白鳥レースの施設強化
配当計算は後回しにして、白鳥レースの改善を続ける。
観客席の設置。
これまでは各々が池の周囲に陣取っていたけど、ゴール付近に集中できるように観客席を設置する。
まあ、背もたれのない長椅子を並べるだけでいいと思うので、五村の大工たちにお願いした。
レースに参加する白鳥のための小屋の設置。
このレースに参加している白鳥は三十羽ほど。
なので、大型犬が入れるぐらいの小屋を二百ほど作った。
多過ぎる?
いや、絶対に増えるから。
大樹の村のハイエルフたちと俺で作った。
そして、白鳥たちがレース練習をするための池の増設。
うん、増設。
池が足りない。
レース開催中に、待機している白鳥が池に入れないのも困る。
白鳥の主食は、水辺の植物の葉や茎。
レース開催中に食事できなくなる。
あと、レースをしている最中に、練習もできない。
小さい池でかまわないので、あと二つぐらい増やしてほしい。
無理?
無理ならいいんだ。
こっちでなんとかするから。
ただ、最初の池はそっちが作ったから、任せてもいいかなと思っただけで。
無理ならいいんだ。
無理なら。
「で、できますよ!」
オデットが頑張って、池を二つ作ってくれた。
ただ、かなり頑張ったようで疲労困憊である。
人の姿を維持できず、巨大な白鳥の姿になっているぐらい。
「ほ、褒めて」
もちろんだ。
よくやったな。
すごいぞ。
「違う」
ん?
「疲れていても美しい私の美貌を褒めて」
……
まあ、池はできたわけだしな。
それに、白鳥の姿も、人の姿も、美しいのは事実だ。
俺は褒めた。
あ、ちょっと回復した。
続いて、胴元の管理施設。
金を集めるからには、それなりの防犯体制を用意しなければいけない。
また、オデットとオディールの生活空間も必要だ。
神社でいいじゃないか?
神社は神社。
ちゃんと独立しておくように。
あと警備をする者たちの休憩所や、迷子の待機所、体調不良者のための簡易な医務室もいるな。
これらも大樹の村のハイエルフたちと俺で、一気に建てていった。
賭け札の販売所と、配当金を渡す場所も用意する。
これまでは賭け金を払ってもらっても賭け札などを渡すことなく、名簿に名を載せるだけ。
レースが終わったあと、その名簿に名がある者に配当金を渡す。
胴元に対する信頼が妙に高い。
胴元が嘘を吐いたらどうするんだ?
名簿に名がないとか。
……
ボコボコにされるだけと。
なるほど。
ちょっと怖い。
まあ、嘘を吐いたりはさせないけど。
俺が提案するのは、投票券制。
前の世界で競馬とか競輪でやっているスタイルだ。
勝つと思う白鳥の券を買ってもらい、券の売れ行きで配当を決定。
レース後に勝利した白鳥の券を、換金する。
紙でやりたかったけど、保存等の問題があったので木板に焼きごてを入れることにした。
偽造防止に、木板は特殊な合板を使うことにし、焼きごてをするときに一緒に隠し印を入れることになった。
倍率というか配当率は変動制を導入するので、途中経過や最終結果を表示しなければいけない。
ここで客の識字率が問題になった。
全員が全員、文字を読めるわけではない。
数字ぐらいは読めるだろうと思いたいのだが、怪しい人もいるにはいる。
これまでのレースで白鳥は番号の入ったマントを背負っていたが、客の中には番号と認識せず、記号として認識していた者もいるそうだ。
白鳥に名をつけても、読めない人がいる。
その白鳥の倍率を表示しても、読めない人がいる。
どうすべきか悩んだが……
強行した。
白鳥には名をつけるが、番号の入ったマントを背負わせるのはそのままだ。
つまり、これまで通り。
倍率の変動はするが、嘘を表示することはない。
なので倍率を読めなくても、損はしない。
倍率が読めたからと、勝てるわけじゃないしな。
当たったときの配当に対しての期待の度合いが変化するだけだ。
胴元側としては、倍率が読めようが読めまいが、当たった券を持って来れば正しく配当する。
それだけだ。
なので、あとは読める人に助けてもらうなり、自分で読めるように勉強してほしい。
次に道。
神社は五村の北東に位置する山にあり、池はその神社のある山の麓にある。
神社からみて池は西南西の位置にあり、五村からは北北東の位置になる。
つまり、五村と神社を繋ぐ道から、少し北側の場所にある。
そこに、道を通すにはと考える前に、これまでの客はどうやって来ていたのか確認した。
五村と神社を繋ぐ道から、池に続く道ができていた。
獣道というほどではないが、それなりに人が通っているのでわかりやすくなっている。
なるほど。
では、この道をさらに整備する方向で。
これは五村の職人たちに任せた。
飲食に関しては、神社に行く道中に店が並んでいるので、池の近くに建てる必要はないだろう。
レースの開催日しか儲けが期待できないので、ゴロウン商会とかも誘いにくい。
そう思っていたのだが、レース開催日だけでも出店したいので場所がほしいとゴロウン商会から言われた。
では、スペースは用意しよう。
ただ、出店管理まで銀狐族にさせるのは大変なので、これは五村に委任。
ゴロウン商会と協力して管理してほしい。
わかっていると思うけど、出店代は高額にならないように。
多く払った者がいいスペースを確保するのは、かまわないけどな。
さて、こんなものか?
まあ、あとは実際に動いて考えればいいだろう。
……
わかっている。
最大の問題を放置していることを。
配当計算のことではない。
そっちはなんとかなる。
問題となるのは、白鳥レースということ。
実は白鳥。
渡り鳥だ。
そして、主食が水辺の葉や茎なので、縄張り意識が強い。
縄張りを主張して食事を独占しないと、生きていけないから。
つまり、白鳥は本来、一か所に留まってレースをするような生物ではないのだ。
村長 「できないの?」
オデット 「で、できらぁっ!」
村長 「白鳥はレースに向かない!」
オディール「いまさら?」




