訓練と新木道計画
山エルフたちと、ドミノ倒し大会をやった。
かなり盛り上がった。
このドミノ倒し大会に問題はなかったのだが、別のところで問題があった。
実はこのドミノ倒し大会。
イレの撮影隊に頼んで、映像を録画してもらっていた。
そして、その映像を編集する段階で……
「こ、これではドミノ倒しの楽しさが伝わらない!」
撮影隊が録画した映像に満足していなかった。
「カメラのポジションにも無理がありますし、角度も納得できるものではありません」
「大きく撮りたいのに、ドミノはさっさと倒れていってしまって……撮り損ねてしまった場面が何か所も……」
「実況も、次々発動する仕掛けを伝えきれませんでした」
撮影隊の全員が、かなり深刻に打ちのめされていた。
「どうやら、俺たちは……
いえ、私たちは、野球やパレード、白鳥レースに呼ばれ求められ、その実績に己惚れていたようです。
村長、今回は申し訳ありませんでした!」
あ、いや、うん。
「とくに最後の大仕掛け、ドライムさまの上に大きい盆が落ちてくるのを撮れなかったのは痛恨の極みです!
せっかく、ドライムさまが体を張ったのに……」
あー。
あそこが撮れてないのは痛いなぁ。
会場では大盛り上がりだった。
落ちてきた盆は当たっても痛くない特注品だが、ドライムの演技がよかった。
会場にいなかった者たちが、観たがるだろうから……
「このあと、観たがっているライメイレンさまに呼び出しを受けてます」
そうか。
えーっと、なんだったら庇うぞ。
「いえ。
反省のためにも、自身で受け止めてみせます」
そ、そうか。
無理はするなよ。
ちなみにだが、最初の予定では盆に当たるのは俺だった。
しかし、どれだけ痛くない盆だと説明しても、クロとユキ、ザブトンが心配したので代役を立てることになった。
クロとユキ、ザブトンは以前あった鳥たちによって俺が誘拐されたことを連想したらしい。
盆が落ちてくるだけで、どうしてそれに繋がるのかはわからないが、クロとユキ、ザブトンが嫌がっているので止めておいた。
立候補してくれたドライム、ありがとう。
そして、そのドライムの雄姿を撮り損ねたイレは……
ライメイレンからなにを言われるかはわからないけど、ドライムにはしっかりと謝罪しておくように。
「承知しております。
そして、二度とこのようなことがないように努力します」
うん、期待している。
秋の村では、村の住人がいろいろな場所で戦闘訓練をする姿をみることができる。
秋の収穫後は、武闘会があるからな。
みんな、頑張っている。
……
リリウス、リグル、ラテの三人も戦闘訓練に参加していた。
子供たちが戦闘訓練に参加するのは珍しいことではないが、大抵は子供たち同士でだ。
誰かが指導するとしても、ガルフやダガだろう。
しかし、リリウス、リグル、ラテの三人は、天使族のスアルロウに剣の手ほどきを受けていた。
珍しい。
スアルロウの姿は幼いが、スアルリウ、スアルコウの母親だ。
しかも、天使族最強を名乗っていた過去もある。
実際、スアルロウの剣の扱いは素人の俺が見ても達人のように思える。
だから侮る気はない。
侮る気はないが……
心配なので様子をみていると、グランマリアがやってきたので聞いた。
リリウスたちって、スアルロウと仲がいいのか?
「仲がいいかは知りませんが、少し前から剣を教わっていますよ」
そうなのか?
「はい。
リリウスくんたちからお願いしたそうです。
体格的にちょうどいいので」
あー。
どうして教わる相手がガルフやダガじゃないのかなと思ったけど、なるほど体格か。
「それに、スアルロウさまは剣の腕も凄いですから」
へー。
「剣を持っての接近戦になるなら、ティアさまにも勝てると思いますよ」
高評価だな。
「はい。
ですが、接近戦に持ち込まれるまでに勝負をつけるのがティアさまですので」
そうだな。
ティアが剣を持って振り回している姿は、あまり見たことがない。
ルーと拳で殴り合っているのは、何度か見たことあるけど。
ともかくだ、スアルロウになら任せて大丈夫なんだな?
「そうですね。
大丈夫です。
面倒見がとてもいいですから」
それはよかった。
「ところで村長」
なんだ?
「あちらは、放置でいいのですか?」
グランマリアが、村の外れの森を指さす。
そこには、ドラゴンの姿になっているヒイチロウとグラルが、同じくドラゴンの姿になっているグーロンデと戦っている。
グーロンデは本気ではない。
ヒイチロウとグラルの攻撃を的確に捌いているだけだ。
対して、ヒイチロウとグラルは全力でグーロンデに挑んでいるようにみえる。
……
放置で大丈夫だ。
事前に、訓練すると聞いていた。
グーロンデの実力は、ギラルが保証してくれた。
どう頑張っても今のヒイチロウとグラルでは、グーロンデに傷を負わせることは無理と。
そして、グーロンデならヒイチロウとグラルに大怪我をさせることはないと。
「大怪我はないだけで、小さい怪我はするということですよね?」
まあ、そうなんだけど、あの訓練はヒイチロウとグラルが望んだからな。
村の外のパレードで遭遇した鯨の白骨との戦闘で、あまり役に立てなかったことを気にしていたらしい。
俺としては、あれは突発的な戦闘だったし、グラルはともかくヒイチロウはまだまだ子供だから気にしなくてもとは思う。
しかし、本人が強くなりたいと望んでいるのだから、それを邪魔するのはよくないだろう。
母であるハクレンも、認めているしな。
だから、村に被害がない限りは自由にさせることにしている。
余談だが、ヒイチロウは最初、ライメイレンに鍛えてもらうつもりだった。
しかし、ライメイレンは鍛えたヒイチロウが独り立ちする幻を見てしまった。
たぶん、家出したハクレンのことがあるのだろう。
だからライメイレンは鍛えることをやんわりと断ったのだが、ヒイチロウは諦めなかった。
そして、指導役にグーロンデが選ばれた。
グーロンデと一緒になって訓練するヒイチロウとグラルの姿を見て、ライメイレンは「初手を間違った!」とドースに嘆いていた。
ドースは困った顔をしていた。
秋のある日。
五村がある山の中で周回している鉄道ならぬ木道。
この木道を拡張する計画書が、ヨウコから俺に提出された。
木道はもともと地下商店通りへの商品を搬入するために作られたのだが、人の輸送も行っている。
地下商店通りに行かなくても、五村の各地に移動するのに便利らしい。
それゆえ、現在の木道では輸送力に限界が来ているらしい。
しかし、拡張と言っても木道は山の中のトンネルを走っている。
現在のトンネルを拡張するのは、危ないと思う。
なにせ、いまの五村の山には建物がひしめいているからな。
山の中を掘るのは怖い。
だから木道を増やすのは厳しい。
車両を増やすのが精一杯じゃないか?
そう意見を言ったら、拡張の計画書はすぐに引っ込められた。
元から通す気はなかったのだろう。
代わりに提出されたのが、新木道計画。
たぶん、こっちが本命だな。
内容は……
五村とシャシャートの街を繋ぐ木道の建設計画のようだ。
なるほどと思うけど、五村とシャシャートの街は転移門で繋がれている。
木道は必要だろうか?
「転移門の混雑解消が目的だ」
現在、転移門は人や物の移動に使われている。
かなり活発に。
それゆえ、移動待ちでかなりの時間がかかる状況になっているらしい。
可能なら転移門を増やしたいそうだが、それは難しい。
だから、転移門は人の移動に集中し、急ぎでない荷物は木道に任せたいということだろうか?
線路を引く場所はすでに調査済み?
木道の維持管理、それと警備に関しては……近隣のエルフの里に依頼する予定と。
根回しは終わっているのか。
ふむ。
警備があるなら、木道でなく鉄道でもいいだろうか?
「木道では問題があるのか?」
荷物を運ぶことがメインと考えると、モノレール形状の木道では不安がある。
あと、木道は雨に弱い。
「なるほど。
村長の作った模型にあった、台車とレールか」
当初はそれで行く予定だったけど、レールの窃盗を警戒してトンネルの中で木道という形になった経緯があった。
モノレールにしたのは、脱線を警戒してだ。
五村とシャシャートの街の物流を担うことを考えると、大量の輸送となるだろう。
モノレールの台車よりも、鉄道台車のほうが製造が簡単だし、メンテナンス性も高い……と思う。
山エルフたちに相談だな。
ああ、二本のレールを平行にすることや、カーブなどでの角度調整が必要になるけど……
「それに関しては、木道を作る前に何度か実験はしたであろう?」
技術は進歩している。
改めて実験はしよう。
それで、とりあえず短距離でレールを敷いて、問題なければ延ばしていくのはどうだろう?
「短距離か。
無駄になることも考えると……麓の南から、北東が無難であろうか」
北東?
白鳥レースに繋げるのか?
「神社のことも考えている」
なるほど。
まあ、そのあたりは任せるけど、計画の承認は山エルフたちと相談してからだ。
「承知した」
村議会議員A「転移門の混雑解消を!」
村議会議員B「転移門を使わず、移動してもらうしかないのでは?」
村議会議員C「転移門の便利さを知っている者に、歩いて行けと言うのか?」
村議会議員D「なんでもかんでも転移門を使うから混雑するのだ」
村議会議員E「人と物をわけよう。転移門は人だけにするのだ」
村議会議員F「物だけどうやって運ぶのだ? 人がおらんと無理だぞ」
村議会議員G「……木道、あれを使えんか?」
村議会議員H「それだ!」
村長 「最初に無茶な計画書を出してから、通りそうな計画書を出すのは商売のテクニックか?」
ヨウコ「いや、木道の説明が必要だったから」
村長 「メタ発言をするんじゃない」




