表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/978

武闘会 戦士の部


 一般の部のベストバウトは、フラウと獣人族のセナとの戦いだろう。


 大抵の試合が一分以内に終わっていたのに、二人の戦いは五分ぐらい続けられた。


 フラウは片手剣に魔法を使い、セナはなんと無手。


 試合的には掴んだら投げるセナを、フラウが逃げつつハチマキを狙うという展開。


 最終的に、二人でもつれ合いながら舞台から落ちるという両者負けで勝負が終わった。


 両者負けなので褒賞メダルは渡せなかったが、良い試合をしたということで褒める言葉を掛けた。


 しかし、セナ。


 投げキャラだったのか……知らなかった。


 そして、観戦席のビーゼル、ユーリ、魔王の応援は熱かった。


「惜しかったな」


「あと少しでした」


「ビーゼルの娘もなかなかやるではないか。

 しかし、まだ若い獣人族なのに、あそこまで戦えるのか……うーむ」




 一般の部が終わると、戦士の部が始まる。


 こちらは勝ち抜き方式。


 試合で勝った者が舞台に残り、次の対戦相手と戦うスタイル。


 勝ち抜いた数がもっとも多い者が優勝となる。


 最初はトーナメント方式でやろうと思ったのだが、参加人数が多いので諦めた。


 一試合を一分前後と考え、選手の入れ換えがスムーズに行われるとしても、かなり時間を取られる。


 舞台が複数用意できるなら、それでも良かったのだが……この辺りは今後の課題だな。


 まあ、来年も武闘会だったらだけど。



 戦士の部は、ハイエルフ、鬼人族、リザードマン、ドワーフ、山エルフ、それにハウリン村の獣人族や南のダンジョンのラミアが参加する。


 勝ち抜き方式にしたのは正解だったかもしれないが、組み合わせ運が大きいようにも思える。


 この戦士の部辺りから、料理の手伝いをしていた始祖さんやドライムの奥さんも観戦席に座った。



 試合のルールは、ほぼ一般の部と同じ。


 ただ、頭のハチマキ以外に両手、両足にも布を装着。


 ラミアの場合は足の代わりに尻尾に装着し、リザードマンの場合は両足と尻尾に装着する。


 そして、このハチマキを含めた布が二箇所以上取られたら敗北となる。


 大きく一般の部と違うのは、負けた後の再チャレンジが可能なこと。


 治癒魔法を使うフローラが許可を出せば、また列に並べるのだ。


 そして、最低でも参加者が一巡した後、こちらの予定している時間まで試合を行う予定だ。



 審判はハクレンからラスティにチェンジ。


 司会進行は、グランマリアからフラウにチェンジ。


 グランマリアは、この後の騎士の部に出るからだ。


 フラウに試合のダメージが無くて良かった。


 いや、フローラの治癒魔法のお陰かな。


 ああ、ビーゼル、ユーリ、魔王、司会進行の応援は遠慮してもらえると助かる。




 試合は次々と行われる。


 敗者が舞台から移動させられたら、すぐに次の挑戦者が登場するからだ。


 ほとんどインターバルがなく連戦になるので、連続して勝ち抜ける者は少ない。


 勝った後、すぐに負ける者が大半だ。


 そんな中、頑張ったのがドワーフのドノバン、山エルフのヤー、ハウリン村のガルフ。


 そして南のダンジョンのラミア。


 戦士の部にはラミアが四人参加しているが、どれも強い。


 近距離は剣で攻撃し、遠距離になれば魔法。


 さらに接近戦になると、尻尾による巻きつき攻撃が効果的だ。


 巻きつけられると、ほとんどの者が抜け出せない。


 審判のラスティがそこで試合を止める。


 ナイス判断だと思う。


 今のところ、ラミアの巻きつき攻撃を耐えられたのはドワーフのドノバン。


 巻きつきの圧力に耐え、目の前にある尻尾の布を奪取し、その前に腕の布を落としていたので勝利となったのだ。


 他の者は、巻きつき攻撃を避けることを重視。


 そんな感じで、戦士の部ではラミア族がキーマンだった。


 そして一巡した後、山エルフのヤーとハウリン村のガルフの勝ち抜き数が共に四つで最高だった。


 山エルフのヤーは、誰が相手でも中距離を徹底して維持し、片手剣と魔法攻撃で勝ち進んだ。


 連勝が止まったのは、ハイエルフの一人が高速で接近戦に持ち込み、乱戦の末に場外に落ちてしまったからだ。


 ハウリン村のガルフは、ラミアとの対戦がなかった運の良さもあったが、それなりに強いと俺の横に居た鬼人族メイドが説明してくれた。


 力と速度で相手を翻弄しながら、相手の弱い部分を狙う戦法。


 今回の布を二箇所取ったら勝ちというルールも彼には有利に働いたらしい。


 ガルフを負かしたのはリザードマン。


 尻尾がある種族との戦いに、ガルフが慣れていなかったのが敗因らしい。


 何度かリザードマンたちと戦えば、そうそう負けないようになるらしい。


「それぐらいでなければ森の中を通って、この村にまで来れませんよ。

 まあ、今回はドラゴンを使っていましたが」


 鬼人族メイドはそう言っていた。


 なるほど。


 戦士の部の予定時間もあと少し。


 このままでは二人の優勝で決まりかな。


 そう思っていたら、参加者も空気を読んだのだろう。


 試合の辞退が相次ぎ、舞台の上にはヤーとガルフが立っていた。


 決着を付けようということなのだろう。


「お相手、お願いします」


「俺は勝つために来たんだ。

 恨むなよ」


 ラスティの開始の声で、熱戦が始まった。


 ヤーは普段の服装に手甲や足甲を付け、片手剣。


 魔法が使えるので、距離を取った戦いを行う。


 ガルフは前に村に来た時と同じような歴戦の戦士のような皮鎧と、片手剣。


 ガルフも魔法は使えるらしいが、ヤーには敵わないのだろう。


 接近戦を挑もうと積極的に前に出る。


 互いに得意な距離を取った方が勝ちということなのだろう。


 俺には凄腕同士の剣舞を見ている感じだった。


 どっちがどう有利かわからない。


 突如大きな音がしたと思ったら、ヤーの持つ片手剣が空中に舞っていた。


 ヤーが負けた?


 そう思った瞬間、先ほどまで片手剣を持っていたヤーの手がガルフの腕を掴み、投げていた。


 ガルフの身体が宙で三回ほど回転したが、即座に体勢を立て直し両足で着地。


 ノーダメージだ。


 だが、ガルフの立っている場所は舞台の外だった。


「決着!

 勝者、ヤー!」


 ラスティの宣言で、戦士の部の優勝者が決まった。



 一般の部と違い、戦士の部の優勝者には褒賞メダルを七枚渡す。


「ありがとうございます」


 さらに、ドワーフのドノバン、ラミアの四名を優秀選手として褒賞メダルを三枚ずつ渡した。


 ガルフも当然ながら優秀選手に選んだが、褒賞メダルに困っていたので相当分の酒を渡すことになった。


「一枚は記念に貰っておく。

 酒にするのは残りの二枚で」


 了承した。


 最後に、優勝者のヤーや優秀選手以外の者で、戦士の部で一勝でもした者に褒賞メダルを一枚ずつ渡す。


 これにて戦士の部は終了。


 こちらも大怪我した者がでなくて良かった。




 休憩を挟み、次は騎士の部である。


 が、その前に本格的な食事が始まる。


 一般の部が始まった頃から、食事はスタートしていた。


 料理を提供する場所を何箇所か用意し、欲しい物を取りに行くバイキングスタイル……というかお祭りの屋台のような感じかな?


 基本、無料で食べ放題。


 舞台から離れた場所に飲食スペースを用意したが人気は無く、大半が観客席に持ち込んで食べていた。


 酒も振舞われているが、武闘会に出る者が飲むのは推奨しないというか禁止。


 酒を飲めない人が居るので、夜まで本格的に飲まないように注意はしておいた。



 ドースたちに、自分で取りに行かせるのもなんだったので武闘会に出ない鬼人族メイドや文官娘衆にお世話をお願いしておいた。


 が、すぐに自分たちで取りに行くようになってしまった。


 料理の種類を多く用意し過ぎただろうか。


 いや、お祭りだ。


 賑やかな方が良い。



 俺も食事を楽しむ。


 ルーやティアは騎士の部に参加するので、すでに食事は終わらせて調整に入っている。


 頑張れ。


 俺はアルフレートやティゼル、そしてその面倒を見てくれている鬼人族メイドたちと共に、お祭りの雰囲気を楽しんだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
今回の武闘会でのガルフvsヤーは、コミカライズは原作通り、スピンオフでは内容が変更になってましたね。 なんでだろ?
2025/10/01 12:21 覇道の波動
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ