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海の魔獣退治


 六竜神国の代表であるギィーネルから手紙が届いた。


 つつがなく頑張っていますという報告と、妻であるメットーラのために村の収穫物を少しわけてほしいとのおねだりが、すごく丁寧な言葉で五重ぐらいにくるまれている。


 こういった内容ならメットーラが手紙を出せば早いと思うのだが、妻になった身としては夫以外の異性と連絡を取り合うのはよろしくないらしい。


 なるほど。


 しかし、これまで結構な数の手紙を既婚者からもらっていたと思うが?


 仕事なら問題ないそうだ。


 そっかー。



 なんにせよ、ギィーネルのところにも収穫物のおすそ分けはするように手配してある。


 ハクレンかラスティに輸送してもらう案もあったが、向こうが気をつかうだろうとゴロウン商会に任せた。


 一応、確認したら問題なく五村からは輸送されている。


 たしか、転移門の混雑減少のため、シャシャートの街から海路で六竜神国に輸送される。


 それゆえ、届くのが遅れているのだろう。


 気にはしつつも、しばらくは様子見だな。





 冬に備えつつも、ザブトンやザブトンの子供たちとまったりする。


 ザブトンとザブトンの子供たちの大半は、冬になると冬眠するからな。


 いまのうちにコミュニケーション。


 まあ、内容はほぼ俺の単独ファッションショーと、ウルザの心配だが……


 そうだな。


 ウルザのことが心配だな。


 わかっている。


 ウルザになにかあったら、任せておけ。


 なにもないのが一番だけどな。



 ザブトンたちと仲よくしていたからか、クロが甘えてきた。


 腹をでる。


 よしよし。


 頭、顎下あごした太腿ふともも……おお、太腿が引き締まっているな。


 さすがだ。


 お腹も以前に比べると、へこんでいるし。


 見てないところで、頑張っているんだな。


 俺が褒めると、クロがちょっと誇らし気だ。


 ただ、フラシアが不満そう?


 ははは、気にするな。


 フラシアは天使族の翼で満足そうにしているから。


 そうなんだ。


 天使族は動く天使族と、動かない天使族に分けられてな……


 マルビットやルィンシァが頭を悩ませている。


 そして、動かない天使族のところにフラシアが行くのを止められず、フラウや世話をしてくれているホリーが困っているらしい。


 いや、動かない天使族のところに行くのはかまわないのだが、そこでずっと翼を揉んでいるらしくてな。


 将来が心配なんだと。


 そうそう、ホリーといえばこの前、ビーゼルの屋敷に戻って大活躍だったらしい。


 ホリーが不在だったことによる緩みを一気に正したんだって。


 不正をしている者はいなかったみたいだけど、


 ホリーは厳しいからな。


 ビーゼルも生活を改めるように指導されたそうだ。


 俺も指導されないように注意しないとな。


 そんなふうにクロと会話しながら撫でていると、そろそろ交代とユキがクロを鼻先でつついた。


 クロは渋々と場所をユキに譲り、ユキがごろんと腹を俺に見せた。


 よしよし。


 俺はユキが好む場所を撫でた。





 六竜神国への海路での輸送が失敗していた。


 巨大な海の魔獣が出たそうだ。


 シャシャートの街から出航した船はその魔獣と遭遇し、慌てて引き返した。


 しばらくはどの船も出航を控えるらしい。


 それゆえゴロウン商会は海路での輸送を諦め、転移門を使って運ぶそうだ。


 すでに王都近くの要塞までは到着しているので、近日中に届けられる。


 そういった報告を、俺はミヨから聞いていた。


 本来ならゴロウン商会かヨウコから聞く内容だが、シャシャートの街からの救援要請を伝えるためにミヨが来た。


「こういった魔獣は、海の種族に任せるのですが……今回は手に負えないそうです」


 海の種族に被害が出たのか?


「はい。

 シャシャートの街の近くにいる海の種族が集まり、排除しようとしたのですが返り討ちにあいました」


 むう。


「海の種族は巨大な海の魔獣がいなくなるまで、隠れるとの連絡がありました」


 わかった。


 見舞金を出しておこう。


「少な目でかまいませんよ。

 大半は陸にあがって五村とかで遊んでますから」


 ……


 重大な事態ではないのか?


「海ではよくあることですので」


 そ、そうか。


「以前も似たようなことがあったのですが、その際はラスティさまが活躍したそうで」


 ラスティが?


「はい。

 私がシャシャートの街に赴任する前ですが、シャシャートの街に巨大な海の魔獣が近づき、ゴロウン商会のマイケルさまがちょうどいたラスティさまに討伐を依頼しまして」


 あー、山エルフのヤーたちが来る前後で、そういうことがあったあった。


「それで、今回もラスティさまにお願いできないかと、ご相談に来たのですが」


 わかった。


 ラスティに頼んでみよう。


 そう言う俺の視界に、「ここに頼れる者がいるではないか」とポーズを決めているギラルがいた。


 ひょっとして、行ってくれるのか?


「条件がある」


 じゃ、いいや。


 ラスティに頼む。


「待って待って待って!

 話を聞いて!」


 どうした?


 いや、言わなくてもわかる。


「実はグーロンデとちょっとあってな……」


 だよな。


 喧嘩したのか?


「喧嘩ではない。

 ちょっと意見の相違があっただけだ」


 そうか。


 それで、行ってくれる条件は?


「干し柿を融通してもらいたい」


 干し柿。


 秋の収穫で得た柿を干したものか?


 まだ十分に干せていないだろ?


「うむ。

 甘くなかった」


 甘くないという感想がでるということは……食べたのか?


「つい。

 いや、甘くはなかったのだがエグみが妙に癖になって。

 酒のアテとしてよかった」


 なるほど。


 エグいのが好みか。


 今度、ゴボウを渡そう。


「それは嬉しい」


 しかし、それぐらいでグーロンデは怒らんだろ?


「干している柿を食べ尽くしてしまったので……」


 あー……


「干し柿を手に入れるまで帰って来るな、とまで言われてしまい……」


 なんとかしようとしたけど、渋柿は大樹の村以外にはほとんどない。


 そのうえ、大樹の村の渋柿はラスティが独占して干し柿にしている状態。


 例外は、収穫時にラスティの干し柿作りを手伝って一部をわけてもらったもの。


 グーロンデのところにあったのはそれだ。


「頼む。

 このままでは来年まで家に帰れん」


 まあ、ラスティは毎年、大量に作っているから言えば分けてもらえるだろうけど……


「なんだ?」


 どっちみち、俺がラスティになにかを頼むのは一緒なんだよなぁって。


 巨大な海の魔獣を退治してくれと、干し柿を分けてくれだと、ラスティは魔獣退治に行く気がする。


「そう言わずに。

 この暗黒竜ギラルを助けると思って!」


 わかったわかった。


 干し柿を分けてもらうように、ラスティに頼んでおくよ。


「すまん。

 だが、海の魔獣は任せよ。

 今日にでもほふってくれる」


 早いほうがいいが、無理はするなよ。


 怪我をさせると、俺がグーロンデに叱られる。


「この暗黒竜ギラルが、そこらの海の魔獣に負けるものか。

 ……しかし、心配はありがとう。

 気をつける」


 ギラルはドラゴンの姿になって……あ、人の姿のまま転移門を使って移動するのね。


 ちょっとでも早く退治しようという意思……いや、グーロンデと少しでも早く仲直りしたいという意思を感じた。


 ギラルが戻って来る前に、ラスティに頼んでおくとしよう。


 ということで、ミヨはシャシャートの街に連絡をよろしく。


 ギラルが頑張ってくれるみたいだから。


 騒ぎにならないように。


 ミヨは承知しましたと慌ててギラルを追いかけた。





 翌日。


 ドラゴン姿のギラルが、氷漬けになった大きな肉をつかんで帰ってきた。


 無事に退治できたようだ。


 よかった。


 そして、肉の色や形状、味から……巨大な海の海獣はマグロだったのかな?


 美味しかった。





グーロンデ「甘い柿があるのに、なぜ干してある甘くない柿を食べ尽くすんですか!」

ギラル  「す、すまん」


ドワーフ 「エグみが酒のアテ……なるほど」

ギラル  「わかってくれる?」

ドワーフ 「……少しだけわかるが、渋柿はキツいだろ? 口にできんぞ」

ギラル  「いやいや、いけるいける」

グーロンデ「……」

ギラル  「渋柿は食べてはいけない。うん、みんなにもそう伝える」


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― 新着の感想 ―
奥さんがいるところが自宅になってる 今更の話か
柿を手に入れるまで帰ってくるな!と家を叩き出される暗黒竜w涙が出るほど笑った 立場弱いなおいw
ささがきゴボウを甘辛く味付けした片栗粉で纏めて揚げた物は御飯にもお酒にも合いますよ
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