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●人物紹介
リドリー 40代のふくよかなお姉さま。ダルフォン商会(合議制の商会連合)の幹部の一人。
朝。
率いてきた屋台スタッフが五村やシャシャートの街に戻る。
俺としては、連れてきたのだから最後まで責任を持って連れて帰りたいが、オークションの商隊を激励しなければいけないので、王都でお別れ。
見送る。
まあ、転移門を使えばすぐの距離なんだけどね。
なにかしらのトラブルがあったときの対応は、ドノバンたちに任せておいた。
昼過ぎ。
オークションを宣伝する商隊の激励のため、ダルフォン商会が所有する大きい倉庫に向かう。
同行者は、マルビット、ルィンシァ、それと天使族が五人。
マルビットたちは翼を隠し、普通に歩いている。
彼女たちが翼を出したまま学園の敷地から出た瞬間、俺が天使族に捕らわれていると思った王都の住人との戦いになったからだ。
五村やシャシャートの街なら、そんなことはないのだけどなぁ。
なんにせよ、同行者がトラブルを引き寄せてはいけないと翼を隠すことになった。
道中、ゴロウン商会の人たちと合流。
マイケルさんがいたのは驚いた。
俺に激励に行ってほしいと誘っておいて、その場に本人がいないのはありえないそうだ。
なるほど。
ああ、そういえば、昨日の祭りにいろいろと手配してもらったそうで、ありがとう。
助かったとアルフレートたちが言ってたよ。
「喜んでいただければ幸いです。
ところで、お酒の件ですが……」
酒?
ひょっとして昨晩の話がもう伝わったのか?
「はい。
ランダンさまから、今日の朝に連絡をいただきまして……」
行動が早いなぁ。
さすがは四天王、内政担当ということか。
「まずは、そういった事態になるような酒を差し入れたこと。
お詫び申し上げます」
え?
「王都の支店には上物を揃えるように指示していたのですが、どうも値段を基準に選んでしまったようで」
値段が高いのに不味い酒を差し入れてしまったのを、マイケルさんは謝っているようだ。
いやいや、気にしないでほしい。
差し入れてもらったのに、文句を言ったりはしない。
話題になったのも、王都にいまいちな酒が流通していることをドノバンが嘆いただけだし。
「ドノバン殿なら、いまいちな酒があることも承知しているでしょう。
そういった酒が差し入れられたことを問題にしているのかと。
申し訳ありませんでした」
いやいやいやいや。
そんな裏があったのか?
普通に酒の質を嘆いただけだと思うけどなぁ。
「それでなのですが……」
マイケルさんがなにか言いたそうにこっちを見ている。
なんだろう?
「ランキングに関して……少し手加減をしていただけると助かるのですが……」
マイケルさんの話では、票数に差をつけるとしても貴族と平民で一緒に選挙するのは厳しい。
さらにランキングの開催を周知させるのは大変だし、酒の味に拘れるのは余裕のある者だから、平民の大半は反発して荒れると。
そうかー。
「なので、ランキングは貴族のみでという形で許容していただけますと……
いや、罰であるというのは重々承知しているのですが、実現には大きな壁がありまして」
罰じゃない罰じゃない。
誰かに罰を与えるほど、立派な生き方をしてないよ。
ランキングは思いつきだから、無理なら無理でかまわないんだ。
ただ、酒の味を向上させる……ん?
マイケルさんの話だと、話題になった酒は水の代わりの酒じゃなかったのか?
「はい。
水の代わりになる酒はありますが、あれらは王都ではあまり出回りませんね。
いざとなれば魔法で水を出せますので」
そういえばそうか。
「水の代わりになる酒は、おもに軍で流通しています。
魔法は戦闘のためにとっておきたいですから」
なるほど。
水の代わりになる酒は、貯蓄できる水扱いか。
水も放置しておけばすぐに腐るからな。
ふーむ。
目的が違うから、水の代わりになる酒の味の向上を目指しても仕方がないのか?
美味い酒は美味い酒で貴族が造っているらしいけどな。
あまり流通しないみたいだけど……
売り出しているところは売り出しているという話だったよな。
問題なのは、値段が高いけど味がいまいちな酒か。
……
いまいちな味なのに、値段が高いのは理由があるのか?
「ここだけの話ですが……
貴族が借金をするための体面です」
?
なんでも、貴族がおおっぴらに平民から借金したというのは体面が悪く、それを隠すために酒で儲かったという形にしていると。
酒の販売価格に、借りる金額が上乗せされているのか。
「はい。
そして、酒を高く買ったという形を残すため、こちらも酒の値を当面は高くしておかねばならず……」
価値に合わない酒ができるということか。
「そうなります。
まあ、ほとんどは倉庫で眠らせたあと、ラベルを替えて適正価格で売りだしますね」
へー。
ちなみに、酒を造っていない貴族は、木材とか鉱石などの別の物でそういったことをするらしい。
木材とか鉱石は、産地を誤魔化しやすいので値が高いままということは少ないそうだ。
酒はどこ産か、気になるからな。
ああ、逆か。
木材とか鉱石などがない貴族が、仕方なく酒でそういうことをしているのか。
なにはともあれ。
俺が手を出せる部分ではないな。
ドノバンには悪いが、諦めてもらおう。
一応の頑張りとして、マイケルさんに資金を渡し、美味い酒が造れる可能性のある貴族を支援してもらおう。
「では、ランキングに関しては」
貴族だけなら大丈夫?
「はい。
ビーゼルさまやホウさまに主導していただけるでしょうから」
貴族たちが競い合って、美味い酒を造ってくれれば理想的か。
それでお願いできるかな。
「承知しました。
ありがとうございます!
この件、ランダンさまにもお伝えしておきます」
よろしく。
マイケルさんは走っていきそうな勢いだったけど、合流した目的を忘れてなかったようだ。
そう、目的はオークションを宣伝する商隊の激励。
正面に見える大きい倉庫でいいのかな?
そうらしい。
倉庫一棟を全て借り、現在はそこにオークションに出品する品を展示しているそうだ。
まだちょっと距離はありそうだが……
その倉庫から、魔族に変装したキアービットが小走りにやってきた。
俺たちを待っていたようだ。
違う?
ああ、俺を待っていたのね。
なにかあったのかな?
「急ぎじゃないけどね。
ダルフォン商会のリドリーが、差し入れたお酒のことで謝罪したいって村長を探しているわ」
リドリー?
ああ、ティゼルの手紙にあったな。
ダルフォン商会で働いているティゼルの友達だったか。
そして謝罪ということは、マイケルさんと同じかな?
「貴族と平民を交えてのランキング作りは、罰にしても厳しいって頭を抱えていたわよ」
同じのようだ。
ここ最近のキアービットは、国作りで忙しいティゼルに代わってダルフォン商会との関係強化をやっているらしい。
なので、手加減してほしいと俺に要求してくる。
いや、ランキングは罰のつもりじゃなかったから。
でもって、そのランキングは貴族だけですることにしたから。
「そうなの?
リドリーも喜ぶわね。
いまはティゼルのところに謝りに行っているから、もう少ししたらティゼルを連れてこっちに来ると思うわ」
ティゼルのところ?
「リドリー、村長と面識ないでしょ?」
ティゼルをよろしくと何度か手紙を送ったことはあるが、俺とリドリーは面識がない。
俺と直接会うには面識のある者に紹介してもらう必要があるらしい。
面倒くさいが、身元の保証が紹介頼りだから仕方がない。
今回の場合は、ティゼルが紹介者として選ばれたのだろう。
俺としては、別に紹介がなくても偽者と疑ったりはしないけどなぁ。
詐欺にひっかかる可能性を考えれば、用心も必要か。
……
あれ?
キアービットが紹介するのは駄目なのか?
「新参の私に頼るのは警戒したんじゃないかな。
それに、この恰好のときの私は、ティゼルの協力者という立ち位置だからね」
なるほど。
娘であるティゼルのほうが、話が早いか。
「そうそう」
わかった。
来たら挨拶しておこう。
「お願いね」
ああ。
ところで、気になっていたのだが……
変装中の言葉使いはそれでいいのか?
もっとお嬢さまな感じでいくと思っていたんだが。
「あまり自分を抑えすぎるのも問題かなぁと思って調整中よ」
まあ、キアービットの目的を考えれば、変装を重視してトラインに歪んだ情報を与えても困るか。
「だから、ホウさんにいろいろと教えてもらっている最中なのよ」
へー。
なんでホウ?
恋愛相談ならわかるけど、ホウに変装の技術とかあるのか?
え?
言えないから、本人に聞け?
わ、わかった。
今度、会ったら聞いてみよう。
村長とリドリーに面識がないと確認する作業に、時間を取られてしまった。
結論、村長とリドリーは面識はない。
だけど、私は私を信用していない。(過去、何度もやらかした)
面識があった場合、適切に修正します。
ご了承ください。




