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天使族会議

●人物紹介

オーロラ   ティアの娘。ティゼルの妹。

ローゼマリア グランマリアの娘。

ララーデル  クーデルの娘。

トルマーネ  コローネの娘。


マルビット  天使族の長。キアービットの母。

ルィンシァ  ティアの母。

ラズマリア  グランマリアの母。


 フローラが研究していた悪臭の……いや、失礼。


 臭いのきつい食品を兵器にする計画がでてきた。


 フローラの冗談だと思ったのに、真に受ける者がいるとは。


 ……


 ルーだ。


 まあ、臭いを武器にするのだから、防犯グッズみたいな感じになるのだろう。


 間違ってもクロの子供たちに使わないよう、注意してもらいたい。


 そんなふうに思っていたら、あっというまに試作品ができた。


 手で持てるつつタイプ。


 この段階では臭いはまったくしない。


 紐をひっぱったり、筒を捻ったり、筒を壊したら臭いが発生するらしい。


 さっそく実験。


 村でやるのは危険なので、森の奥地に移動した。



 巨大な猪は逃げた。


 巨大な熊は逃げた。


 巨大な蛇も逃げた。


 ……


 最強ではなかろうか?


 ザブトンたちには通用しなかったけど。


 クロの子供たちもこの臭いを嫌がっていたからな。


 っと、ルー、ルー。


 ザブトンの子供たちに筒を背負わせるのはやめてくれ。


 かわいいザブトンの子供たちが、凶悪な兵器に見えてくるから。


 実用化、量産化は……要検討だな。


 扱いが難しい。


 臭いをなんとかする魔法が使える者がいないと、被害が拡大する。


 森を歩くときの魔獣避け、魔物避けに使えるかもしれないけど……


 そういった物が必要な者が、この臭いに耐えられる気がしない。


 何個かは作ってもいいけど、保管は厳重に。


 地下室に置いて水没させておくぐらいの用心をしてほしい。


 強く願う。





 夏のある日。


 屋敷の一室に天使族が集まって大会議を行った。


 大樹の村にいる天使族全員が集まって……


 いや、オーロラやローゼマリア、ララーデル、トルマーネなど、子供はいない。


 それ以外の天使族が集まっている。


 円卓を囲んでいる形だが、さすがに全員の席はないので、ティアやグランマリア、クーデル、コローネ、スアルリウ、スアルコウ、マルビット、ルィンシァ、スアルロウ、ラズマリア、レギンレイヴ、ほか数人が席に座り、残りの者は少し離れた場所で見守っている。


 そんな大会議の場に、なぜか俺も呼ばれ、席に座っている。


 正統ガーレット王国のことでも話し合うのかなと思ったら、違った。


 天使族の序列のことだった。


 序列といっても大樹の村における天使族全体の序列ではなく、大樹の村における天使族“内”での序列のこと。


 少々、困ったことになっているらしい。


 なにを困っているのだろうか?


 大樹の村での天使族の序列なら、俺視点ではティア……あれ?


 天使族はマルビットが指揮していることが多いな。


 マルビットに変更になったのか?


 俺はそういった報告を聞いていないが?


「もちろん、天使族としてこの地に最初に移住し、村長の妻となり、ティゼル、オーロラの母であるティアが最上位です」


 そうだよな。


 普段と違い、真面目モードのマルビットの言葉に、俺はうなずく。


「ですが、ティアが天使族を統率しているのか?

 できているのか?

 そう問われると、違うと言えます」


 そう……なるか。


「正直に言って、全体の統率はグランマリアのほうが頑張っています」


 あ、うん、たしかに頑張っていた。


「私たちがいる場合、グランマリアは統率を私たちに任せ、自分の仕事に専念しています」


 そうだな。


「私たちはガーレット王国にある天使族の里からこの村に通っていましたが、いまはこの村に定住していると認識しています」


 うん。


「そうなると、ティアを差しおいて私たちが統率する形が常態化しながらも、この村での天使族の代表はティアということになります」


 それでなにか問題が?


「指揮命令系統の混乱です。

 私たちとティアの意見が対立したとき、どちらの意見を優先すればいいのかわからなくなります。

 もちろん、正しくはティアの意見を優先すべきです。

 ですが、普段の指揮をとっているのは私たちです。

 ティアの指揮を聞かず、私たちに意見を求める者がでてきます。

 また、村長から天使族への指示はティアにされます。

 ティアから私たちに指示が伝わるのですが、どうしても正確なニュアンスに違いが出てきます。

 これでは村長の指示を正確に実行できません。

 さらには私たちの行動の結果も、ティアに伝えてから村長に報告されるのですが、その反応がティアに独占されています。

 行動が正しかったのか、それとも間違っていたのかの検証もできません」


 ごめん、早口でよくわからなかった。


 簡単に要点だけを言ってくれ。


「苦労を私たちに押しつけ、悠々自適(ゆうゆうじてき)なティアが許せない!」


 え?


 指揮系統とかいろいろ言ってた気がするけど、それでいいのか?


「要点はそれです」


 な、なるほど。


 えっと、それで大会議を開いていると。


「お屋敷の広い場所を借りて、すみません」


 いやいや、それはかまわないんだ。


 大樹の村にいる天使族が全員集合だから。


 ただ、その大会議に急に呼ばれたから、なぜ俺が参加しているのかの説明をまだ受けていないのだが?


「お気になさらずに」


 いやいや、気になる部分だ。


「では……あちらをごらんください」


 マルビットが指さした先にいるのはティア。


 俺がやってくる前から席に座っていたが、微動だにしていない。


 目を閉じて、じっとしている。


 マルビットに指を向けられても、反応しない。


 ……


 ティアはなにかに怒っているのか?


「いえ、寝ているだけです」


 は?


「寝ているだけです。

 こういった大きい会議では、寝るんです」


 いやいやいや、村で会議をしているときはしっかり起きているぞ。


 意見も言うし。


「では、声をかけてみてください」


 あ、ああ。


 俺はマルビットに言われ、ティアに声をかけた。


 ……


 反応がない。


「魔法で外部からの刺激を遮断しています。

 攻撃に対しても……」


 マルビットがなにか小さい物を指で弾いてティアに当てようとするが、当たる前になにかにはばまれて下に落ちた。


「簡単な攻撃では目を覚ましません」


 どうすればティアは起きるんだ?


「強力な攻撃を叩き込むか、なにかしらの言葉で目を覚まします。

 強力な攻撃をしたいところですが、なにかしらの対抗措置が取られていると思いますので、周囲に被害がでます。

 なので……ここは我慢して言葉でいきましょう。

 見ていてください」


 マルビットはルィンシァに目くばせをして一言。


「では、本日の会議を終了します」


 マルビットがそう言った瞬間、ティアは目を開いてこう言った。


「有意義な会議でした。

 会議の結果に従い、各自(はげ)んでください。

 では、解散!」


 ティアは立ち上がって一礼し、部屋から出て行こうとしたが……途中でルィンシァに捕まって席に戻った。


「え?

 あれ?

 村長?

 ……村長が参加するとは聞いていませんよ!」


 騙したなと怒るティアを無視し、マルビットがお願いしますと俺に頭を下げた。


 わかった。


 ティア、あとで話がある。


「え?

 あ、は、はい」


 それで大会議のほうは、どうするんだ?


 これで終わりじゃないよな?


「もちろんです。

 ティアも起きたことですし、これから始めます」





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― 新着の感想 ―
生物兵器に化学兵器も配備したのかぁ…。
多脚ロボット兵器かw
[良い点] ティア…あんた…… 正直笑った
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