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天使族会議とティア


 大会議が始まった。


 まずは、大樹の村における天使族内での序列の再確認。


 大樹の村での代表はティアだが、天使族の指揮に関してはマルビットが正式に代行する。


 それゆえマルビットが俺に、天使族全体への指示を求める。


 ティアとマルビットの意見が対立したときはティアの意見を優先するが、マルビットが俺の指示を受けていた場合はマルビットを優先する。


 マルビットの下の組織は、これまでの天使族と同じ。


 天使族の長も、マルビットのまま。


 次に、大樹の村での仕事の再確認。


 天使族の基本の仕事は上空からの警戒だが、人数が増えたので交代を含めても余裕がある。


 余裕は大事だが、あまりに余裕がありすぎると大樹の村に住むほかの種族からの視線が痛い。


 村が小さいときからいるティアやグランマリアたちはともかく、新しくやってきた天使族はしっかりと働いているところをわかりやすく見せないといけない。


 少し前に行われた収穫作業は頑張ってくれたが、経験不足から足を引っ張ってしまう場面が多かった。


 このあたりは慌てても仕方がないので、俺としてはゆっくり慣れてくれればいいと思うのだけど……


 天使族としては、甘えるわけにはいかないのだろう。


 ほかの種族に協力を要請し、仕事を早急に覚えていく必要がある。


 そして、問題となるのが魔王国内における天使族に対する魔族の反発。


 予想はしていたが、予想を下回らなかったことにマルビットたちは困っている。


 王都のティゼルのところや、五村、シャシャートの街に天使族を文官として派遣する案があったのだけど、現状では無理となったからだ。


 キアービットのように変装をするならともかく、天使族として振舞うなら五村が精一杯。


 これまでの行いの結果と言えばそれまでだが、戦争をしていたのだからお互いさまだし、仕方がないだろうというのが天使族の考え。


 だが、戦争が終わったのだから恨みっこなし、にはならないことも理解している。


 天使族の経験では、こういったことが時間で解決することはないので、なにかしら魔王国に貢献できるチャンスを気長に待とうということになった。


 最後に、マルビットが代行する天使族の指揮は将来的にオーロラに任せるので、それにむけた教育をすることが決められた。


 ……


 まてまて。


 オーロラはまだまだ子供だぞ。


 将来の話だが、本人の意思が介在しない決定には不満がある。


 抵抗する俺を止めたのはオーロラの母であるティア。


「教育と称して、孫を甘やかしたいだけです。

 オーロラに不利益なことはしませんよ」


 そうなのか?


 俺がルィンシァを見ると、ルィンシァは無表情だったが、背中の翼がバッサバッサと動揺していた。


 本当らしい。


 まあ、それなら……


 大会議は終了を宣言され、解散となった。



 大会議に参加していた天使族が部屋から出て行く。


 やっと解散だーと自然な流れでティアが出て行こうとしたので、俺はティアを捕まえた。


 話があるって言っただろ。


「あはは……」


 ティアが諦めたところで、真面目モードを解除したマルビットがやってきた。


「村長ー。

 疲れたわー」


 こらこら、甘えるんじゃない。


「ふふ。

 急に呼んでごめんなさいね」


 まったくだ。


 まあ、急だったのはティアを油断させるためだろう。


 事前に俺の予定に入っていれば、俺が会議に参加することをティアが知ることができただろうから。


 しかし……


 ティアにあんな一面があることに気づかなかった。


 長いつき合いなのに。


 俺の視線から、ティアは顔をそむけている。


 そんなティアにマルビットが追撃。


「ティアがしっかりしているなら、天使族のおさにだってなれたのですけどねぇ」


 マルビットが言うには、ティアの性格が統率に向いていないらしい。


 さらに、ティアの戦闘能力は高いけど、集団戦闘はそれほど得意ではない。


 一応、戦闘指揮らしきことはできるけど、集団を率いての評価はいまいち。


 種族の長にするのは、とても不安。


「そ、そこまで言わなくても……」


 ティアは拗ねたように言うが、マルビットの口は止まらない。


 本来であれば単独行動を許していない。


 幹部候補として捕まえて教育すると。


 そうしなかったのは、捕まえられなかったこともあるが、教育を諦めたこともあると。


 そう聞くと、ティアって問題児だったんだな?


「ティアになんとかついていけるグランマリアたちを放置して、単独行動をしてるからね」


 ティア、褒められてないから照れる必要はないぞ。


 ん?


 ルィンシァもやってきた。


 ルィンシァからも言いたい?


 どうぞ。


「親になんの報告もなく結婚して子を作っていることからも、問題児であることを察していただきたいです」


 えっと……それに関してはすまなかった。




 マルビットたちと別れ、俺の部屋でティアと話し合う。


 クロとユキは、ちょっと離れてもらえると助かる。


 すまない、真面目な話だから。


 色っぽい話じゃないから、出て行く必要はないぞ。


 ザブトンの子供たちも、遊ぶのはあとでな。


 すまない。


 さて、ティア。


 天使族の会議だからと、寝るのはどうなのかな?


 参加したからには、話は聞いておかないと駄目なんじゃないのか?


 ……天使族の会議は回りくどい?


 今日の会議は、そんなことはなかったと思うが?


 俺がいたから、わかりやすくシンプルになっていた?


 普段の会議だと言葉にも裏があるから面倒くさい?


 特定の勢力を褒めているのかと思ったら、実は逆にけなしていたとか?


 ああ、さっきマルビットの言葉で照れてたのは、それか?


 あー、文句はあるけど最強だから許してますって褒められてたのね。


 なるほど。


 ティアはどちらかと言えば、罠があってもまっすぐ行くタイプ。


 意見を通すのが面倒だから、そういったことには関わりたくないと。


 幸いにして、天使族で最強を名乗れるだけの強さを持っていたので、自由行動ばかりしていたのか。


 うーん。


 それでこの村に来られたわけだから、悪いことばかりじゃないが……


 グランマリアたちを放置しての自由行動は、どうかと思うぞ。


 いや、グランマリアたちもわかっているじゃなくて。


 ああ、そうか。


 ティアと息が合うのが、ルーだったんだな。


 違う?


 ルーとはライバル?


 ははは、そうだったな。


 忘れてないよ。


 覚えている覚えている。


 なんにせよだ。


 天使族の会議では、できるだけ起きているように。


 子供たちの話題が出ることもあるしな。


 いつのまにか、オーロラたちが持ち上げられているのは困る。


 子供たちが望むならともかく、周囲が種族の義務感とかで行動を決めるのはな。


 天使族を守ろうとしているマルビットたちには悪いけど。


「それは大丈夫ですよ。

 オーロラに限らず、ティゼルも私似ですから」


 それは喜ぶべきか、悲しむべきか。


「喜ぶべきでは?」


 問題児だと判明したところだからなー。


「それは解釈の違いです。

 あと、ローゼマリア、ララーデル、トルマーネも大丈夫です。

 それぞれの母がしっかりと守っていますので」


 俺も守りたいんだけど。


「旦那さまが前面に出るのであれば、母はなんとかなりますが……長に転がされる姿が見えてしまいます」


 むう。


「まあ、子を守る役は、ラズマリアに任せてください」


 ラズマリア?


 ルィンシァではなく?


「ええ、ラズマリアです。

 彼女は天使族の中でも指折りの穏健派。

 常識人ですよ」


 穏健派?


 常識人?


 俺の知るラズマリアは、いきなりスアルロウと殴り合いをしたぞ。


「スアルロウが仕事を押しつけましたからね。

 あれは穏健派で常識人のラズマリアを怒らせたスアルロウが悪いのです」


 たしか、孫が生まれたという話を聞いたのに、仕事を入れられて村に来られなかったのだっけ?


 そりゃ怒るか。


「天使族のことで私やグランマリアたち以外の意見が聞きたいときは、ラズマリアに聞くことをお薦めします。

 長や母、長老よりは旦那さま好みの意見を言ってくれるはずです」


 覚えておくが……


 もう少し、ルィンシァを頼ってやってもよくないか?


「母は言葉では厳しいことを言いますが、基本は過保護なので。

 これぐらいでいいのです」


 なるほど。


 俺はちょっとだけティアを甘やかしたあと、話し合いは終了。


 待たせていたクロとユキ、ザブトンの子供たちと遊んだ。





スアルロウ「私も孫を抱っこしたいのだけど……進展は?」

スアルリウ「……」

スアルコウ「……」


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― 新着の感想 ―
人族の超脳筋が天使族の穏健派にあたるのかなぁ…
自分になにかあった時のために一村とかを作ったのに、次代の村長や各種族のリーダーに関しては決めたくない、本人にまかせるってそりゃないよね。 もう本人がどう思うとか関係ない状態になってるってのわかるじゃろ…
[一言] 異世界の常識、封建制度には何故か反対する主人公。 そして、自分のいた世界の常識を押し付ける。 これで暴君じゃないや意見言わないって感覚が、理解に苦しむ。 十分、主人公は異端児で異質
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