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出発と衣装


 単独運用の試験として、飛行船はジークフリートを見つけた採掘場跡に向かった。


 運行スタッフは天使族が十二人。


 なにかあったときのため、運行スタッフ経験のある山エルフが三人、同行。


 乗客は調査員としてベルとヨル。


 現地の案内役として試掘隊から数人。


 調査作業員として、四村から悪魔族と夢魔族が二十人ほど。


 護衛は天使族が十五人。


 それとザブトンの子供たち五十匹。


 今回のザブトンの子供たちは前回と違って前面には出ない。


 メインの護衛は天使族だから。


 天使族の手に負えない場合のみ、ザブトンの子供たちが手を貸すことになっている。


 ただ、試掘隊や作業員の護衛に関しては全力でやってほしいとお願いしているので、暇なわけではない。


 あと、料理人が必要なのだが鬼人族メイドは忙しく、料理ができる獣人族の女の子数人に同行をお願いした。


 大人数の料理を用意するのは大変だろうけど、よろしく頼む。


 このメンバーに加え、飛行船で働く天使族を監査する者として、天使族のスアルロウが同行する。


 スアルロウはスアルリウ、スアルコウの母親で、ティアの前に天使族最強を名乗っていた天使。


 天使族の監査役としては十分だろう。


 万が一のときの戦力にもなるし。



 今回は単独運用の試験なので、向こうでなにか発見しても十日で戻って来るようにお願いしている。


 それ以上長くなると、万能船が勝手に迎えに行くかもしれないから。


 なにごともなく、予定通りに戻ってきてほしい。


 そう思っていると、万能船の船長であるトウが駆け込んできた。


「村長、万能船がそわそわしだした!」


 ……飛行船が出発して一時間も経っていないんだが?


 十日も待ってられるのか?


 不安だ。





 焼き芋。


 季節的にはまだ早いけど、冬を待つとザブトンやザブトンの子供たちの大半が冬眠するからな。


 夏の畑で収穫したサツマイモを焼いていく。


 ザブトンの子供の何匹かが、喜びのダンスを見せてくれた。


 かわいいぞ。


 手が空いている村の住人が焼くのを手伝ってくれる。


 すまない。



 サツマイモが焼けた。


 村の住人たちの評判はいつも通り好評。


 ザブトンやザブトンの子供たちも、美味しそうにたくさん食べてくれる。


 ああ、おかわりもいいぞ。


 サツマイモはまだまだあるから、たくさん食べてくれ。


 どんどん焼いていこう。


 サツマイモは品種によって食感がホクホクなのとネットリしたのがあるけど、どちらも同じように消えていくな。


 まあ、どっちが美味しいとか競う必要はない。


 どちらも美味しい。


 それでいいじゃないか。


 ちなみに俺の好みはホクホクだが、ネットリも食べる。




 最近、ザブトンとザブトンの子供たちが集中してやっている仕事がある。


 アルフレートの衣装作りだ。


 アルフレートから頼まれたらしい。


 黒を基調とし、紫と赤を入れたシックな感じのスーツ。


 手や足、首回りに白いヒラヒラがあるけど、派手すぎない。


 上品な感じだ。


 マネキンに着せていても、スラっとした男性用だな。


 ……


 そのスーツを着たマネキンを見ながら、俺はルーに相談する。


 アルフレートは、なぜあんな長身を好むのかと。


 べつに現状でも低いとは思わないのだが、ひょっとしてコンプレックスなのだろうか?


「あー、うーん、そのー」


 ルーは言い淀んでいる。


 アルフレートが長身を好む理由を知っているようだ。


「別に長身を好んでいるわけじゃないのよ。

 必要なのは長い手足で……」


 ?


「実演するわ」


 ルーがアルフレートがしているような長身に変身する。


 手足も長く、スラっとしているな。


「美人でしょ?」


 美人だな。


「でもって……ここでだけだからね」


 ルーがポーズを決める。


 おおっ、深淵しんえんの令嬢みたいだ!


 さらにルーがポーズを変える。


 怪しい雰囲気の女幹部!


「かっこいい?」


 かっこいいぞ!


 ルーの違う一面を見た。


「で……」


 ルーが体を若返らせた。


 変身していないアルフレートぐらいの年齢だな。


 そして、さっきと同じようなポーズをする。


「どう?

 美人でかっこいい?」


 えーっと、どちらかと言えばかわいいだな。


 うん。


 やっぱり、かわいい。


 お遊戯をしている子供みたいで……あっ。


「そうなのよ。

 いまのアルフレートの姿でポーズを決めても、かわいいが強くて」


 な、なるほど。


 それで長身にと。


「ポーズも、手足が長いほうが決まるのよ。

 空間に余裕ができるから」


 また長身になったルーが、自分の顔の前に手を持ってくる。


「ほら、ひじと体が離れていないと、窮屈きゅうくつさが出ちゃうでしょ」


 たしかに。


 そういったことがあるから、アルフレートは長身を好むのか。


 いや、疑問解消だ。


 ありがとう。


「いえいえ」


 ルーがいつもの姿に戻る。


 しかし、よく知っていたな。


「……だ、誰もが通る道だから」


 ?


 新たな疑問が生まれたが、ルーは答えてくれなかった。



 疑問を横に置いておいて、俺はザブトンに頼まれていた面頬めんぼおを渡す。


 面頬は顔全体ではなく、目元から下を隠す面だ。


 素材の指定はなかったので、森の木を使った。


 彫り物で怒り口がデザインされており、そのデザインに紛れて呼吸用の目立たない小さい穴がいくつも開けられている。


 そういう要望だったけど、この衣装に面頬をつけると怖さが前に出ないか?


 ザブトンにそう聞いたら、大丈夫との返事。


 首から伸ばした布がマスクになって面頬を隠すらしい。


 隠す?


 面頬の意味は?


 ザブトンが答える前にルーが教えてくれた。


「本気モード」


 ……あー、面頬を出しているときは本気だぞと。


 なるほど。


 となると、衣装とは別に置かれている、やたらとえりの高い黒マントにも仕掛けがあったり?


 こっちはザブトンが説明してくれた。


 色が変化する?


 首元の石に魔力を込めると、メレオの透明になる液体を利用して……色が変化して模様が出ると。


 メレオの透明になる液体って、魔力で操作できるのか?


 ルーがザブトンの前に出て、ふふんと胸を張った。


「研究の成果よ」


 すごいな。


 いろいろと応用できる。


「でしょ」


 ああ。


 活用方法を考えていきたい。





よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
アルフレート「ルールーシーの息子が命じる、世界よ我に跪け!」
因みにキムタクやトム・クルーズや鬼籍に入ったショーン・コネリーとか身長の低い人は身体を大きく動かす癖が有ります。 松田優作みたいに手足が長いとご指摘の様に僅かな仕草でも簡単に決めポーズに成りますね。
透明化する体液で真っ先に浮かんだのはマジックミラー号(ミラーではない)だけど、キャンピングカーとか小屋の天井に上手く使えたら星見窓にでもなるんかな
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