秘密基地と難しいパズル
昼。
ため池の畔で、ポンドタートルたちが日光浴をしていた。
何頭かのポンドタートルは、甲羅を出してため池で泳いでいる。
……
一頭、変なのがいるな。
あれ、甲羅じゃなく腹だよな?
つまり、背泳ぎしているポンドタートルがいるのか?
んん?
よく見れば、バタフライやクロールをしているポンドタートルもいる。
去年の夏、泳いでいる子供たちを見て学んだ?
いや、学ばなくても泳げるだろ?
個性がほしい?
あー、ポンドタートルも数が増えているからな。
そういった者が出てくるのも必然か。
わかった。
ただ、無理をして骨を傷めたりしないように。
亀の骨格的に、背泳ぎやクロールをしているのは驚きだからな。
いや、俺の知っている亀とは根本的に違うのはわかるが、どうしてもな。
俺がため池にやってきたのは、ポンドタートルたちを愛でるためではあるが、それはメインではない。
メインはため池にいるであろう白鳥と黒鳥の様子を見にきたのだが……
いないな?
どこだ?
そして、ため池の畔に俺が知らない小屋があるのはなんだ?
小屋のサイズは……十二畳ぐらいの大きさ。
見た感じ、ハイエルフたちの手によるものじゃなさそうだ。
小屋からため池に伸びる大きなウッドデッキがある。
ウッドデッキに手すりがないのは、ウッドデッキからの景色を邪魔しないためかな。
そんな風に小屋とウッドデッキを見ていたら、小屋から人の姿をした黒鳥がウッドデッキに出てきた。
黒鳥はウッドデッキの上にビーチチェアとサイドテーブル、パラソルをセットし、ビーチチェアに座った。
手には大きな本があるから、それを読むのだろう。
休暇を満喫するスタイルだな。
っと、黒鳥が本を読む前に俺に気づいた。
俺は手を振りながら、黒鳥のいるウッドデッキに向かった。
「村長、どうしました?」
いや、屋敷でいつもの喧噪が聞こえないから、ため池にいるだろうと思って様子を見にきたんだが……
なにをやっているんだ?
「屋敷で騒ぐと鬼人族メイドが睨んでくるので避難を」
騒がなければ避難する必要もないのだが、まあ白鳥がいるからな。
で、この小屋は?
「今朝、作りました」
白鳥と黒鳥が?
「白鳥が面倒なことをするわけがありません。
私が作りました。
あ、材料はハイエルフのみなさまに分けてもらいました」
そ、そうか。
えーっと、小屋の目的は?
白鳥と黒鳥は、俺の屋敷で寝泊まりしている。
こういった小屋は必要ないと思うのだが?
「白鳥を隔離する空間を作らないと、迷惑をかけますので」
なるほど。
それなら、言ってくれれば協力したのに。
あと、村の中でなにかを建てたら報告は欲しいな。
「あれ?
連絡が届いていません?
白鳥に任せたのですが?」
そこで白鳥に任せるのが、黒鳥の詰めの甘さだな。
「す、すみません」
まあ、いいよ。
それで白鳥は?
「小屋の中です」
小屋の中、見てもいいか?
「ええ、もちろんです」
黒鳥は案内してくれそうだったが、それを断って小屋の中を覗いた。
……
小屋の中は一段高い板張りになっており、土足厳禁っぽい。
その小屋の中央に毛の短いカーペットが敷かれ、その上にコタツがあった。
春になると鬼人族メイドによって問答無用で回収されるあのコタツが。
そのコタツに腰まで入り、仰向けで寝ている人の姿の白鳥。
でもって、そのコタツの上にフェニックスの雛のアイギスと鷲がいる。
彼らは黒鳥が用意したのだろう小皿に入った煮物を突いている。
そして、その傍らには酒の入った中樽。
……
お前たち、ズルいぞ。
これ、秘密基地だろ!
ほら、酒スライムもやってきた。
間違いない。
小屋の片隅を占領させてもらう。
俺はここに隠し部屋を作るんだ。
見た感じ、本棚っぽくしておくから。
ん?
この扉は?
あ、トイレね。
防音、防臭を考えて二重扉か。
やるな。
俺はトイレを邪魔しない場所に、二畳ぐらいの隠し部屋を作った。
作って満足。
篭ったりはしない。
白鳥と黒鳥が使ってくれることを願おう。
そして屋敷に戻り、近くにいた鬼人族メイドに聞いた。
あの小屋のコタツは見逃すのか?
「白鳥さんが大人しくなるなら、仕方がないと判断しております」
なるほど。
なら、俺も気にしないようにしておこう。
「よろしくお願いします」
それで、アンとラムリアスはどこにいる?
「お二人とも、アンさまの自室でのんびりされています」
そうか。
出産はまだ先らしいけど、お腹はかなり大きくなっている。
なのに二人はなんだかんだと動くからな。
部屋でのんびりしているなら、いいことだ。
俺は二人の様子を見に、アンの部屋に向かう。
二人は妊娠していたために今年のパレードが見学になり、村の外のパレードも不参加だった。
窮屈な思いをさせている。
できるだけ、気を使っていきたい。
アンの部屋では、腕相撲をしているアンとラムリアスがいた。
たぶん、妊婦がやっちゃいけないことだと思う。
慌てて止めた。
いや、腕の力だけで腹には力を入れていないと言われてもだな。
のんびりするというのは、編み物とか読書であってほしい。
いや、ほかのことでもかまわないけど、腕相撲だけは違うと思う。
ほら、天使族が暇潰し用にと用意してくれたパズルとかあるんだろ?
それを二人で協力して解くとか……
難しくて二人して投げたと。
諦めるのはよくないぞ。
俺も協力するから、三人で頑張ってみよう。
どんなパズルなんだ?
この壁にめり込んでいるやつか?
投げたって物理的に投げたのか。
壊れて……ないようだ。
鉄製でよかった。
えっと、立体パズルか。
立体のどこかを押したり引いたりして、立体の中にある石を取り出すのが目的と。
知恵の輪の難しい感じのやつだな。
見た感じ、ここが動きそうだから、こうして、こうすれば簡単に……
…………
こっちを動かすと、ここが引っかかって動かない?
じゃあ、逆は……駄目?
え?
どうすればいいんだ、これ?
アンとラムリアスは二人して三日ほど考えたけど、駄目だったと。
なるほど。
俺は一日で諦めた。
無理。
三人で意見を出しあっても駄目だった。
こういったのはできる人に任せよう。
誰ができるかな。
ドラゴンたちは簡単にできそうだが、パズルを潰す方向で解くかもしれないから却下。
ルー。
意外と気が短いから、こういったのは駄目だと思う。
ティア。
このパズルは天使族が用意したから、答えを知っている可能性があるな。
答えを知っている者に解いてもらうのは、負けた気がする。
リアとか、ヤーはできるか?
意外とガルフとかダガが得意だったり?
俺は立体パズルを持って村を回った。
立体パズルを解けたのが白鳥だけだったのは、ちょっと納得できなかった。
黒鳥「村長に小屋を見せたら、ワンルームがツールームになった」
白鳥「狭くて私には合わない」
酒スライム(酒を隠す)
アン「結構な頻度で様子を見に来てくれます」
ラムリアス「ですね」
ハクレン「潰せばいいでしょ」
ラスティ「ですね」
リア「壊していいですか?」
ヤー「分解しましょう」
セナ「難しい……」
ガルフ「無理ですよ」
ダガ「構造的に無理なのではないでしょうか」
白鳥「解けた」
黒鳥「白鳥はこういったのが得意で……」
ティア「私もアレ、投げました」
時の流れが……もう九月って……




