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パイロットスーツとクラカッセ


 ベルとヨルが持ち帰った多目的人型機動重機アーティ・ホースの関連部品。


 その大半が整備用の道具、交換パーツで、武装らしきものはなかった。


 採掘場の近くにあったから当然か。


 掘削に使うであろうドリルや岩などを砕くリッパー、輸送に使うであろう大型の背負い箱などはあった。


 有効に使えればと思う。


 武装はなくても、山エルフたちにとっては技術の山。


 調査を続けてもらっている。



 そうそう四肢が外されていた一号機ことジークフリート。


 四肢が戻され、人の姿に戻った。


 ちゃんと戻ってよかった。


 分解だけして戻せないという可能性もあったからな。


 記録を取っているから大丈夫と思っても、部品をハメるのに専用の道具が必要だったりする場合もあるから。


 いくつか戻せなかった部品があったりはしないよな?


 ……


 なぜ目を合わせてくれない?


 そして、そっちの箱の中身はなんだ?


 隠してないで見せなさい。


 ……


 なにに使うかよくわからない形状のパーツがいくつも入ってる!


 これ、大事なやつじゃないのか?


 大丈夫?


 ジークフリートはこのまま動かすわけじゃない?


 また分解して組み立てる?


 ……


 も、戻せない部品が増えないことを願う。





 パイロットスーツ。


 魔力を抑える機能のある体にピッタリなインナーと、その上から羽織はおる防護重視のアウターの二重構造。


 男性用なので俺にと言われているが、まだ着ていない。


 理由はヨルが着たから。


 このパイロットスーツ、実は全裸で着るタイプ。


 さらに股間部に排泄を処理する装置がある。


 使ってないし洗浄もしたと言われても、それを着るのには抵抗がある。


 いやいや、子供じゃないんだからそんなことを恥ずかしがらずともと言われても、顔見知りの異性が全裸で着たピッチリスーツを俺も全裸で着ろと?


 恥ずかしいよりも前に、ヨルに悪いという感情が前にくる。


 なので着ていない。


 そのパイロットスーツの魔力を抑える部分はルーとティアが、排泄を処理する装置は山エルフたちが解析中。


 パイロットスーツの材質も調査しないといけないのだが、とりあえずザブトンの子供たちがいくつかサンプルを作ってくれた。


 ありがとう。


 でも、着ないぞ。


 うん、無理だ。


 だって、排泄を処理する装置が取り付けられていないから、股間部やお尻が丸出しだもん。


 さすがにな。





 村に五機ある多目的人型機動重機。


 一号機はジークフリート。


 二号機以降の名をどうするかという話になった。


 べつに名付けなくてもと思うのだが、ヨルやユーリは付けたいらしい。


 まあ、かまわないんじゃないかな。


 変な名じゃなかったら。


 自由に名付けていいと思うぞ。


 俺も考えろ?


 俺にネーミングセンスを期待するのは無謀だと思うが。


 なにか物語とかから登場人物の名を持ってくればいい?


 それじゃあ、えーっと……


 モモタロウ、キンタロウ、ウラシマタロウ、ハナサカ……とか?


 ああ、わかった。


 この調子だな。


 複数の案が出され、ヨルとユーリの話し合いは続いた。


 古典が好きな文官娘も参加し、かなり時間をかけて名が考えられた。


 そして決定。



 二号機、ベンゼ。


 三号機、ポカ。


 四号機、ラーロック。


 五号機、ハナサカ。



 ハナサカは俺の案が通った感じだな。


 ベンゼ、ポカ、ラーロックは古典に出てくる登場人物。


 正式にはもっと長い名で、ベンゼマーカイル、ポカロンタス、エイラーロックタックらしいけど、略称でいくらしい。


 長いのは不便だそうだ。


 ……


 エイラーロックタックは、ラーロックじゃなくエイラーじゃないのかな?


 疑問をぶつけると、エイラーロックタックには兄にエイマーロックタック、従兄弟いとこにエイガータタックがいることを教えてもらった。


 なるほど。


 エイで被るのか。


 だから、ラーロックで兄や従兄弟はマーロックとかガータタックね。


 マーロックやガータタックは候補にならなかったのか?


 マーロックは助けられる弟を笑いながら見捨てるクズの役で、ガータタックは敵の強さをみせるためのませの役だから名として採用しにくいと。


 まあ、そういった理由があると名を使いにくいか。


「矢の的とかに付けられたりしますしね」


 軍の訓練で、兵士たちがそういったことをしているとユーリが教えてくれた。


「それより、村長の出したハナサカですが名の響きで決めましたが、どういった登場人物なのですか?」


「私も知りたいです」


 ヨルとユーリが聞いてくる。


 あー、どう説明したものか。


 おじいちゃんということは言わなくていいだろう。


 ハナサカが却下されると、また名を考えないといけなくなる。


 ハナサカにこだわりはないけど、最後まで残った俺の案。


 守りたい。


 そう思っていると、古典が好きな文官娘が本を取り出した。


 俺が子供たちに聞かせる物語として残したやつ。


 タイトルは花咲か爺さん。


 ……


 知っていたか!


 いや、大樹の村にいたら当然、知っているか!


 そして、どうするつもりだ!


「枯れ木に花を咲かす善人です」


 古典が好きな文官娘の説明に、ヨルとユーリは満足していた。


 よかった!





 昼過ぎ。


 プギャル伯爵の娘、クラカッセ。


 フラウの案内でユーリと一緒に村に来て、そのまま住みついた文官娘衆の初期のメンバーの一人。


 彼女は現在、厨房でカレーを作っていた。


 夏に収穫した野菜を大量に使った夏野菜カレーだ。


 ……


 大樹の村の畑は季節感を無視しているのだが、これを夏野菜カレーと言っていいのかな。


 ま、まあ、細かいことを気にしてはいけない。


 彼女は村に来た当初は、いろいろと文化の違いでやらかしたが、いまではすっかり大樹の村の一員。


 料理の腕だって上達した。


 昔は素材をそのまま出したりしていたのにな。


「今回のカレーはドライムさまが収穫したダイコンが入っているんですよ」


 それは美味しそうだ。


 ちなみにこのカレーは昼食や夕食のためではない。


 文官娘衆の夜食用だ。


「深夜に食べるカレーは格別ですから」


 理解はできるが、匂いで寝てる者からクレームが来ないか?


「そのために大鍋で作っています」


 おすそ分けで黙らせると。


「いえいえ。

 一緒に楽しんでいただくだけですよ」


 なるほど。


 しかし、文官娘衆が忙しくなるのは秋の収穫後だろ?


 夜食が必要なほど仕事が圧迫しているのか?


「それなら、ここで悠長に料理などしていませんよ」


 そうだよな。


「忙しくなる秋の終わりに向けて、事前の準備を少しずつ進めているだけです。

 ああ、ご心配は無用です。

 無茶はしていません。

 朝、起きるのは少し遅めにしてもらって、ほかの方々と生活時間をずらしているだけです」


 それはクラカッセだけか?


「あとはロザリンドとロアージュですね」


 グリッチ伯爵家の次女のロザリンドと、マモンロズ子爵家の次女のロアージュか。


 クラカッセとよく一緒にいる二人だな。


「仲よし三人組です」


 そういった友情は大事にするように。


「もちろんです。

 それで、どうされました?

 厨房でなにか作るのですか?」


 ああ、そうじゃない。


 クラカッセに、プギャル伯爵のことで少し相談がしたいんだ。


「父のことで?

 場を改めます?」


 いやいや、料理しながらでかまわない。


 かき混ぜるのを止めるわけにはいかないだろう。


「すみません。

 では、お言葉に甘えて」


 俺は料理を続けるクラカッセに、プギャル伯爵のことを相談した。


 具体的には、いろいろと世話になっているが、一方的にもらいすぎなのでなにか礼を考えていると。


「ですが、父は礼を不要と言っていると」


 ああ。


 礼をされては逆に迷惑とも言っているらしい。


「……変ですね。

 そういった行動の見返りを求めないと、資産は出ていく一方です」


 だよな。


「また、礼が不要な貴族と認識されると収入が減りますし、厚かましい下位貴族の統制が取れなくなります」


 厚かましい?


 あー、こっちも礼なしでやってくれとか言ってくるわけか。


「はい。

 なので行動には対価を求めるものなのですが、父は不要と……」


 クラカッセは手は動かしながら、少し考えて口を開いた。


「父は昔から、変な行動をすることがありました」


 変な?


「理屈に合わないと言えばいいでしょうか。

 たとえば左右の分かれ道。

 普段は常に左を選んで進む道を、急に右に進んだりするんです」


 まあ、気分を変えたいことはあるだろう。


「そうなのですが、父がそういった行動をしたときに限って、左の道で落石とか崩落ほうらくがあったりするんです」


 ……勘がいいのか?


「それにしては、確信を持っている感じなのですよね」


 なにかの能力とか?


「かもしれませんが、父からは聞いたことがありません。

 父の性格だと、能力を持っていたら自慢すると思うんですけどね」


 ふむ。


「ただ、父がそういった行動をしたときは、よい方向に物事が進むことが多いのです。

 私や私の姉や妹たちも何度か危機を避けたことがあります」


 家族を守るよい父親だ。


「はい。

 ですので今回、父が礼は不要というなら不要なのでしょう。

 父のことを思ってでしたら、父の願いを聞き届けていただけると……」


 聞き届けるって……わかったわかった。


 嫌がる相手に礼を押し付けたりはしないさ。


 飛行船の航路で配慮しようと考えていたが、それも控えよう。


「ありがとうございます」


 クラカッセはそう言って、カレーの入った大鍋を火から降ろした。


「完成です。

 村長も食べます?」


 いいのか?


 夜食用なんだろ?


「出来立ては、出来立てで美味しいですから」


 たしかにな。


 少し頂こう。


 出来立てのカレーは、美味しかった。






補足話

クラカッセ「親は伯爵です」

ロザリンド「親は伯爵です」

ロアージュ「親は子爵です」

クラカッセ「伯爵は子爵より偉いです」

ロザリンド「偉いです」

ロアージュ「ですが、三人組のリーダーは親が子爵の私!」

クラカッセ「私とロザリンドがリーダー争いで喧嘩するので」

ロザリンド「喧嘩を仲裁をしていたロアージュがリーダーになりました」

ロアージュ「望外の出世!」

クラカッセ「でも、仲よし三人組!」

ロザリンド「そんな私たちはアニメで出番をもらっております」

ロアージュ「よろしくお願いします」


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― 新着の感想 ―
あーっ、仲良し3人娘。 新しいTVシリーズでも登場して欲しいですね。 d(^_^o)❤
ロザリンドは漸くココで名前デビューなのね。ロアージュは逆夜這いデビュー、クラカッセはビリヤード中の会話で、割と早めのデビューだったけどね
2025/09/24 11:19 ロザリンド可愛い
アニメ…いまさら感想ですが個人的には時間稼ぎの小っ恥ずかし要素+こっそり散りばめられた悪意が不快で2話も見れなかった記憶が…正直記憶の消去とやり直しを要求したいですね(泣)
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