表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
848/979

テリヤキと模型と金貨


 昼前。


 ギラルがオルトロスのオルを連れて村の中を散歩していた。


 珍しい姿ではない。


 最近、グーロンデがヒイチロウとグラルの訓練をしており、寂しがったギラルとオルで意気投合した形だ。


 まあ、喧嘩がなくなったわけではないけど、仲がよくなったとは言えるだろう。


 引き綱(リード)をしているわけでもないのに、二人で並んで歩いているからな。


 ちなみにだが、グーロンデとヒイチロウとグラルの訓練。


 ここにライメイレンがなんとか加わることができたらしい。


 ドースが、すごくいい顔で俺に報告してくれた。


 悪いことじゃない。


 俺も喜んでおこう。


 おっと、クロとユキに叱られた。


 いまはクロとユキとの散歩の時間だ。


 集中しないとな。




 散歩が終わると、昼食タイム。


 今回は、俺が作る。


 醤油に砂糖、料理用の酒を加えて加熱しながら混ぜる。


 テリヤキソースだ。


 しっかり焼き上げた薄めのハンバーグを、そのテリヤキソースの入った壺にくぐらせ、取り出す。


 照りが足りないかな?


 まあ、味に問題はないだろう。


 試食してみる。


 ……


 わかっている。


 鬼人族メイドたちの分もある。


 料理を手伝ってくれている天使族の分もだ。


 改めて、試食。


 うん、美味い。


「甘さがいいですね」


「子供たちが喜びそうな味です」


「大人でも、好きになると思いますよ」


 試食した鬼人族メイドたちや天使族たちの評判もいい。


 もっと早く作ればよかった。


 そう思いながら、鬼人族メイドたちや天使族たちと一緒に今日のお昼のテリヤキハンバーグを量産した。


 テリヤキハンバーグは子供たちに人気だったが、とくに気に入ってくれたのがセナの娘、セッテ。


 三回もお代わりしていた。


 そんなセッテはセナの出産が近く、弟か妹が産まれるのをすごく楽しみにしている。


 なにかあれば、弟なのか妹なのか。


 名はどうするのか。


 自分と仲良くやっていけるのだろうかと子供たちと話している。


 そんなセッテを微笑ましく見ながら、無事な出産になってほしいと願う。


 ……


 あとで、妖精女王にもテリヤキハンバーグを差し入れておこう。




 屋敷には空いている部屋がいくつもあり、そのうちのいくつかをザブトンの子供たちが使っている。


 俺は目的とするザブトンの子供たちの部屋に入ると、そこには立派な木製の鉄道模型があった。


 スケール的には実物の百分の一ぐらいだが、俺の知る鉄道の線路が敷かれ、その上に屋根のない車両が乗せられている。


 ザブトンの子供たちは、その車両に乗ったり車両を押したり引いたりして遊んでいたが、俺を見ると一斉にやってきた。


 すまない。


 邪魔してしまったな。


 ここにいるザブトンの子供たちは、工作好きだ。


 糸はそれなりに使えるが、装飾方向には興味を示さない。


 どちらかと言えば、山エルフたちの工作に興味を持つタイプ。


 少し前にやったドミノ倒し大会も興奮しながら見ていたし、大会が終わったあとは自分たちでドミノを並べて倒していた。


 そして現在、鉄道の模型作りに夢中になっている。


 レールの上を走る車輪に魅了されたらしい。


 とくにカーブを曲がる際の車輪の働きに、感動すらしたそうだ。


 車輪のタイヤは外に向かって細くなる円錐えんすい状。


 この円錐が、カーブのときの内輪差を調節する。


 ここにいるザブトンの子供たちが叫べるのなら、精一杯の声で叫んだに違いない。


 実際は力強いタップダンスだったけど。


 その模型の規模は、徐々に大きくなっている。


 天井付近にあるキャットウォークならぬスパイダーウォークを使い、複数の部屋に跨って鉄道模型を展開しているぐらいだ。


 ちなみに、いまいる部屋は大樹の村がモデルになっている。


 うん、ジオラマも作っている。


 見てもらいたいところは多いが、一番の自慢は大樹の村の外周を取り囲む大環状線。


 それと、俺の屋敷から東西に伸びた中央線。


 この中央線が一村をモデルにした隣の部屋に続く。


 さらに隣の部屋は二村がモデルだ。


 三村は現在、製作中。


 モデルが身近なのは、ここにいるザブトンの子供たちが五村やシャシャートの街、ハウリン村を知らないから。


 今度、連れて行ってやりたい。


 そして、五村の鉄道を見せてやりたかった。



 俺がこの部屋に来たのは鉄道模型を作る手伝いをするため。


 レールはザブトンの子供たちが作っているので、俺は車両作りがメインだな。


 よーし、今日は機関車を作るぞ。


 まあ形だけだけどな。


 ほんとうなら石炭を燃やして動くんだ。


 ……木製だから、実際に石炭を燃やすのは危ないからやめよう。


 鉄で作ってほしい?


 いや、模型とはいえ、実際に動くのを作るのは難しい。


 ま、まあ、機関部だけなら頑張ってみるけど。


 期待はしないでくれよ。


 俺はザブトンの子供たちとのんびりと模型作りを楽しんだ。





 金貨や銀貨をテーブルの上に並べてみた。


 財力を誇示したいわけではない。


 これまで金貨や銀貨とひとまとめに呼んでいたが、金貨や銀貨にも種類はある。


 全て円形で、大きさや厚さ、重さも同じだが、貨幣の絵柄や模様、入っている文字が違う。


 発行した国や組織、集団の違いだろう。


 金や銀の含有量も、実は種類によって微妙に違うらしい。


 だが、だからと言って金貨や銀貨の種類で価値が増減することはほぼない。


 金貨は金貨、銀貨は銀貨で同じ価値となる。


 まあ、当然ながら国や地域の経済力によって金貨、銀貨の価値は変動しているのだけど、最終の価値は変わらない。


 この世界の金貨、銀貨はどの種類でもドラゴンとの交渉に使えるからだ。


 つまり、この世界の金貨、銀貨の最終的な価値の保証は、ドラゴンがしているといえる。


 さらに金貨、銀貨の流通量。


 発行していた国や組織、集団は滅んでしまっているので、実際の流通量はわからない。


 ただ、ドラゴンたちが金貨や銀貨を大量に貯め込んでおり、それを定期的に放出して市場の貨幣量を調節しているそうだ。


 ……


 ドースやライメイレンがやっているのだろうか?


 普段の様子から、そんなことをしているようには見えない。


 見えないだけか?


 そのあたりをハクレンに聞いてみた。


「対外的にはドラゴンがやっていることになっているけど、やってないわよ。

 ドラゴンは細かいこと、気にしないから」


 だよな。


 じゃあ、誰も市場の貨幣量の管理していないのか?


「管理しているのはお父さまやお母さまに仕えている悪魔族ね。

 そういったのが得意なのが集まって、いろいろとやってるらしいわ」


 へー。


「ただ、その悪魔族たちも経済は化物だ。

 コントロールなんて不可能だって、嬉しそうに言ってるんだけどね」


 嬉しそうにか?


「ええ。

 手に負えない感じが好きなんだって」


 い、いろいろな人……じゃなかった。


 いろいろな悪魔族がいるんだなぁ。




 フラウの余談。


「基本、どの種類でも金貨は金貨、銀貨は銀貨と同じ価値ですが……

 見慣れない金貨、銀貨は偽物と疑われて価値が下がります。

 とくに金貨は、普通の平民には馴染みのない貨幣ですので、疑われやすいです」


 なるほど。


「ただ、見慣れない金貨、銀貨を集めるマニアもいますので、逆に価値が上がったりもします」


 つまり?


「相手によって変動します。

 魔王国ではめったにありませんが、人間の国と取引するときは金貨や銀貨の種類を指定することはありますよ」


 へー。


 じゃあ、大樹の村でも種類ごとに分けたほうがいいのかな?


「……や、山エルフさんたちが作ったスライダー式硬貨計算機。

 あれで種類分けできませんか?」


 あれは貨幣のサイズや重さ、金や銀とかの含有量で種類を判別しているからな。


 貨幣の模様で分けるのは、ちょっと厳しいか?


 いや、模様ぐらい判断できるだろう。


 全ての硬貨の種類を覚えさせれば、なんとかなると思いたいが……


 ちらりと近くにいた山エルフを見る。


 どうせ聞き耳を立てていたのだろう?


 山エルフは少し考え、作るのは楽しそうだけどちょっとした家ぐらいのサイズの機械になるとの意見。


 持ち運びができないのは、辛いか?


「あの……手作業での種類分けだと、地獄のような作業になりますよ。

 この村にある金貨や銀貨の量を考えると」


 ……


 よし、やめておこう。


 種類分けは、気が向いたときに。


 少量ずつだ。






山エルフ     「石炭を燃やして動くとは?」

村長       「……覗いていた?」

山エルフ     「楽しそうなことしているなぁとは思っていました」

ザブトンの子供たち(仲間が増えた!)



村長       「機関車は……こんなものかな?」

山エルフのマア  「え? 蒸気機関? え? こんなコンパクトに? え?」



悪魔族      「それじゃあ、適当に金貨を持って巣に篭ってください」

ドラゴン(混代竜)「適当に負けたらいいんだな?」

悪魔族      「ええ、負けてください。絶対に負けてください。勝っちゃ駄目ですよ」

ドラゴン(混代竜)「はいはい、経済のためね。わかってますよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
蒸気とハンバーグの関係・・・ 603話 魔王の計画
混代竜、負けるのは良いのですが、命の危機は感じてないのかな? まぁ試練みたいな形で「負けやった」みたいな態度を心掛けたら大丈夫なのかな?
物作り好きなザブトンの子供達は是非ともアラクネ辺りに進化してワイワイ物作りして欲しいなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ