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手紙

登場人物紹介

ヒイチロウ  ハクレンの息子。十歳ぐらい。

フラシア   フラウの娘。九歳ぐらい。

セッテ    セナの娘。八歳ぐらい。

ラナノーン  ラスティの娘。八歳ぐらい。


 俺に魔力はあるだろうか?


 あるらしい。


 魔力量は多いだろうか?


 少ないらしい。


 ならば、俺はパイロットスーツなしでも多目的人型機動重機アーティ・ホースを動かせるのではないか。


 ジークフリートは動かなかったけど、あれはべつの原因で動かなかっただけとか。


 希望を持って、ユーリが動かしていた四号機、ラーロックに乗ってみた。


 乗り込み口(ハッチ)を閉め、レバーを握る。


 操作方法はユーリに教えてもらった。


 まっすぐ進ませるだけならできるはず。


 では。


 動けぇぇぇぇぇぇっ!



 動かなかった。


 なぐさめの言葉はいらない。


 俺には農業がある。


 忘れてはいけない。


 俺は農業従事者。


 ロボットなど不要!


 不要ったら不要!


 ロボットが行う農業にはちょっと興味があるけど。


 まあ、あのサイズだから畑仕事をさせるより、大型土木工事のほうが似合うんだろうけど。


 とりあえず、俺はクロとユキ、それとクロの子供たちと一緒に駆けだした。


 涙は流していない。


 あ、クロの子供たちよ。


 速すぎる!


 俺を置いて行くな!


 クロとユキを見習え!


 ちゃんと俺の横を走っているだろう!


 駄目だ。


 テンションが上がって聞いてくれない。


 落ち着くまでは……ゆっくり歩いて追いかけよう。




 ヒイチロウのブローチ作りが一段落した。


 現状のヒイチロウの技術では、このあたりが限界ということらしいが……


 ヒイチロウが並べたブローチをみると、なかなかの細工物。


 ほんとうにヒイチロウが作ったのかとガットを見るが、ガットは強く頷いていた。


 ううむ。


 ヒイチロウには、こういった仕事に天性の才があるのかもしれない。


 親の贔屓目ひいきめかもしれないが。


 ヒイチロウが並べたブローチは二十個ほどあったが、その一つをまずはグラルに。


 次はハクレン、その次にライメイレンと渡していく。


 え?


 俺にも?


 ありがとう。


 ドースやギラル、グーロンデ、ラスティにも渡している。


 大変だったろう。


 妹になるフラシア、セッテ、ラナノーンたちにも?


 こっちはチェーンを付けたブローチというかペンダントを渡すのか。


 偉いぞ。


 頑張ったな。


 さらに下の子たちにも……


 兄弟姉妹が多くてすまない。


 もらったブローチは大事にするよ。


 ただ、普段使いをすると壊してしまうかもしれないから、普段は飾っておいて……大事な式典のときに使わせてもらおう。


 それでいいか?


 すまないな。


 それで、えーっと、グラル、ハクレン、ライメイレンはなにをやっているんだ?


 ブローチに向かって念を送っているようだが?


 壊れないように加護を与えていると。


 加護を与えすぎると壊れるから集中させて?


 わ、わかった。


 心の余裕があるときに、俺のブローチにも頼む。




 ため池のほとりに行くと、ポンドタートルたちがやってきたので、持ってきたキャベツを渡す。


 ボリボリと勢いよく食べてくれる。


 キャベツ一玉を二口だな。


 ポンドタートル用にと育てたやつだ。


 気にせずにどんどん食べてくれ。


 五村に行った若いのは、頑張っているぞ。


 レースをする白鳥たちも池が綺麗だと喜んでいた。


 みすぎると魚が取りにくくなるが、レースをする白鳥たちは飼育員が餌を与えているから問題ない。


 ため池の水が綺麗なのも、ポンドタートルたちのお陰だ。


 ん?


 ため池の水温が少し高い?


 氷の魔物に頼んで、氷を落としてほしいと。


 かまわないが、そういったことはこれまでポンドタートルたちが勝手にやってなかったか?


 そういった仕事は任せてほしいと、氷の魔物に頼まれたと。


 氷の魔物、頑張ってるなぁ。


 いつまでも、いてくれてかまわないんだぞ。




 アルフレートから手紙が届いた。


 愚劣ぐれつとか蒙昧もうまいなどの単語が乱舞し、荒ぶっているのはわかるが、内容がわからなかったのでルーに読んでもらった。


「えーっと、見学に行った軍の訓練での食事に不満があるみたい。

 あまりにも食事を疎かにしている。

 食事の大切さを理解しない者が多くいて、とても嘆かわしい。

 食事に差をつけた軍で模擬戦をさせてわからせた。

 ……みたいな内容ね」


 なるほど。


「食事が疎かなのは、食料不足もあるけど食材の種類の少なさが原因と考え、畑を作りたい。

 安全な領地とそこを守る軍を用意するから、あなたに見てほしいって」


 そういったことも書いてあったのか。


 どこだ?


「ここ。

 ほら、不浄ふじょうの大地、神の降臨を願って祭壇を作る、って書いてあるでしょ」


 ……


 ルーを疑うわけではないが、近くを通ったフローラにも読んでもらった。


 同じことを言った。


 なるほど。


 息子の手紙なのだから、もう少し読めるように頑張ろう。




 ウルザからも手紙が届いた。


 基本、元気にやってます的な内容。


 ユーリが言ってた盗賊退治に関しては……


 これか?


 ユーリの仕事をちょっと頑張って手伝った、って部分。


 あとは……大勢の友だちができましたと。


 ユーリの話を聞いていなかったら普通に喜んでいたが、これって盗賊たちを従えたってことだよな?


 大丈夫なのか?


 養っていけるのか?


 千人って、そこらの村より大きい数だぞ。


 ……手伝いで稼いでいるって書いてあるな。


 手伝いってなんだ?


 まさか戦場での手伝いか?


 それって傭兵をやっているって言わないか?


 まさか団長とか呼ばれてないよな?


 最終的には定住できる土地をみつけて、そこで農作業をさせたいと……


 将来の絵があるのは褒めよう。


 支援は惜しまない。


 だが、心配だ。


 そしてこの手紙、ハクレンとかザブトンに見せて大丈夫かな。


 連絡がないのも心配するだろうし……


 悩む。




 魔王国の王都にいるトラインから手紙が届いた。


 トラインに関しては、学園の転移門を使えばすぐに戻ってこれるので、それほど心配はしていない。


 手紙の内容は……


 平穏。


 とても平穏で、困惑するぐらいだけど勉強ははかどっている。


 王都にいるゴール、シール、ブロンによくしてもらっていると。


 なるほど。


 転移門があるのだから不定期でもかまわないから村に戻って、母親アンに顔を見せてやってほしいと返事を書いておいた。


 なんだかんだアンもトラインを心配しているからな。




 ティゼルからの手紙は届かない。


 まあ、遠い場所に行ってるからな。


 届くのが遅れるのは仕方がない。


 アルフレートの手紙は始祖さんが転移魔法で運んでくれたわけだし。


 ……


 郵便のシステムは……たしか、同じ内容の手紙を複数のルートで送るんだよな。


 基本、商隊か冒険者。


 それでも確実に届くわけではない。


 転移門が繋がっている場所は問題ないとしても、道中が危険だからな。


 どうしても届けたい場合は、信用できる者に頼むしかないと。


 速度を考えると……飛行船で交易がスタートしたら、郵便も兼ねてしまうか。


 いや、郵便を専門にやる飛行船のほうがいいか?


 そっちのほうが信用を得やすい。


 郵便は信用が命だからな。


 複数ルートの一つとしてなら、商隊や冒険者の仕事を取ってしまうこともないだろう。


 悪くない。


 飛行船郵便。


 検討しよう。


 ただ、やれても魔王国と六竜神国、あとは正統ガーレット王国ぐらいなんだよな。


 うーん、ティゼルからの手紙を早く受け取る方法はないものか。






ティア「手紙を出していない可能性があるのでは?」

村長 「……」

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― 新着の感想 ―
アメリカの郵便飛行みたいなもんですね~エアメールの元祖 当時の飛行機はスーパーチャージャー無しとか有っても能力が低いので軍用機とは違いロッキー山脈越えも危険だったとか。
ウルザ見てると蒼天航路の曹操と爆裂団連想しちゃう
だってヒラクは神槍・・・げふん、万能農具が体内にあるから・・・超魔力の塊みたいなもんじゃない?
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