけではないが、下手に見つけてしまうと大変だろう。
無理や無茶は言えない。
「言ってください!」
「サンプルは多いほうがありがたいです!」
「なんとでもしてみせますよ!」
山エルフたちはやる気だが、それゆえに周囲が注意しなければいけないと思う。
冬になるとスライムが凍るので、家のなかに入るように言っている。
しかし、基本的にスライムは自由。
素直に言うことを聞かない個体も多い。
なので、対策として保温石を持たせてみた。
……
駄目だ。
消化している。
がっくりとしたのだが、少し経過したあと、変な進化をしたスライムが現れた。
ホットスライム。
ほかのスライムに比べ、ほんのり温かい。
これなら凍らないか?
だが、凍ったスライムを助けるには温度が低い……おおっ、熱くなれるんだな。
凍ったスライムがいたら、助けてやってくれと頼んでおく。
保温石を持たせたスライムがホットスライムになった。
そのことから、羽魔水晶をスライムに持たせたらどうなるのだろう?
ちょっと実験してみた。
一抱えするぐらいの羽魔水晶を消化したスライムに、ちょっと変化があった。
ジャンプ力がほかのスライムに比べて高いのだ。
そして、落下速度が遅い。
フェザースライム。
ファンタジーな存在だが、活躍できる場がないか?
フワフワしているだけだもんな。
しかし、こういった変化には本人の意思が大事とルーが言っている。
たとえば酒スライム。
スライムに大量の酒を与えたからと、全てが酒スライムになるわけではない。
酒スライムになるというスライムの意思が重要となる。
なので、きっかけは俺だとしても、本人の意思でフェザースライムはフェザースライムになった。
……
まあ、だからと必ずしも役に立つわけではない。
自由に生きてくれたらいいと思う。
子供たちからは、妙に人気だし。
ヨウコを休ませる。
そのために俺が頑張る。
でも、俺一人でヨウコの代わりをするのは無理なので、手伝いが必要。
その手伝いとして、マルビットから能力はあるけど動いていない天使族数人が候補としてあげられていたのだが……
そのことが候補としてあげられていた天使族数人に露見し、抵抗されている。
抵抗と言っても言葉ではない。
行動でだ。
ちゃんとやることはやっていると。
彼女らは、大きい猪の肉塊を、朝からじっくりと時間をかけてローストしている。
……
なぜに?
いや、美味しそうだけれども。
もっとほかにやれる行動があるんじゃないだろうか?
あ、働くのは違うのね。
ギリギリ遊びの範囲でやれることを考えた結果が、このローストか。
そうだな。
火にかけて放置はできないし、ときどきひっくり返さないと焦げが酷くなる。
美味しいローストには、手間暇がかかる。
助かるぞ。
ああ、マルビットにちゃんとしていたと報告しよう。
ただ、その……量が足りないんだ。
うん、朝からいい匂いをさせたもんだから、クロの子供たちがずらっと勢ぞろいしちゃって。
アンたちも夕食の一品にできると期待している。
ローストするのは止めないから、もう二~三頭、頼む。
大丈夫だ。
狩ってくるのは俺がやるから。
追加分をいまからローストしたら、明日になる?
そうか。
クロの子供たちには明日まで待つように言っておこう。
夕食に出た猪のローストは、とても美味しかった。
天使族たちのこだわりを感じる一品だな。
子供たちが大喜びだったから、またやってほしい。
あ、追加の猪をいまもローストしている最中か。
えーっと、頑張ってもらいたい。