追加戦士
●文字修正 2025/06/14
キャタ〇ラ→履帯
ベルとヨルを代表とする調査隊。
……
十日過ぎても帰って来なかった。
だから万能船が飛び出した。
数日前から仕事にならなかったから、かまわない。
万能船の船長であるトウはいろいろと諦めて準備していたし。
しかし、なにがあったのだろうか?
ヨルだけならともかく、ベルがいるのに。
ベルなら、なにがあってもまずは戻って報告すると思う。
帰れない事情ができたのか?
万能船が行ったからな、あと三日待って連絡がなかったら、ハクレンかラスティに頼んで俺も現地に向かおう。
三日後。
遠方の空に飛行船と万能船が見えた。
戻ってきたようだ。
「どうするー」
ドラゴン姿のハクレンが聞いてくる。
出発しようとしたところだからな。
まあ、ここまで準備したから迎えに行くか。
俺はハクレンに乗って飛行船に向かった。
遠方からでもわかったけど、飛行船は多目的人型機動重機を吊り下げていた。
新しく見つけたのか。
ジークフリートとは形が違うな。
そして、万能船も多目的人型機動重機を吊り下げている。
こっちもまた形が違う。
この二つを見つけて、回収するのに時間がかかったのか?
ベルが「時間です。置いて帰りましょう」と言って、ヨルが「絶対に全部、持って帰ります」とか言い合っている姿が簡単に想像できる。
あ、飛行船の客室部の上からヨルがこっちに手を振っている。
こちらも手を振り返しておこう。
……
ん?
なんだ?
挨拶かと思ったら違うようだ。
こっちを呼んでいる?
ヨルのジェスチャーを読み解くと……
ハクレンを飛行船の下へ?
ヨルが飛び降りて、ハクレンに乗り移る?
危ないことを言うんじゃない。
却下だ。
そうジェスチャーを送ったら、今度はヨルが天使族を連れてきて……
天使族がヨルを運んで、ハクレンの近くにやってきた。
ハクレン、かまわないか?
「いいわよー」
ハクレンの許可を取ったので、ヨルがハクレンの背に乗る。
ハクレンは荷台を背負っていないので、落ちないようにな。
俺にしがみつくのはやめてくれ。
俺も落ちる。
それで、どうした?
わざわざこっちにまで来て。
「まだあと二つ、置きっぱなしなんです!
回収に向かってください!」
……
飛行船と万能船に吊り下げている二機以外にもあると。
「誰かに持っていかれる前に!」
わかったわかった。
でも、このまま行くわけにはいかないんだ。
ハクレンだって暇じゃない。
子供たちの勉強をみないといけないのに、俺が無理を言って飛行船の様子を見に行ってもらうところだったんだ。
「私はかまわないわよー」
ありがとう。
でも、あれを二つ抱えての移動は難しくないか?
俺は飛行船に吊り下げられている多目的人型機動重機を見る。
「あー、たしかに」
だろ。
そういうわけで、村に戻る。
「そんなっ!」
落ち着け。
取りに行かないとは言ってないんだから。
「む、むう」
俺とヨルは、ハクレンに乗って村に戻った。
多目的人型機動重機を取りに行く方法。
素直に、荷物を降ろした飛行船と万能船を向かわせるのがいいと思っていたら、
ハクレンの口利きで、ヒイチロウとグラルが行ってくれることになった。
もちろん、ライメイレンの監督付きだ。
ありがたいが、ヒイチロウはブローチ作りがあったんじゃないのか?
行き詰まっていて、ガットから息抜きをしたほうがいいと勧められたと。
なるほど。
そして、ライメイレンには俺とヨルが乗ると。
……
ヨルは案内に必要だからわかるが、俺は行く必要あるのか?
「息子の活躍を見るのは父親の務めです」
ライメイレンにそう言われた。
「私だけでドラゴンに乗れと?」
ヨルにそう言われた。
さすがのヨルも怖いらしい。
「ハクレンさんやラスティさんならともかく、ライメイレンさまですから……」
なるほど……と言ったらライメイレンに怒られるかな。
そんなに怖くないぞ。
孫が好きなおばあちゃんだ。
「その孫と一緒に行動するわけですから」
あー、うん。
わかった。
取りに行くだけだ。
さっと行って、さっと帰ってこよう。
さっと行って、さっと帰ってきた。
一日、かかっていない。
朝方に出発して、いまは夕方だ。
多目的人型機動重機にロープがかけられており、運びやすい状態だったのもあるが、さすがはドラゴンということだろう。
ありがとうヒイチロウ、グラル。
助かったよ。
ライメイレンもすまなかったな。
ライメイレンは久々にヒイチロウたちと出かけられたことを喜んでいた。
最近のヒイチロウはガットのところに入り浸っていたからな。
ブローチはすでに何個か完成しているのだが、ヒイチロウが納得していないみたいだ。
意外と職人気質なのかもしれない。
始めたばかりの者がいきなり最高の物を作ったりはできないと言いたいが、そう言ってヒイチロウのやる気を削ぐのはよろしくない。
ヒイチロウが満足するまで頑張ってもらおう。
ガットには迷惑をかける。
さて。
今回、飛行船と万能船で持ち帰った二機の多目的人型機動重機。
ヒイチロウとグラルが持ち帰った二機の多目的人型機動重機。
合計、四機の多目的人型機動重機が新たに大樹の村にやってきたわけだ。
ハイエルフたちが大慌てでハンガーを作っている。
関連部品も飛行船や万能船に満載していたらしく、見慣れない物が山のように積み上げられていた。
山エルフたちが大喜びだ。
おっと、飛行船に乗ってくれたザブトンの子供たち。
大変だったらしいな。
最初、飛行船に多目的人型機動重機を四機、吊り下げて持ち帰ろうとしたらしい。
だが、さすがに無理。
飛行できなかった。
諦めて二機にしたが、それでもあまりの重さに速度が出ず、予定が狂うと困っているところで一機を落下させてしまった。
ジークフリートを見つけた採掘場は、試掘のときにクロの子供たちやザブトンの子供たちで魔獣や魔物は排除していたので問題はなかったのだが、落下させた場所はなにもしていないところ。
魔獣や魔物が多くいて、天使族だけではどうしようもなく、ザブトンの子供たちが頑張ってくれたとの報告を受けている。
天使族を監督してくれたスアルロウも戦ったそうだ。
彼女にも礼を言わないとな。
あと、万能船にも。
万能船が迎えに行かなかったら、戻って来るのはまだまだ時間がかかっただろう。
飛び出したことは……言わないでおく。
でもって……
ドドドドッと響く重低音。
夕焼けを背景に村と森のあいだを疾走……でいいのかな?
足は動かしていないから、ホバー移動?
それとも履帯?
飛行船で持ち帰った多目的人型機動重機だ。
軽快に動いている。
誰が乗っているんだ?
最有力候補のヨルはライメイレンに乗ってヘロヘロになっており、村に戻った瞬間にダウンしている。
具体的には、グラルが持ち帰った多目的人型機動重機のコックピット内に潜り込んで熟睡中で、調査したい山エルフたちがどう排除しようか考えているところ。
となると……
ベルは関連部品のところにいる。
トウは万能船の近くだな。
誰だ?
山エルフの誰かか?
多目的人型機動重機が俺の視線に気づいたのか、こちらに向かってきた。
大迫力だ。
見た感じ武器らしい武器は持っていないけど、その巨体が迫って来るのはちょっと怖い。
ザブトンの子供たちが、万が一に備えて俺の前に並んだ。
それを見たからか、最初の予定か、多目的人型機動重機は俺から少し距離を置いた場所に停止。
身を低くして、コックピットの乗り込み口が開かれた。
そこから出てきたのは……
魔王の娘、ユーリだった。
ユーリ「最近、出番のなかったユーリです。これまで五村を拠点に頑張っていました」