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試掘終了

●前話 文字の修正をしました。

 光信号 → 発光信号


 試掘を終え、大樹の村に戻った。


 帰り道、ハウリン村に寄って試掘隊を帰す予定だったが、試掘隊は大樹の村まで同行。


 採掘した鉱石から、必要な部分を抽出ちゅうしゅつする仕事をやってくれるとのこと。


 ありがたい。


 ただ、簡単な作業ではないので少し時間はかかるらしい。


 採掘した鉱石も多いしな。


 試掘隊のメンバーは、ガットに誘われて大樹の村に何度か来たことがあるので慣れた場所。


 活動に問題はない。


 試掘隊の宿泊に関しては宿を提供する。


 試掘隊はガットのところで世話になるつもりだったようだが、さすがに人数が多いし、若い子(ナート)もいるからな。


 そういったところには気を使わないと駄目だぞ。


 俺もよく注意される。




 さて。


 俺は屋敷の会議室の議長席に座る。


 さっそくだが、試掘に関する各人の活躍の評価と反省をしていこう。


 最後に試掘の成果発表だ。



 今回の試掘は当初の四泊五日の予定を大幅に超え、十五泊十六日となった。


 食料に関しては問題は発生しなかった。


 鬼人族メイドたちは、絶対に延びると確信して多くの食料を飛行船に積み込んでくれたからだ。


 そして、クロの子供たちやザブトンの子供たちが魔獣や魔物を狩っていたので、足りなくなってもなんとかなっただろう。


 だが、予定外に対応してくれた鬼人族メイドたちには感謝だ。


 自主参加だからこの場にはいないけど、ありがとう。



 次にリアを代表とするハイエルフの五人。


 鬼人族メイドたちの手伝いを主任務としながら、試掘隊の活動の補助や現地での拠点作りに貢献してくれた。


 まさに縁の下の力持ち。


 彼女たちがいなければ、試掘は半分も進まなかったに違いない。


 この場にはいないけど、ありがとう。



 飛行船の運行を担当してくれた山エルフの九人。


 三交代制で常に飛行船を動かせるようにしてくれていたのは、助かった。


 また、安全かつ正確な運行は褒めるところしかない。


 なのに、こちらの都合で予定を変更してすまない。


 夜間航行で日程を稼いでくれて、とても助かった。


 それがなかったら、あと三日は戻るのが遅かった。


 この場にはいないけど、ありがとう。



 試掘隊。


 彼らの活躍なくして、今回の試掘は成功しなかっただろう。


 俺たちが持っていない知識で、いろいろと助けてくれた。


 とても感謝している。


 今回の試掘の成果をいくつか渡したいと提案したが、最初の約束通りの報酬でかまわないと固辞された。


 いまやってくれている鉱石からの抽出作業の報酬を、多く渡そうと思う。


 その抽出作業が楽しくて彼らはこの場にはいないので、あとで伝えよう。



 飛行船の護衛の天使族の十人。


 護衛は万全だった。


 助かった。


 なのに、飛行船と万能船のあいだの連絡などの任務外の仕事をさせてしまい、すまなかった。


 手旗信号とか、発光信号とか受信できる人が見てないと伝わらないんだもん。


 飛んで行ってもらうのが最速だった。


 この場にはいないけど、ありがとう。



 クロの子供たちやザブトンの子供たち。


 多数の魔獣や魔物と遭遇したのに、被害らしい被害がないのは彼らのお陰だ。


 ありがとう。


 ただ、問題もあった。


 そう、クロの子供が一頭、途中で迷子になってしまったことだな。


 あれにはあせった。


 そして、試掘を中断して全員で探した。


 半日ほどで発見できてよかった。


 迷子になったら目立つ場所で待機という指示を守ってくれてよかった。


 迷子になったクロの子供はかなり落ち込んでいたが、道中の慰めで立ち直っている。


「私は迷子になりました」と書かれたプレートを首にかけて笑えるぐらいに。


 クロの子供たちとザブトンの子供たちは、この場にいる。


 ありがとう。


 わかっているわかっている。


 クロの子供たちはあとでしっかり撫でてやるし、ザブトンの子供たちにはジャガイモパーティーだ。



 最後に万能船と飛行船。


 とても役に立った。


 予定を超えて採掘した大量の鉱物を持ち帰れたのは二隻のお陰だ。


 しっかり整備させてもらおう。


 万能船は専用のドックに入ったが、飛行船は競馬場に停泊している。


 飛行船には専用のドックが必要だな。


 今後の運行を考えて、どこに建てるか考えないと。



 ルーとティア?


 盛大に暴走した二人には、大きく反省してもらいたい。


 まあ、この場にいないんだけど。



 あと、言及するとしたら……


 俺の護衛のガルフ、ダガ、レギンレイヴ。


 彼らの活躍は、どうなんだろうか?


 俺が助けてほしいと言ったのに、逃げたのは忘れない。


 いやいや、魔獣や魔物の話じゃなく。


 船内での話。


 とくにガルフとダガ!


 なぜ! 俺の! そばに! いて! くれなかった!


 家庭の問題と言って無関心を貫いたな。


 レギンレイヴも早々に二等客室のほうに行って帰ってこなかったし!


 まあ……


 この問題は横に置いておいて、護衛は助かった。


 魔獣や魔物に襲われることはなかったが、安心感があった。


 採掘跡とか、なんだかんだで雰囲気が怖いからな。


 ありがとう。



 さて。


 試掘での評価と反省はこれぐらいにして、成果発表をしよう。


 調査をした場所から、鉱石をそれぞれ大きなたるで五樽から二十樽ほど。


 最終的には大きな樽に百樽ほどかな。


 採取できた。


 すごい量だ。


 しかし、抽出作業をしたら、使える鉱物はコップ一杯もあるかどうかが普通らしい。


 小さい樽一つ分もあれば大成果だそうだ。


 採掘というのは、なかなか大変な仕事だ。


 しかし、今回は普通ではない。


 うん、普通ではないんだ。


 まず、特大サイズの羽魔水晶が含まれているであろう鉱石をいくつも見つけている。


 だからコップ一杯どころではないのは確定だ。


 ああ、見つけたのは最後の目的地でだ。


 見た感じ、なにもない様子だったけど試掘隊が調べると採掘場の痕跡があった。


 あったんだけど……


 なんて言えばいいのかな。


 俺が目的としていた羽魔水晶を見つけたのは、その採掘場ではない。


 採掘場の近くに作られたゴミ捨て場にあった。


 そう、ゴミ捨て場。


 採掘場の近くに不自然な窪地くぼちがあったのが気になって掘ったら、ゴミ捨て場の跡とわかった。


 試掘隊と笑っていたら、そこに捨てられていたのがほぼ羽魔水晶を含む鉱石だと判明。


 あのときの気持ちは、どう表現したらいいのかな。


 捨てられていた量は……持ち帰れないぐらい。


 窪地の大きさから、小山ぐらいはあると思われる。


 なぜ捨てられていたのか?


 いや、ゴミ捨て場ではなく保管庫の代わりとして使っていたとか思いたかったが……


 試掘隊が推測するに、別の鉱物を目当てに採掘していて、目的外である羽魔水晶が含まれている鉱石は捨てられたのではないかと。


 価値が低い物が捨てられるのは、採掘場ではよくある話らしい。


 昔の人も、羽魔水晶の使い道に困ったのだろうか?


 浮遊ガスはすごく便利だと思うんだけどな。


 いや、昔は魔法が一般的で、飛行魔法で自在に飛べていたとしても。


 浮遊ガスを生成するのが面倒とか、浮遊ガスを留めるのが面倒とかの問題はあるかもしれないけど。


 捨てることないと思うんだ!


 簡単に確保できて、助かったけど!


 採掘場の痕跡のほうにも、いくらでも見つかると言われるぐらい羽魔水晶があった。


 露出していながら放置されているところも。


 飛行船に必要な浮遊ガスに困ることは当面ないと断言できるぐらいにあった。


 飛行船の新造も現実味を帯びた。


 冷静に考えれば試掘に行ったのは正解だった。


 成果は十分。


 大成功と評価できるだろう。


 となると、飛行船の運用方針や航路を決めないとな。


 あとは、鉱石からの抽出結果を待って、改めて採掘に行くかどうかを決めたい。


 そう結論を出したとき、会議室の扉がノックされた。


 誰かな?


「アンです。

 山エルフのみなさまが大騒ぎです。

 収拾がつきません。

 そろそろ、なんとかしてもらいたいのですが……」


 そう言われても。


 山エルフたちの騒動の原因は、わかっている。


 試掘で見つけたとある品だ。


 羽魔水晶が捨てられていたゴミ捨て場に、落ちていた。


 いや、一緒に捨てられていたかな?


 発見当時も、運行スタッフの山エルフたちは大興奮だった。


 ルーとティアは大騒ぎはしなかったけど、採掘した鉱石よりも興味をもっていた。


 ただ、その品は危険かもしれないので、持ち帰ったあとの警備をリアたちハイエルフに任せたのだが……


 山エルフたちには伝えなかったが?


「あれだけ派手に持ち帰れば、駆けつけると思いますが」


 そ、そうか……


 リアたちで抑えきれないほど、山エルフたちは大騒ぎなんだろうな。


 っと、ハイエルフの一人が走ってやってきた。


「村長、なにかを察したヨルさんがやって来ました。

 リアさまや山エルフたちと争ってます」


 ……ヨルの様子は?


「お酒を前にしたドワーフです。

 歴戦の戦士みたいなオーラをまとっていました」


 そ、そうか。


 リアがいるのに、争えているヨルはすごいな。


 もう一人、ハイエルフが走ってきた。


「リアさまが蹴散らされました。

 駄目です。

 ヨルさんを止められません」


 あー……


 わかった。


 現場に行こう。



 現場は、競馬場。


 飛行船の横。


 あまりに巨大で飛行船の内部に収容できず、吊り下げて持ち帰った品。


 その重量に飛行船の速度が出せず、村に帰るのが二日ほど遅くなった原因。


 俺の目の前にあるのは、十メートルほどの人型ゴーレム。


 いや、コックピットがあるからロボットと称したほうがいいのかな。


 ロボットはスタイリッシュな形ではなく、装甲車に重厚な手足を生やしたような感じのデザイン。


 このロボットに見覚えはなかったが、乗り込み口には見覚えがあった。


 ヨルのダイダロスだ。


 あれの乗り込み口と構造が似ている。


 たぶん、ヨルたちの時代のものなんだろう。


 その乗り込み口は現在、ぴったりと閉められている。


 あそこは手動で閉められるからな。


 だが、閉じ込められる危険性を考えると閉めるとは思えない。


 そしてヨルの姿がみえないことを考えると……


 俺は動けるハイエルフに聞いた。


「ヨルさんがコックピットに立てこもりました」


 乗り込んでも動かないんだろ?


 あれ?


「そうですけど……

 山エルフのみなさんが、なんだかんだといじっていましたから」


 その山エルフたちは、ヨルにやられて治療中。


 まあでも動かないだろう。


 動くなら、とっくに動いていると思う。


 だってヨルだもん。



 俺はアンにうながされ、ヨルを説得する。


 あー、ヨルよ。


 ロボットに興奮する気持ちはわかる。


 俺も男だ。


 憧れるよな。


 発見時、俺も乗り込んでみたし。


 発進とか真顔で言って、微動だにしなかったのは恥ずかしかった。


 ルーとティアは見なかったふりをしたぐらいだ。


 でも、ロボットだもんな。


 わかる。


 わかるぞー。


 でも、落ち着いてもらいたい。


 子供たちも見てるから。


 ほら、ヨルだけ乗ってズルいとか言われているぞー。


 無駄な抵抗はせず、出てくるんだ。



 ヨルのコックピットでの立てこもりは、四村から呼ばれたベルの本気ガチの怒鳴りが競馬場に響くまで続いた。





ヨル   「あ、あんなに怒鳴らなくても……」

ベル   「怒鳴らせないでください」


ヨル   「私が一番うまく操縦できるんです」

ベル   「やかましい」


リア   「ヨルさんに武人の幻影をみました……」

ハイエルフ「怒鳴ったベルさん、怖かった……」


ルー   「避難」

ティア  「避難」

山エルフA「ああっ、最大戦力が逃げた!」

山エルフB「ハクレンさまかラスティさまは?」

山エルフC「子供たちを守ってる」

山エルフD「ぬぐう……我々が最後の砦だ! 止めるぞ!」

山エルフE「おおっ! あれを分解するのは私たちだ!」


試掘隊A 「普段、行けない場所に行けて楽しかった」

村長   「そうなの?」

試掘隊B 「だいたいの場所に強い魔獣とか魔物とかいるから」

村長   「そ、そっか……えーっと、ロボットに興味は?

試掘隊A 「採掘に使われてたゴーレムみたいなもんでしょ」

試掘隊B 「古い採掘場には、ときどき落ちてますよ」

試掘隊C 「手足が揃ってるのは珍しいですけどねー」


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― 新着の感想 ―
所々ガンダムネタやアニメネタや映画ネタが仕込まれてて笑う。
村長の槍で脅せばすぐ出てきたんじゃぁ? メインカメラを破壊するぞ、とでも。
アルフレート「ロボット…コックピット…ウッ、頭が…」 ティゼル「大丈夫、お兄様?眼帯する?」 アルフレート「ぐわぁぁぁ!!」
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