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村の外のパレード シャシャートの街 死者を迎える踊り

村長視点です。



●人物

アシュラ   三面六臂で足四本の骨の巨人(三メートルぐらい)。


 五村での俺の出番は終わった。


 俺の乗っている馬車は自動で走行、変形、合体をする予定だったが、事前の安全確認実験で失敗を三回繰り返したために廃案。


 馬車はユニコーンたちによってかれ、変形と合体はゴーレムたちによる手動になった。


 変形合体に気合を入れていた山エルフたちは、めちゃくちゃ落ち込んでいた。


 いろいろと協力していたインテリジェンス・ボックスたちも、がっかりしていた。


 まあ、個人的にはゴーレムたちによる手動での変形合体は、カーレースのピットインみたいで悪くはなかったと思う。


 観客たちも盛り上がっていたしな。


 悪くなかったんじゃないかな。


 うん。




 俺は五村からシャシャートの街に繋がる転移門を通り、シャシャートの街に到着した。


 まあ、転移門の位置は街の郊外だから、シャシャートの街に到着とは言いにくいけど。


 そして、馬車に乗ったまま待機場所に移動しようと思ったところで、踊っているドースたちが目に入った。


 ……


 よく見ると、ドースたちの前で十数人……イフルス代官が踊っている。


 観客もいる。


 なんだ?


 ダンスバトルか?


 いや、ジェスチャーが入っているから……なんだこれ?


 パレードの演目か?


 俺は馬車の近くにいた文官娘衆に視線を送ると、にっこりと笑顔でこう言われた。


「お手数をおかけしますが、ドースさまたちを止めていただけますか?

 このままではパレードの進行に影響がありますので」


 つまり、ドースたちが勝手にやっていると。


「なにかをするとの報告は、私は受けておりません」


 そうか。


 すまない。


 止めてくる。


 俺は馬車から降りて、ドースたちのところに向かった。


 馬車で行ってもよかったが、馬車は待機場所でメンテナンスチェックを受けないといけない。


 それに、馬車をいてくれているユニコーンたちが、あそこに行くのはちょっとという顔をしていたしな。


 仕方がない。



 俺はドースたちのところに駆け寄る。


 ガルフやダガ、レギンレイヴはパレードに参加中なのでいない。


 だが、護衛がいないわけじゃない。


 パレードに参加せず、俺の護衛として控えていたハイエルフが四人。


 さっきまではいつでも動けるように四人は無手だったが、今は二人が旗を持っている。


 俺が誰か、わかりやすくするためだそうだ。


 そうだな。


 俺が一人でいても、誰かわからないか。


 そして、その四人のハイエルフのあとを、俺が馬車から降りたことに気づき、パレードの隊列を離れてやってきたアシュラが追いかけている。


 アシュラは温泉地の代表としてパレードに参加していた。


 死霊騎士たちやライオン一家は村のパレードだけで十分と辞退したので、アシュラもそれにならうかと思ったのだが……


 村のパレードが楽しかったらしい。


 村の外のパレードへの参加にも意欲的だった。


 だが、さすがにそのままの姿では村の外のパレードの観客を怖がらせると、俺でもわかる。


 なので、アシュラは立派な服を着こみ、なるべく骨が露出しないような格好をしている。


 頭部はフルフェイスのかぶとをと思ったのだが、立派な服とフルフェイスの兜がこれでもかというぐらいに喧嘩をして違和感をかもし出してしまったので、仕方なくつばの広い帽子を被って、三枚の仮面をつけている。


 怖さは減ったと思う。


 ……


 体の大きさや手や足の数は、見逃してほしい。



 俺が駆け寄るのを、ドースたちが気づいた。


 しまったという顔をしている。


 ハクレン、ラスティは俺から顔をそむけた。


 喜んでいるのはヒイチロウかな。


 ドライムはソロパートなのか、キレッキレのブレイクダンスをしていて俺には気づいていない。


 あ、気づいたっぽい。


 動きが固まった。


 そんなドースたちに、俺が声をかけようとしたら止められた。


 イフルス代官だ。


「待ってほしい。

 いま、第三フェイズの六ターン、二エンド目だ。

 ここで止めるのはあまりに辛い!」


 ……


 す、すまない。


 すごくいい顔で言っているが、ルールがよくわからない。


 どういうことだ?


 野球でいう、三点差で九回無死満塁(ノーアウトフルベース)みたいな感じか?


 あと少しで終わるなら、さっさとやって終わらしてほしいと言いたいのだが……


 誰も説明してくれない。


 四人のハイエルフたちも、理解できない顔をしていた。


 困っている俺に救いの手を差し伸べてくれたのは、アシュラだった。


 ここは任せてほしい?


 いや、任せたいが状況はわかっているのか?


 大丈夫?


 ルールはわかっている?


 そ、そうなのか、それじゃあ任せた。


 俺の言葉に強く頷いたアシュラは、俺と四人のハイエルフを下がらせた。


 そして、ドースたち、イフルス代官たち、アシュラで正三角形になるようにポジショニング。


 そこからなにをするのかと思ったら、アシュラがいきなり踊り出した。


 全ての手を頭の上に掲げ、手首を活かした動き。


 足はひょこひょこと楽し気に動いている。


 なにやら既視きし感のある踊り。


 これって、まさか……


 俺が驚くより先に、声を挙げた者がいた。


「あ、あ、あれは……死者を迎える踊り(デッドマン・パレード)!」


 イフルス代官だ。


 腰を抜かしたように、尻もちをついている。


 そして、ドースたちも。


 さすがに尻もちはついていないが、おののいていた。


「こ、これを、ここで見ることになるとは……」


 ライメイレンやグラルがヒイチロウの前にかばうように立っている。


 危ない踊りなのか?


 その、すごく警戒しているようなところ悪いが、俺にはアシュラがやっているのは盆踊ぼんおどりにしか見えないのだが……


 うん、盆踊り。


 既視感があるのも納得の盆踊りだ。


 見ていたら俺も一緒に踊りたくなるのだが、その、なんだ、えっと……


 アシュラよ、確認いいかな?


 ああ、踊りながらでかまわないから。


 あー、いつのまにかアシュラの後ろで大量のスケルトンが同じように踊っているのはなんだ?


 バックダンサー?


 バックダンサーって、勝手に出てくるものなの?


 たしかに地面から生えてきてるけど。


 すごい数だぞ。


 スケルトンは十や二十じゃない。


 千はいる。


 そして、まだまだ増えている。


 このまま続けば、シャシャートの街の郊外はスケルトンで埋め尽くされるんじゃないかというぐらいに。


 このあたり、昔は戦場だったから?


 待て待て。


 ゾンビとかスケルトンは、実際の死者とは関係ないって聞いたぞ。


 魔力がどうとかって話で。


 関係あるスケルトンもいると。


 死霊騎士とか、そんな感じ?


 へ、へー。


 それで、この騒ぎはどうおさめるんだ?


 大丈夫?


 もう収まる?


 周囲を見ると、みんな同じように踊っていた。


 ドースたちも、イフルス代官たちも、そして観客たちも。


 いつのまにか輪を作って踊っている。


 これでノーゲーム?


 そういうルール?


 そ、そうなの?


 まあ、収まるならよかったが……


 スケルトンたちって、このままじゃないよな?


 終わったら土にかえる?


 それならいいんだ。


 いいんだが……


 アシュラよ。


 もう一つ、確認だ。


 うん、何度もすまない。


 簡単な質問だ。


 あれもこの踊りの影響か?


 終わったら土に還るのか?


 俺は遠くを見ながら言った。


 遠くからでもわかる巨体。


 くじらの白骨が地面から生え、空へ飛びだした。


 周囲の木々の大きさから考えると、たぶん全長は六百メートルぐらいあるんじゃないかな?


 すごく大きい。


 俺はアシュラに視線を戻すと、アシュラは仮面をつけているし、そもそも骸骨なので表情はわからないが、その体はすごく驚いたジェスチャーをしていた。


 ドースたちも驚いていた。


「あ、あれはまずい」


 ドースたちは踊りを中断して一斉に飛び立ち、ブレスで攻撃を開始した。





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― 新着の感想 ―
ドライムのキレッキレのブレイクダンスwwwコミュ障が頑張ってるのに止めるのは酷い笑 アニメ化の後は実写化だ、つまりそういう事だな
キバハゲデュエルを思い出す素人置いてけぼり感。
なんで新入りのアシュラが参加出来るのか? 今までの話の流れだと妻連中から文句出るのでは?
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