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プラーダ美術館の新人


 五村とシャシャートの街で、飛行船の発着場の建設が着工した。


 え?


 早くない?


 土地を確保しないと困るから急いだ?


 そ、そうか。


 しかし、そこに発着させる飛行船がな。


 五村の飛行船建造ドックの計画が進行中?


 あれ、少し前に計画書を渡しただけだろ?


 すでに五村の議会は通って、動いていると。


 もうすぐ完成するから、建造の技術指導をする山エルフたちの派遣を用意してほしいと。


 ……


 世の中は、しっかりと動いているんだなぁ。




 五村のプラーダ美術館で、新スタッフと顔を合わせた。


 すらりと背の高い女性。


「カティです」


 長い黒髪をオールバックにした細身の男性。


「ルディオだ」


 少し挙動不審……いや、人見知りな少女。


「シャルネ……」


 美術員スタッフの制服を着たこの三人は、プラーダの友人らしい。


 なので三人とも古の悪魔族。


 確実に俺より年上。


 だけどまあ、そういった存在にも慣れた。


 しっかりと自己紹介をして挨拶をする。


「ええ、よろしくお願いします」


「長い付き合いになるだろうからね」


「……よろ……しく」


 うん、挨拶終了。


 そう思ったらプラーダが三人の後頭部をかなり強く殴っていた。


 どうした?


「少し不埒ふらちなことを考えていたので。

 大丈夫です。

 お気になさらずに」


 そうか?


「はい。

 この三人はここに縛りつけますので、大樹の村にはご迷惑をおかけしません。

 グッチさまたちにはそうお伝えください」


 わ、わかった。



 大樹の村に戻って、グッチは大樹の村に常にいるわけではないので、とりあえずブルガとスティファノに……スティファノはククルカンの相手をしていたので、手が空いているブルガに伝えた。


 ブルガはすごく嫌そうな顔をした。


「カティにルディオ、シャルネまで……」


 まずい連中なのか?


「まずくはありませんが……

 自分で言うのもなんですが、力のある悪魔族はくせが強いので」


 癖か。


 グッチやブルガ、スティファノにはあまり感じないけどな。


「ありがとうございます。

 とりあえず、プラーダが見張るなら問題は起こさないでしょう。

 万が一のときは、私やスティファノも出ます」


 そ、そうか。


 助かる。


 そういった事態がないのがいいが。


「そうですね。

 あー、あの三人はプラーダの同志ですので、それぞれに興味のあるものを渡しておけば大人しくなるかもしれません」


 興味のあるもの?


 そうか。


 プラーダは美術品だったな。


 三人は?


「カティは物を入れるものです。

 袋とか箱とかですね」


 なるほど。


「ただ、蓋がないと駄目です。

 なので花瓶やコップは興味がありません」


 酒樽とか封ができるものは?


「興味を持ちます。

 ただ、中身には一切の興味を持ちません。

 酒樽なら、空いた酒樽を渡せばいいかと」


 へ、へー。


「ルディオは音が出るものです。

 ピアノや笛、木琴もっきんなどの楽器はもちろんですが、歌や演奏の上手い人なんかにも興味を持ちます。

 ただ、本人の歌と演奏は聞かないほうがいいです。

 耳が壊れます」


 お、おう。


「なのに、歌いたがりで、聞いてもらいたがりだったりします」


 そ、それは、怖いな。


「ですが、ご安心を。

 洋菓子店フェアリーフェアリに設置した演奏する魔道具。

 あれを渡せば、ずっと聞いていると思います」


 さ、参考にさせてもらう。


「シャルネは文字の書かれたものです。

 本とか手紙ですね。

 二十二以上の文字を扱う言語で、二十二語以上の意味のあることが書かれていないと興味を持ちません。

 ですが、収集が目的で読んだりはしません。

 集めるだけです」


 ………………


「集めたものも、分類したりはしません。

 ポケットにクシャッと入れるだけです。

 なので使い終わったメモとか渡せば喜ばれます」


 そ、そうか。


「三人の興味を持つものの覚えかたとしては、別名が早いですね」


 別名?


 あ、プラーダが“美術品を収集する悪魔”とか呼ばれているやつか。


「はい。

 カティは“夢を閉じ込める悪魔”。

 ルディオは“死を奏でる悪魔”。

 シャルネは“繋がりを断ち切る悪魔”です」


 あー、な、なんとなくわかるが……逆に覚えにくい。


 というか、物騒な別名だな。


「プラーダなら抑え込めますので。

 あと、いまだとドラゴン族との契約があるので」


 そうだな。


「ですが油断は駄目ですよ。

 悪意なくトラブルを起こすことはありますので」


 わ、わかった。


 とりあえずアドバイスを聞いて、カティたち三人に空いた酒樽、演奏する魔道具、使い終わったメモの束を送っておいた。


 プラーダと協力して、美術館をよろしく頼む。



 後日。


 大樹の村にやってきたグッチにも伝えたが、似たような反応だった。


「連中が邪魔なら言ってください。

 一対一なら、なんとかなりますから」


 いやいや、なにもしてないから。


 排除する気はないぞ。


「わかりました。

 ですがプラーダめ。

 あの三人と繋がりがあったとは……」


 グッチとなにかあったのか?


「苦労させられたことが何度か……

 ところで村長」


 なんだ?


「世界の王に、なりたかったりします?」


 しないしない。


「……承知しました。

 ふふふ。

 これからも、よろしくお願いします」


 グッチは俺に一礼して、ダイコン料理と酒を楽しんでいるドライムのところに向かった。


 ……


 世界の王ってなんだ?


 言葉通りに受け取って否定したけど、なぜ急に?


 ……そういえばアルフレートからの手紙に書いてあったな。


 世界の王となり愚かな民を導き、変革をもたらすって。


 最初、その手紙を読んだときはアルフレートになにがあったと心配になったが……


「世界というのは、手の届く範囲ってこと。

 愚かな民というのは、話が通じない相手のことね。

 アルフレートに誰かを見下す悪意はないわよ。

 悪意があるときは、逆に優れた民とか表現するから」


 ルーが解説してくれて、アルフレートの手紙は「近くの者と話し合って、理解を深めていきたい」という内容だと判明した。


 ほっとした。


 学園に通っていたときの手紙はちゃんとしていたのにな。


 でもって、その手紙を参考に考えると、グッチの言ってた世界の王とは……


 世界は手の届く範囲……身近……になりたいですか?


 あ!


 三人と仲よくなりたいですか?


 そういうことか。


 って、しまった!


 あの返事だと、仲よくしないって感じになってしまう。


 誤解だ。


 あー、でも、どうしよう。


 グッチはその返事で喜んでいたしなぁ。


 あの三人と仲が悪いのかもしれない。


 ……


 あの三人はプラーダの友人らしいが、グッチとのつき合いのほうが長い。


 誤解はこのまま。


 様子をみよう。


 うん。


 グッチがあの三人に、俺が仲よくしないとか言ってたぞと言わない限り、問題にはならないだろうしな。


 グッチはそんなことを言うタイプではない。


 あの返事でなにかしらの問題が起きたら、素直に謝るということで。





前話の「深淵の令嬢」が感想欄で話題になっておりましたが、「深窓の令嬢」の誤字ではありません。

深窓~だと、記念写真の慎ましやかに座っているポーズしか思い浮かばなかったので、ちょっと変な深淵~にしました。

こっちなら変なポーズをしていても大丈夫と。

ただ、指摘され、たしかに意図が伝わりにくいかと思いましたので、どこかのタイミングでひっそりと説明文を追加か別の言葉に置き換えたいと思います。

ご迷惑をおかけしました。

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― 新着の感想 ―
ヴェルサ(ヴェルサーチ)とエルメ(エルメス)もいたか!
あー、カルティエ ディオール シャネルかぁ! グッチ、プラーダはそのまんまで、ベトンがヴィトンで、ブルガがブルガリで… スティファノはティファニーかしら?
最凶クセ強キャラが一気に三人も登場してしまいましたね(笑)
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