表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
879/980

シルキーネの来訪


 まだ雪の残る冬。


 俺は村の見回りを終え、屋敷の門前に戻ってきた。


 ルーが出迎えてくれる。


 珍しいな。


 なにかあったのか?


 俺の質問に答えるように、ルーが俺の背後を指さした。


 そこにはリアたち六人のハイエルフがいた。


 さっきまでいなかったよな?


 そうか、透明になるマントか。


 六人に後をつけられたのに全然、気づかなかった。


「ふふ。

 クロさんやユキさんは、気づいていましたよ」


 そうリアが言うと、俺の左右にいたクロとユキが当然とばかりに誇らし気な顔をした。


 ふふふ、かわいいぞ。


 ん?


 木の上にあと二人いる?


 クロがそう言うと、木の上から透明になるマントを羽織ったハイエルフが二人、降りてきた。


 さすがクロだ。


 よしよし。


「それで、使ってみた感じはどうかしら?」


 ルーがリアたちに聞く。


「仲間の位置まで見失うのが問題ですね。

 あと、雪や泥の上だと足跡が残りますから、道を選ぶ必要があります」


 あー、そうなるか。


 周囲から姿が見えなくなるだけで、消えているわけじゃないからな。


「それと、建物の中だと隠れる効果が鈍くなるような気がします。

 いろいろな方に存在がバレました」


 それは透明になるマントがどうこうではなく、気づいた者が凄いだけじゃないか?


 あとは種族的な特性とか。


「そうかもしれませんが、人工物との相性は悪いように感じます。

 野外用と考えるのがいいかと」


 なるほど。


「あと、これはマント自体の質ですが、もう少し厚いほうが寒さを防げてありがたいです。

 夏用、冬用とあるといいかもしれません」


 リアの意見を聞き、ルーは改善案を考える。


 まあ、その前に透明になるマントを量産するかどうかの問題もあるけど。


「量産するにしても、数は村で使うぐらいにしておくわ。

 これは外部に出すには危ないからね」


「そうですね。

 暗殺者なんかに渡るとやっかいです」


 それはたしかに。


 取り扱いには注意してもらおう。


 いつの間にかなくなっていたとかが、一番困る。


 ……


 持ち出しそうな者として、ウルザやティゼルの顔が浮かんだのは秘密だ。




 フラウの母親であるシルキーネさんが村にやって来た。


 カメレオンみたいな魔物、メレオカーンの件だろう。


 来てくれたのは嬉しいが、予想以上に早かったな。


 フラウに話をしたのが昨日の晩で、フラウがビーゼルに伝えたのが今日の朝。


 現在は昼。


 領地経営で忙しいんじゃなかったのか?


「ビー君から、メレオのパートナーを探していると聞いたからね。

 なにをおいても駆けつけるわよ」


 ま、まあ、優先順位は人それぞれだが……


 フラウやビーゼルの話だと、シルキーネさんはメレオカーンを大事にしていて、フラウやビーゼルでもなかなか近づけないとか。


「大事な商品の供給源でもあるからね。

 ああ、メレオカーンはメレオでいいわよ。

 言いにくいでしょ?」


 ……たしかに。


「それで、村長のところのメレオは雄で間違いないのかな?」


 本人がそう言っていたから、間違いないと思うが。


 見にいくか?


 直接見たほうが、話が早いだろう。


「そうさせてもらおうかな。

 あと、同行者もいいかしら」


 シルキーネさんはビーゼルの転移魔法でやって来たが、そのとき一緒に来た女性が少し離れた場所で控えている。


「うちのメレオの飼育責任者よ」


 断る理由がないので、許可。


 ああ、でも湯冷めしないか?


 彼女はこの村に来た直後に倒れたけど、気合ですぐに復活。


 でも、変な汗をかいたとお風呂を所望し、さっきまで入っていたのだ。


 気にしなくて大丈夫と。


 わかった。


 万能船で移動することになった。


 ちなみに、ビーゼルの転移魔法では四村に行けない。


 四村には、転移魔法での侵入を防ぐ装置があるからだ。


 さすがは元は王族の別荘。


 そういった防犯装置があっても不思議ではない。


 まあ、その装置がまともに稼働したのはつい最近らしいけど。



 万能船での移動中。


 シルキーネさんの運営している商会のことを聞いた。


 大本はシルキーネさんが直接経営しているバブル商会。


 このバブル商会が、貴族向けのアフロディ美容品店、庶民向けのアポロ美容品店、輸出用窓口となるアテネス美容品店などを経営しているそうだ。


 シャシャートの街の馬車に広告を出していたアポロ美容品店は、庶民向けだったのか。


 まあ、考えてみれば宣伝するなら庶民向けか。


 貴族向けを宣伝しても、売り上げには繋がりにくいからな。


「そうね。

 貴族は自分だけが持っているというステータスを大事にするから、広く宣伝された品にはあまり興味を持たないわ。

 なのに、自分だけが持っていないというのも嫌がるから、面倒なのよね」


 苦労しているみたいだ。


 俺はそのあたり、マイケルさんに任せっぱなしだからなぁ。



 四村に到着すると、シルキーネさんと飼育担当の女性はまっさきにメレオのもとに。


「この無骨な見た目!

 いぼいぼのある皮膚!

 少し大きめの頭部!

 雄型生殖器!

 間違いなく雄!」


「ですねですね!」


 凄く喜んでいるようだ。


 それで、このメレオにパートナーがほしいという話なんだが……


「喜んで協力するわ」


 よかった。


「ただ、いくつか交渉したいことがあるのだけど」


 それは当然。


 生まれた子の所有権とかだな。


「それもあるけど、体液を利用した商品の販売に関しても」


 あー、うん、わかった。


 ただ、そういった商売が絡むなら俺だけでは判断できない。


 美容関連に手を出すかどうかも不明だしな。


 ここはルーに。


 いや、フラウのほうが交渉しやすいか?


 親子だしな。


 ……


 逆に交渉しにくいか。


 大樹の村に戻ってから、みんなと相談しよう。


 あわただしいけど、大樹の村に戻る。


 飼育担当の女性だけは残り、メレオの飼育状況を確認、指導してくれるそうだ。


 よろしくお願いします。




 大樹の村に戻り、シルキーネさんとの交渉をどうするか相談したら、俺を置いて女性陣たちで話が進み、天使族の長であるマルビットが担当することになった。


 つまり、全力で交渉するらしい。


 俺はなにも言わない。


 すべて、マルビットにお任せする。


 俺は最終確認に頷くだけの存在。


 シルキーネさんとの交渉が始まった。


「あとで騙されたと揉めるのは面倒だから、先に言っておくわね。

 うちが飼育しているメレオは十二頭。

 全部、雌よ」


 え?


「メレオの乱獲の話は知っているわよね。

 乱獲の動きに気づいて保護したのだけど、雄は一頭しか保護できなかったの。

 その一頭は保護した段階でかなりの高齢で、繁殖活動はできなかったわ」


 むう。


「その一頭も、三十年ほど前に老衰ろうすいで亡くなってしまっているわ」


 それはお気の毒に……で、いいのかな。


 老衰なら、大往生だいおうじょうだ。


 頑張ったと褒めるべきか。


「今回の話は、こちらにも利益のある話よ。

 だから、ある程度は譲歩するわ」


 それは助かる。


「ただ一点。

 どうしてもお願いしたいことがあるわ」


 なにかな?


「メレオの雌は、狭いけど縄張りを持つの。

 その縄張りで雌は雄を誘惑して、繁殖活動をするわ。

 ちなみにだけど、縄張りを作るのに数年はかかるの」


 ん?


 つまり?


「村長のところのメレオ、こっちがメレオを飼育している場所……ビー君の領地まで移動してもらう必要があるの」


 あー、なるほど。


 ビーゼルの転移魔法でいいなら、四村から大樹の村に運ぶだけで済むけど。


「メレオの大きさだと、ビー君でもちょっと厳しいかな」


 そっかー。


 まあ、移動方法はいくつかある。


 万能船に出張してもらう。


 ドラゴンの背に乗せて運ぶ。


 始祖さんに頼んで、始祖さんの転移魔法で運ぶ。


 移動させることに問題はないだろう。


「様子を見てだけど、三十日ほどは滞在してもらいたいわね」


 縄張りでの雌の誘惑に、雄がほいほいと釣られることは少ないそうだ。


 あと、シルキーネさんの思惑としてはできるだけ多くの繁殖活動をしてもらいたいらしい。


 それゆえ三十日は滞在してほしいと。


 それに関しては、こっちのメレオを飼っている悪魔族の女の子の判断次第だなぁ。


 こっちに全権を委任してもらっているけど、引き渡すのだけは絶対に嫌だと言っていたから。


 三十日とはいえ、外に出してもいいかどうか……


 わ、わかった、すぐに確認する。


 飼育担当の彼女も連れてこないといけないし、俺は四村に向かうことにした。


 そのあいだに、シルキーネさんは美容商品の交渉をマルビットとしておくそうだ。


 ……


 俺、いなくてもいいの?


「大丈夫です。

 ゆっくり戻ってきても、終わっていませんから」


 マルビットがにっこりと微笑み、シルキーネさんはお手柔らかにとちょっと気合いを入れた顔をしていた。


 えーっと、物陰で見守っているビーゼル。


 応援するなら堂々とシルキーネさんの隣に行ったらどうだ?


 無理?


 うん、わかる。


 えっと、俺と一緒に四村に行くか?


 それは駄目?


 見守っていないと、心配?


 愛だなぁ。





シルキーネ側が全部、雌。

(感想欄)で予想されていた……

でも、気にせず書きます。

それが異世界のんびり農家!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
神の共犯者で草
2025/11/14 23:09 ここまで読んで
このメレオにとって、中学卒業生がいきなり40代以上の熟女の群れ(飢えてる)の中に放り込まれるのとかわんないんじゃ?www
そんちょうのなかまがふえた!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ