表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
858/979

子供たちの冬


 屋敷の廊下を姉猫のミエルが走っていた。


 全力疾走だ。


 珍しい。


 走っているのも珍しいが、一匹でいるのも珍しい。


 いつもなら虎のソウゲツか、ほかの姉猫たちと一緒なのに……


 ミエルが走っている理由がわかった。


 フラシアに追いかけられているのだ。


 フラシアは太ったのが好き……失礼。


 たくましいのが好きだからなぁ。


 本人はスラっとしているけど。


 そして、そのフラシアは八歳とは思えないほど綺麗なフォームで走っている。


 短距離走者スプリンターみたいだ。


 これなら、もうすぐミエルに追いつくだろう。


 ミエルもそれがわかっていて、焦っているようだ。


 そう思って見ていたら、ミエルが進路変更。


 フェイントかと思ったら、俺に向かってきた。


 そして、すばやく俺の身体を登って頭の上に移動。


 俺の頭の上を安全地帯と認識しているようだ。


 追いかけてきたフラシアを威嚇いかくしている。


 さらに、俺の頭をポンポンと叩き、フラシアをなんとかしろと催促してくる。


 対して、フラシアは俺の前で、黙って両手をこちらに向けた。


 ……


 俺は頭の上のミエルを両手で捕まえ、フラシアに差し出した。


 ミエルが「えっ!」という顔で俺を見てくるが、俺は気にしない。


 なにせ、ミエルが俺の身体を登るとき、爪をたてられて痛かったから。


 そして、健康のためにも太りすぎはよくないと思うから。


 フラシアにそのたくましいお腹をまれるといい。


 ちなみにだが、ミエルは俺をひっかくことはあるが、子供たちには手を出さない。


 出してはいけない相手を理解しているのだろう。


 ミエルは情けない声を出しながら、フラシアにかわいがられた。




 大雪が降っている。


 本格的な冬の始まりだ。


 なのに、魔王国の王都からアルフレートたちが戻ってくる気配がない。


 ティゼルは国作りの仕事で忙しく、アルフレートとウルザ、トラインはその手伝いに参加するので、村には戻ってこないらしい。


 残念だ。


 アルフレートたちが戻らないので、アサ、アース、メットーラも戻ってこない。


 無理をしないようにと連絡しておいた。


 あと、ウルザが村に戻らないので、イースリーも村にこない。


 ドースをはじめとしたギャンブラーたちが、とてもがっかりしていた。


 なんだかんだで、仲良くしていたからな。


 気持ちはわかる。


 ゴール、シール、ブロンは戻ってこないのか?


 戻ってこれないらしい。


 理由はいろいろあるが、一番の理由はゴールの妻のエンデリとキリサーナが妊娠中だから。


 納得できる理由だ。


 シール、ブロンの妻が妊娠したとは聞いていないが、二人はゴールに合わせて戻ってくるのを控えた。


 まあ、長期の休暇として戻ってこないだけで、転移門を使えばすぐに会えるし、戻ってこれる。


 心配はしていない。


 五村で何度か会っているしな。


 ゴールは凛々しくなったように見えた。


 シールはちょっと痩せたな。


 忙しいのかな?


 ブロンは少しふくよかになったように思える。


 妻の料理が美味しくて?


 いいことだ。


 ただ、気をつけないとフラシアが喜ぶぞと注意しておいた。




 太ったらどうこうの話をしていてなんだが……


 昼過ぎ。


 サツマイモをつぼに入れて焼いた。


 壺の底に火のついた炭を入れ、壺の内側の壁にサツマイモを置く壺焼きスタイル。


 雪が降り続いているからな。


 室内でサツマイモを焼こうと考えた結果だ。


 ただ、壺の底に入れた炭と内側に置いたサツマイモが接しないようするため、そこそこの深さがあり、サツマイモを出し入れするために口縁こうえんがある程度広い壺が必要だった。


 俺のイメージだと、縄文土器みたいな形。


 探したけど、なかった。


 ただ、火鉢ひばちがあった。


 火鉢はすごく壺焼きに適している形だ。


 理想形と言ってもいい。


 しかし、火鉢。


 これでは壺焼きではなく、鉢焼きになってしまう。


 壺焼きにこだわりたいが……


 目的はサツマイモを焼くことであって壺焼きではない。


 心の中で、この火鉢も壺の一種と考えることで解決した。


 だから、火鉢の中に入れたのではなく、壺の中に入れたのだと力説してみる。


 まあ、火鉢があるのだから普通に上に鉄板なりを置いて焼けばいいので、壺焼きにこだわる必要もないのだが……


 目的ではないが、壺焼きを思いついたのだから壺焼きをしたい。


 というわけで、壺(火鉢)を使って焼いているのだ。



 おっと、室内で火を使うのだから、換気には注意だ。


 もちろん、俺は通気のいい場所で壺焼きをしている。


 なので、当然と言えば当然なのだが、焼かれているサツマイモの香りが周囲に流れだす。


 うん、わかっている。


 サツマイモの完成待ちの住人が集まるよな。


 秋のはじめにも、サツマイモを焼いてそうなった。


 抜かりはない。


 壺焼きをする前に、鬼人族メイドたちにサツマイモを焼くように頼んである。


 なので、妖精女王に引き連れられた子供たちがやってきても大丈夫。


 足りないということはないはずだ。


 ん?


 鬼人族メイドたちはサツマイモを焼くだけでなく、カボチャもしていた?


 俺はカボチャを蒸さないのか?


 そのカボチャは夕食に出す一品じゃないかな。


 ねだると、困らせるぞ。


 あ、もうねだってしまったのね。


 まだ蒸し終わってなかったから、断られたと。


 残念だったな。


 まあ、夕食に出るわけだから……


 わかったわかった。


 こっちでもカボチャを蒸そう。


 何人か、食糧庫からカボチャをもらってきてくれ。


 大鍋は重いし、包丁は危ないから、俺が取りに行く。


 妖精女王は壺焼きを見張っていてくれ。


 食べごろはわかるな?


 よし、いい笑顔と返事だ。


 妖精女王が見張っていた焼いたサツマイモは、甘くて美味しかった。


 壺焼きの成果だと思いたい。





 リリウス、リグル、ラテの三人の訓練は続いている。


 外に行くための力をつけるためだ。


 これまでかなり頑張っていたのだが、残念ながら武闘会では全敗。


 それゆえ、リアたち母親は外に行くのはまだ早いとの意見を変えていない。


 俺としては、対戦相手が悪かったのもあると思う。


 リリウスたちは、炭酸水がほしいドワーフたちと戦うことになったからな。


 試合前から気迫で飲まれていた。


 素人の俺でもわかる。


 あれでは勝てない。


 しかし、リリウスたちが頑張っている日々を見ていた。


 結果がともわなければ駄目だという意見もわかる。


 戦いに負けたら、怪我だけじゃなく死ぬこともある。


 十分以上に戦える力を持ってほしいという母親たちの気持ちも理解する。


 そこで、外に出るのは不許可だが、代わりにこの冬からリリウスたちに許可したのが、ヨウコのもとでの社会勉強。


 つまりはヨウコの手伝いだな。


 なので、五村には自由に行っていいということにした。


 そして、ヨウコが許可すれば警備隊の戦闘訓練に参加することもありとした。


 まあ、五村内での移動には護衛がつくし、戦闘の訓練にはハイエルフが数人、監督として同行する。


 リリウスたちだけで五村の外には出てはいけないと言ってあるし、大きな問題は起きないだろう。


 リリウスたちには、これからも頑張ってもらいたい。


 ちなみに、外に行くための試練なのに、外で訓練させるのはどうなんだとリアたち母親は難色を示したが、いきなり手の届かない場所に行かれるよりはいいとルーやティアが言ってなんとか納得していた。


 これはリリウスたちの訓練であると同時に、リアたち母親の子離れの訓練なのかもしれない。


 ……


 ずっと村にいたければ村にいてくれていいと思うが、村の外を見たいというなら見せてやりたい。


 しかし、親としては危険なことはしてほしくないし、危険な場所に近づいてもほしくない。


 難しいものだ。


 あと、ヨウコが将来的にリリウスたちを五村で働かせてほしいみたいな要望をちらちら言うようになり、ミヨがずるいと怒っていた。


「リリウスくんたちの次の子は、シャシャートの街にほしいです」


 えーっと、本人が望むなら考えるが……


 リリウスたちの次はヒイチロウだぞ。


 たぶん、グラルとライメイレンも一緒に行くことになるけど、かまわないのかな?






フラシアに追われるミエルを見ながら村長が一言。

「逃●中?」



差し出されたミエルが村長に一言。

「嘘でしょっ!」




●村長の子供(母親 年齢)


ウルザ(養女なので不明 14~15ぐらい)


アルフレート(ルー 12)

ティゼル(ティア 12)


リリウス(リア 10)

リグル(リゼ 10)

ラテ(ラファ 10)

トライン(アン 10)


ヒイチロウ(ハクレン 9)


フラシアベル(フラウレム 8)


セッテ(セナ 7)

ラナノーン(ラスティ 7)


ルプミリナ(ルー 5)

オーロラ(ティア 5)

ほか七人(?? 5)まだ名前が出てない。


ローゼマリア(グランマリア 4)


ララーデル(クーデル 3)

トルマーネ(コローネ 3)


ヒカル(ハクレン 2)

ヒミコ(ハクレン 2)


ククルカン(ラスティ 1)


サクラ(アン 0)

ラムナ(ラムリアス 0)

セット(セナ 0)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
大樹の村の武道大会に出て、五体満足なだけでも凄いのでは…
子供が増えれば増えるほど、世界征服に近づきますよね。
[一言] 猫で思い出すのは魔王城に住んでる猫君どうしてるかないい奥さん見つけたかな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ