二十年目の春
●テキスト修正(20241108)
参加→出席
●登場人物紹介
ドース 神代竜族。竜王。
ライメイレン 神代竜族。ドースの妻。
ギラル 神代竜族。暗黒竜。
グーロンデ 神代竜族。ギラルの妻。
ハクレン 神代竜族。ドースとライメイレンの娘。
ヒカル 神代竜族。ヒラクとハクレンの息子(次男)。双子(兄妹)の兄のほう。
マークスベルガーク 神代竜族。人間の国に縄張りを持つ竜。ギラルに憧れる。
スイレン 神代竜族。マークの妻。ハクレンの妹。
ヘルゼルナーク 神代竜族。マークとスイレンの娘。ヒカルに運命を感じている。
ドマイム 神代竜族。ハクレンの弟。
クォン 神代竜族。ドマイムの妻。
クォルン 神代竜族。クォンの弟。
セキレン 神代竜族。ドマイムの姉。ハクレンの妹。クォルンと恋愛中。
メットーラ 混代竜族。ウルザたちの世話係。
オージェス 混代竜族。王都で働いている。
ハイフリーグータ 混代竜族。王都で働いている。
キハトロイ 混代竜族。王都で働いている。
木陰に雪がまだ少し残っているが、春だ。
ニュニュダフネが春と言っているから間違いない。
そしてザブトンたちが起きてきた。
おはよう。
ふふふ、久しぶりだな。
冬場はザブトンやザブトンの子供たちの大半が冬眠するので、ちょっと寂しかった。
また賑やかになるな。
さて、さっそく【万能農具】を使って畑仕事。
メットーラの結婚式と披露宴があるので、急ぎ気味に。
でも丁寧に。
畑仕事をしていると、メットーラの結婚式と披露宴に出席するドラゴンたちがやってくる。
マークスベルガーク、スイレン、ドマイム、クォン、クォルン、セキレン……
いつもの面々と言えば、いつもの面々。
村の仕事を手伝ってくれる者はその場所に。
それ以外は屋敷の一室を宴会場にして押し込んでおいた。
大樹の村でやるメットーラの結婚式と披露宴には、ウルザたちも出席するので戻ってくる予定だ。
ゴール、シール、ブロンの三人は、残念ながら仕事で欠席。
王都でやる結婚式と披露宴にはなんとか出席すると調整している。
王都にいる混代竜族のオージェス、ハイフリーグータ、キハトロイの三人は、王都でやる結婚式と披露宴に出席予定。
大樹の村での結婚式、披露宴にも来たらどうだと言ったのだけど、とても忙しいと逃げられてしまった。
たぶん、会いたくない者がいるのだろう。
誰だろうかと考えながら日は過ぎていき……
結婚式当日。
転移門を使ってやってきた見知らぬ人たち……すべて混代竜族だな。
その混代竜族に連れられているオージェス、ハイフリーグータ、キハトロイの三人の姿があった。
三人は諦めた顔をしている。
えーっと、見知らぬ混代竜族たちは誰だろう?
以前、別次元からやってきた空飛ぶ大きなクジラを退治するときにやってきた混代竜族は……いないな。
新顔ばかりか。
俺が挨拶しようと近づく前に、ハクレンがやってきた。
オージェスたち三人をのぞいた混代竜族たちが一斉に背筋を伸ばした。
その様子は、厳しい監督の前にやってきた野球部員のようだ。
「ちぃーっす」
挨拶もそれっぽい。
おっと、オージェスたち三人はゆっくりとその場から離れようとしている。
混代竜族の数人がそれに気づいたが、ハクレンがいるので注意ができない。
オージェスたち三人は俺のところに逃げ込んできた。
来ないと聞いていたが?
転移門に慣れていないから案内するように言われたと。
なるほど。
ああ、わかっているわかっている。
嫌いなわけじゃないけど、苦手な相手っているものだ。
三人には、なんだかんだとウルザたちが世話になっている。
できることはしよう。
結婚式と披露宴での席は、調整しておく。
ここまできたら出席するけど、裏方として働く?
そっちのほうが気が楽?
わかった、そっちで調整しよう。
ん?
早めに仕事がほしい?
仕事を理由に、連れまわされるのを拒否するのね。
それじゃあ、とりあえず鬼人族メイドたちの指揮下に入ってもらえるかな。
俺に言われたと言えば大丈夫だ。
頼んだぞ。
それで、ウルザたちやメットーラは一緒じゃないのか?
……ティゼルが仕事で捕まって、ウルザやアルフレート、メットーラはそれに付き合って遅れていると。
結婚式なのだからメットーラだけでも先に来たらと思うのだが、ウルザたちの世話を頼んだのはこっちだからなぁ。
あとで謝っておこう。
ハクレンに呼ばれ、混代竜族の紹介がされた。
まず、メットーラの結婚相手であるギィーネル。
三十代ぐらいのやせ型の男性だな。
ただ姿勢はよく、威厳もある。
うーん、どこかの国のベテラン騎士と言われても納得しそうな男性だ。
俺はメットーラの親ではないが、職場の上司として……上司でもないか。
職場の関係者としてメットーラのことをよろしく頼むと言っておく。
ギィーネルは強く頷いてくれた。
結婚することに不満はないようだ。
よかった。
次に紹介されたのが混代竜族の男性、四人。
グルベル。
エイドン。
ザハーザハー。
ジュド。
ギィーネルの結婚を聞いて、心配して駆けつけた四人だ。
心配は杞憂だったけど、仲間思いなのだろう。
四人もベテラン騎士みたいな感じだな。
おっと、こちらも自己紹介。
……
なぜハクレンの夫と言ったら、小声で脅されたのですかとか聞くのかな?
「失礼ね。
私と戦って勝ったからに決まっているでしょ」
村に襲撃してきたから、撃退しただけだぞ。
仲よくなったのはそのあとでだ。
……四人よ。
俺のことを英雄と称えるのをやめてもらえるかな。
尊敬のまなざしを向けるんじゃない。
いや、たしかにハクレンは村に来てから、暴れてないけどな。
それは俺がどうこうしたのではなく、ハクレンが自主的に大人しくなっただけで……
うん、ライメイレンは泣いて喜んでた。
そっか。
昔のハクレンはそんなに……
ここで謝るとハクレンの機嫌が悪くなるので、目で謝っておく。
話題を変えよう。
この四人、それぞれ人間の国々に縄張りを持ち、各地で賢竜として尊敬を集めているらしい。
なかなか凄い者たちなのかと思ったら、同じように人間の国に縄張りを持つマークスベルガークやスイレン、ヘルゼルナークが暴れたときに事情を聞かれたり、なだめる仲介を頼まれるだけらしい。
そういえばマークスベルガークは悪竜、スイレンは魔竜、ヘルゼルナークは暴竜と、なかなか物騒な名で呼ばれているんだった。
その三人の尻ぬぐい役というか、会話が成り立つうえに温厚だから賢竜と呼ばれているだけと。
まあ、そう謙遜せずに。
三人のことで困ったことがあったら言ってほしい。
ああ、俺のほうからドースやライメイレンに言うから。
告げ口したと叱られる?
あの三人が、そんなことで怒ったりはしないと思うが……
俺はハクレンを見る。
「昔のスイレンなら怒るけど、いまは大丈夫よ。
結婚して落ち着いたから。
ヘルゼは怒るかもしれないけど、ヒカルを狙っているからこの村から離れないだろうし、村長の機嫌を損ねるようなことはしないわよ」
そ、そうか。
マークは?
「あれが暴れるのは理由があるときだけだから。
告げ口でどうこうはないわよ」
なるほど。
そういうことだから、遠慮なく言ってくれて大丈夫だぞ。
そして、結婚式と披露宴への出席。
ありがとう。
四人は鬼人族メイドたちに案内……されず、少し下がって控えた。
ああ、まだ紹介されていない者を待つのね。
早めに終わらせるよ。
その紹介されていない者は……
ギラルとグーロンデを前に、奇麗な角度で腰を曲げて頭を下げていた。
早めに終わらせるのは難しそうだ。
感想、いいね、ありがとうございます。
誤字脱字指摘、助かっています。
これからも、よろしくお願いします。




