村の外のパレード 王都での夜
村長視点です。
王城に用意された俺の部屋で、俺は大きく伸びをする。
今回の村の外のパレード。
ティゼルが裏でいろいろと動いていた。
なんでも、俺を目立たせたかったらしい。
村の村長ではなく、魔王国の重鎮として活躍してほしいってことかな。
父親としてはその気持ちは嬉しいが、自分の資質を考えても無理で無茶だと思う。
第一、魔王たちに迷惑をかける。
よろしくない。
なので、俺はティゼルの企みを邪魔することにした。
ティゼルに嫌われるかもしれないと三日ほど悩んだが……
これも教育。
仕方がないと諦めた。
邪魔するのは簡単だった。
俺以上に目立つ人物を作ってしまえばいいだけだ。
幸いにして、魔王国には魔王というすでに目立っている人物がいる。
魔王に頑張ってもらった。
俺は黒子でいい。
ティゼルはそう考える俺に不満なのかもしれないが、これは改善できない部分だな。
俺は村での生活が守れたら、それで十分なのだから。
とりあえず、王都で発生する戦闘が激しくならないように、天使族を抑えた。
次に、ドースたちに王都に入らないように指示。
クロの子供たちにも、戦闘になっても王都の住人を倒さないようにお願いした。
あと、ミノタウロス族とケンタウロス族に、戦闘になったら救助活動に参加するように頼んでおいた。
魔王はすごく協力してくれた。
とても助かった。
王都での戦闘は軍事演習ということにして収拾を狙い、それなりに上手くいったと思う。
ザブトンの子供たちのほかに、ルーやティア、ラミア族、巨人族も自主的に救助活動に動いてくれたしな。
怪我人は出たが、どれも数日で治る軽傷だ。
いや、魔法を使えばすぐに治るか。
死者がでなくて、ほんとうによかった。
ティゼルもそのあたりは気を使うだろうけど、魔王国の者たちはイベントごとで死者がでるのを許容する文化があるように思える。
文官娘衆たちと各地の祭りの話をしていると、簡単に死者が出てくるしな。
戦争が身近だからかな?
それとも、そういったイベントでの安全管理に問題があるのが常なのか?
なんにせよ、俺や俺の息子、娘が関わるイベントで死者は出したくない。
裏方で目立たない仕事を押しつけることになるが、プラーダたち古の悪魔族にそのあたりのフォローをお願いした。
プラーダたちは快く引き受けてくれて一安心したけど、彼女らがやったのは王都の住人に殺傷力の低い武器を渡してまわること。
攻撃されるこちらはいいのだけど、それで死者が出なくなるだろうか?
出なくなるらしい。
なんでも、その武器を渡すときに住人に防御魔法をかけたらしい。
お陰でよほどの不幸がないと死者はでないと。
うーん、魔法は便利だなぁ。
獣人族やハイエルフたちにも協力をお願いしようと思ったのだけど、そちらは好きにさせた。
あまり手を回し過ぎると、途中でティゼルが気づくからだ。
気づかれて中止になるならかまわないと思うのだけど、今後を考えるとここでティゼルに失敗を経験させたほうがいい。
そう判断した。
なので、結果的に縛りのない獣人族やハイエルフたちは戦闘を素直に楽しんだようだ。
しかし、まさかアルフレートたちが通う学園の制圧に行くとは思わなかった。
学園側はリアの母親であるリグネが防衛隊を指揮していて、かなり苦戦したらしい。
ただ、制圧には成功したので、リアたちハイエルフはかなり喜んでいた。
獣人族たちは疲れ果てたようだけど。
ああ、そういえばさっき、学園長である魔王の奥さんから笑顔で苦情を言われてしまった。
教育の場を巻き込むなと。
もっともだ。
あとで、獣人族やハイエルフたちに注意しておこう。
そうそう。
軍事演習であることをアピールするため、魔王が王城前で人を集めたとき、急に宣言を始めたのは驚いた。
前々から用意していた……いや、このパレードの真の目的があの宣言だったのかもしれない。
《人間の国々に対する戦争勝利宣言》。
なかなかすごい手を打つ。
戦争を一方的に止めるという宣言だからな。
もちろん、人間の国々からの反発はあるだろう。
だが、人間の国々は結束してはじめて魔王国と張り合える。
戦争を続けたくない人間の国もあるだろう。
結束は無理だと俺は考える。
しかし、それでも戦争は続くだろう。
それでは、魔王の宣言がただの言葉で終わってしまう。
魔王国の国政に口を出せる立場ではないが、俺は魔王に一つの提案をした。
人間の国と接している領地に、新しい国を建てることを。
その新しい国に、魔王国と人間の国々の橋渡しを担わせる。
検討してもらえたらありがたいと思ったのだけど、魔王は即断即決で受け入れてくれた。
大きな国をまとめているだけはあるってことか。
さすがだ。
そして、パレードと軍事演習は終了となり、夜会となった。
さて。
そう、さてだ。
ここまでの俺の行動。
いろいろとおかしい。
変だ。
うん、わかっている。
俺らしくない。
俺が天使族を抑えるために動いたり、国を建てろなんて言うわけがない。
当然、俺らしくないのには理由がある。
俺にアドバイスをくれた存在がいるのだ。
ティゼルがなにか企んでいることを俺に教え、王都での俺の行動を指示した者が。
ルー?
違う。
ティア?
違う。
答え。
俺とアンの息子。
そう、トライン。
村の外のパレードが始まる少し前、大樹の村でトラインは俺に伝えてきた。
ティゼルが考えていること。
この先、王都で起きることを。
そして聞かれた。
魔王国で活動する気はあるのかと。
質問の意味は広いが、答えを間違えたりはしない。
俺には大樹の村があればそれでいい。
大樹の村の存在が脅かされるなら立ち上がるが、そうではないなら積極的に関わる気はない。
そう返事をした。
トラインは承知しましたと俺に頭を下げ、行動を開始しようとしたので止めた。
トラインにはメットーラの手伝い……いや、言葉を濁さずに言おう。
ティゼルを抑えるために王都に行ってもらうが、それはティゼルとトラインを仲違いさせるためじゃない。
トラインがなにをする気かは知らないが、俺のためにティゼルのやろうとしていることを邪魔するのだろう。
それは理解した。
だが、いくら俺のためとはいえ、邪魔されたとなればティゼルの怒りの矛先はトラインに向かう。
それはよろしくない。
当たり前だ。
その怒りの矛先の前に立つべきはトラインではなく、親である俺だ。
俺であるべきだ。
だから俺が頑張ることにした。
そう、トラインがやろうとしていることを俺が代わりにやったのだ。
……
結果は上手くいったと言えるのかな。
俺がトラインの代わりに動くと言ったら、思いっきり使われたけど。
早まったかもしれないと何度も思わされた。
しかし、姉弟の仲が悪くなるよりはいいだろう。
うん、俺は間違っていない。
と、思う。
思うんだけど……
なあ、トライン。
「なんですか?」
俺は夜会が終わったあと、俺の部屋にトラインを呼んでいた。
聞きたいことがあったからだ。
新しく建てる国にティゼルが関わる。
俺から魔王に言って承認されたことだが、これはトラインの提案だ。
なぜそんなことを?
「ティゼル姉さまに学んでもらうためです。
魔王国では、ティゼル姉さまに甘い環境が揃っています。
これはよろしくありません」
そうか?
「はい。
多少、苦労する環境のほうがティゼル姉さまの成長に繋がると思います。
それに、ガーレット王国のことを考えると、新しく建てる国に天使族が関わっているほうがいいでしょう。
ガーレット王国の従順派……たしか《正統ガーレット王国》でしたね。
そこはティゼル姉さまの国に従属してもらう予定ですし」
ティゼルが関わったほうが、今後のためってのはわかるが……
「なにか問題が?」
ティゼルが王都から離れた場所に行くのはちょっとな。
「お父さまがティゼル姉さまを心配する気持ちもわかりますが、それは優秀な護衛を派遣することで和らげていただければと」
ティゼルの護衛。
トラインからは、ザブトンの子供たちをと希望されている。
そのあたりは、ザブトンと相談だが……
「天使族からも数人、護衛を出してもらえれば助かります」
まあ、そうだな。
ティアやマルビットに相談しておこう。
わかった。
夜遅くにすまなかったな。
ティゼルのことだから、早く聞いておきたかった。
「いえ。
ああ、フラウお母さまと、ユーリさんはどうします?」
ん?
あの二人がどうかしたのか?
「ティゼル姉さまに協力していたようですので」
……
フラウとユーリには俺から言っておくから、トラインがなにかする必要はないぞ。
「承知しました」
トラインは一礼して、部屋から出ていった。
廊下ではトラインと仲がいい山エルフが待っているから、夜遅くでも心配はないだろう。
まあ、いなくても自室に帰るぐらいは大丈夫なぐらいしっかりしているけど。
はぁ。
今回の件、トラインがいて助かったのは事実だが……
俺は息子や娘と、もっとコミュニケーションを取るべきだな。
あと、アンはトラインを厳しく育て過ぎだと思う。
トラインとの親子の関係、もう少し解れたものにならないかが最近の悩みだ。
●人物
ティゼル 村長とティアの娘。作中12歳ぐらい。
トライン 村長とアンの息子。作中10歳ぐらい。
●ご報告
ルビ指定が効いていないとの報告を受けますが、私のほうではルビになっています。
環境のせいの可能性があります。
もしくは「小説家になろう」の読者設定の可能性とか……
詳しくはわかりませんが、ルビ指定が効かない方は、そのあたりを見直してもらえると助かります。
よろしくお願いします。




