表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
938/978

試掘に出発

登場人物紹介

ティゼル   天使族。ティアの娘。長女。

オーロラ   天使族。ティアの娘。次女。


ローゼマリア 天使族。グランマリアの娘。

ララーデル  天使族。クーデルの娘。

トルマーネ  天使族。コローネの娘。


 飛行船の名が決まった。


 トロワローズ号。


 万能船が決めた。


 いい名だと思う。


 だけど、なぜトロワ(3)なのだろう?


 あ、気嚢が三つあるから。


 なるほど。


 ついでに万能船の名も決まった。


 シエルテーレ号だ。


 こっちはトウが決めた。


 トウに決めてほしいとの万能船の希望だ。


 最近はよく喧嘩していたが、互いに嫌っているわけじゃないからな。


 あと、唯一無二の船とはいえ「万能船、出発!」は「貨物船、出発!」と変わらない。


 もっと早く名を考えてやればよかった。


 反省。


 ん?


 名はシエルテーレ号だけど、いつも通りに万能船と呼んでかまわない?


 万能船の名も大事と。


 なるほど。


 ありがとう。


 甘えるとしよう。




 某日早朝。


 念入りな準備を終え、試掘に必要な道具や木材などを収納した飛行船と万能船は、メンバーを乗せてハウリン村に向けて出発した。


 先頭は飛行船トロワローズ号。


 その少し後ろに万能船のフォーメーション。


 昼前にハウリン村に到着し、採掘できる者を事前の約束通りに十人借りて、目的地に向けて改めて出発。


 借りたハウリン村の十人は、飛行船を珍しがっていたが……


 万能船のほうに乗っている。


 見慣れぬ飛行船より、見慣れた万能船と。


 ハウリン村との交易で、万能船を使っているからな。


 安心感が違うらしい。


 万能船が飛行船に遠慮しつつも、ちょっと誇らし気だ。


 万能船に乗っているトウは当然とうなずいている。


 居住性は飛行船のほうが上なんだけどな。


 言ったりはしない。



 そういえば、目的が試掘なのでガットも同行したがっていたのだけど、ヒイチロウのブローチ作りの手伝いがあるので今回は辞退した。


 ヒイチロウのブローチ作りは、ドラゴン族が注目しているからな。


 それを放って試掘に行くのかとの圧があったのだろう。


 すまない。


 帰ったら、なにかしら報いよう。


 そのヒイチロウから、ブローチの材料になりそうなものが試掘で見つかったらほしいとねだられている。


 いまある材料で作っているけど、珍しい素材があるなら使いたいそうだ。


 頑張りたい。




 飛行船での俺のポジションは船長だけど、船長席に座っても邪魔になるだけだ。


 なので、特別客室が定位置。


 ルーとティアが同室となるが……この特別客室、8人が寝泊りできるのだが、それとはべつに二つの個室がある。


 なぜだ?


「使用人とか護衛とか、主人と同じ部屋で寝ることができない人がいるからね」


 なるほど。


 同じフロアにある二つの一等客室は、ハウリン村から借りた十人に入ってもらうつもりだったのだけど、万能船のほうに乗っちゃったからな。


 レギンレイヴとハイエルフたちに使ってもらうことに。


 一等客室は一部屋で六人が寝泊りできる広さとベッドがあるので、一部屋でも大丈夫なんだけど余裕をもって。


 ガルフとダガは特別客室の個室を……と思ったのだけど、提案する前に二等客室のほうが落ち着くとさっさと行ってしまった。


 遠慮しなくてもいいのに。


 運行を担当してくれている山エルフと護衛の天使族、それと鬼人族メイドたちは、スタッフ用の部屋を使っている。


 二等客室は狭いけど、スタッフ用の部屋よりは広い気がするんだけどな。


 本人たちの希望なので、そのようになった。


 あとは……クロの子供たちやザブトンの子供たちが、いろいろなところに。




 のんびりした空の旅が続く。


 退屈というわけではないが、刺激が足りない。


 試験飛行や遊覧飛行でそうなると予想できていたので、楽器を持ち込んだハイエルフたちが楽しく演奏したり歌ったりして盛り上げてくれる。


 客船として運用するなら、楽団もいるといいかもしれない。


 おっと、ハイエルフ。


 落下とか、落ちるとかの歌詞がある歌は止めるように。


 変なことを想像しちゃうから。


 ドキドキ感はいらない。


 明るく楽しい感じの曲を頼む。



 鬼人族メイドたちが、紅茶などを用意してくれたので、それを楽しみながら空の景色をまったりと楽しむ。


 ……


 空を飛ぶ魔獣に何度か襲撃されたけど、万能船や天使族たちが追い払ってくれたので問題なし。


 倒す必要がないので無理をせず、怪我人もいない。


 だけど護衛している天使族たちに緊張感があるのは、この飛行船にレギンレイヴがいるからだろう。


 レギンレイヴは、いまさら口を出したりはしないと言っているんだけどな。


 まあ、口を出さないと言われても長老格に見られていると気は抜けないか。


 緊張感があるのはいいことだとティアは言っているが……ティアはレギンレイヴを気にしないのか?


「そう言われましても……レギンレイヴさまは、村長の護衛ですよね?」


 そうだな。


「村長の妻である私は、護衛対象に含まれます。

 気にするほうが迷惑でしょう」


 そういうものか。


「そういうものです」


 レギンレイヴからは、若い世代とは話が合わないのであまり会話はないらしい。


「つい、うるさいことを言ってしまうしな。

 煙たがられるのが年長者の務めとはいえ、自分から煙たがられにはいかない」


 なるほど。


 ティゼルやオーロラ、ローゼマリア、ララーデル、トルマーネとのほうが話が弾むらしい。


 ティゼルやオーロラはともかく、ローゼマリアたちはまだ三歳とか二歳なんだが……本人が話が弾むと言っているのだから話が弾んでいるのだろう。


 余計なことは言わない。




 いまさらな話なんだが、死の森には結界があるんじゃなかったっけ?


 前にドースやドライムが言っていた。


 しかし、万能船や飛行船はひっかからなかった。


 どうしてだろう?


 ルーに聞いた。


「ドラゴンは結界を気にせず行き来しているでしょ?」


 そうだな。


「ドラゴンの加護を受けた万能船や飛行船も同じよ」


 万能船や飛行船って、ドラゴンの加護を受けているの?


「知らなかったの?」


 聞いた覚えがない。


「飛行船をハクレンさんに頼んで運んでもらってたから、知ってるのかと思ってた」


 飛行船はそのときに。


 万能船はドースに紹介するまえに、ラスティから加護をもらっていたそうだ。


 知らなかった。


「まあ、ドラゴンの加護といっても結界の通行証みたいなものだし、わかりやすく光ったりしないから」


 そうだな。


 もっとわかりやすくしてくれないと。


 あ、待てよ。


 天使族やハーピー族も普通にやってきていたな。


 ワイバーンとかも。


 天使族やハーピー族、ワイバーンもドラゴンの加護を受けているのか?


 その質問にはティアが答えてくれた。


「ワイバーンは知りませんが、ドラゴンの加護を受けた天使族やハーピー族はいません」


 じゃあ?


「死の森の結界、実は上空はあまり関係がありませんので」


 そうなの?


「そうなのです。

 結界の目的が、死の森に生息する魔獣や魔物……たとえばインフェルノウルフやグラップラーベア、ブラッディバイパーなどですね。

 これらを外に出さないようにするためのものですから」


 へー。


「本来ならザブトンさんたち、デーモンスパイダーも外に出さないようにしているのですが、飛んで出て行くので……」


 たしかに一部のザブトンの子供たちは、飛んで森から出て行くな。


「それに結界と言っても、大半が特化型でして」


 特化型?


「対象を絞っているということです。

 それに、物理的なものではなく、精神的に影響するものがほとんどですから」


 嫌な感じがするので近づきたくない、みたいな感じかな。


「それって、結界の存在を知っていれば耐えることができちゃうんです。

 ドライムさんたちの前では言えませんが、死の森の結界にはそれなりに穴があるんですよ」


 たしかにドライムの前では言えないな。


叡智えいちを誇るドラゴン族が気づかないわけがないので、あえて穴を残している。

 といった可能性もありますけど」


 そうだな、そういうことにしておこう。


 しかし……


 クロたちを外に出さない結界か……


 俺は近くでくつろぐクロの子供たちを見る。


 連れ出しちゃってるけど、いいのかな?


 いや、なにも言われてないから大丈夫か。


 いまさらだしな。







万能船「シエルテーレ……すぐ忘れられると思うから万能船でいいです」

トウ 「そ、そんなことはないぞ!」



村長 「結界に詳しいな」

ティア「大樹の村で生活するようになって、ドラゴンと話す機会が多くありましたから」

村長 「……俺、それなりに話をしているんだけどな」



村長 「ガルフとダガはどこで寝る? 特別客室の部屋でいいか?」

ガルフ「いえいえ」

ダガ 「いえいえいえいえいえ」


ガルフ「誰がとは言わないけど、強い圧を感じた……」

ダガ 「うんうん。逃げるに限る」

レギン「私も逃げたいのだが……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
特別客室の個室2つ、S◯Xしないと出られない部屋(談合)かと
ティアって村長に対してこんなに他人行儀でしたっけ?
2025/06/07 19:19 ゆずかりん
もうこれ以上増やさなくていいです(^_^;)。<個人的な感想です
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ