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村の外のパレード 五村・裏 前編

文官娘衆の視点です。


 私は魔族の女。


 男爵家当主の娘です。


 貴族学園を卒業したあと、領地に戻って結婚する予定だったのですが……相手方に不幸があって破談になってしまいました。


 結婚相手は親が決め、私は相手の顔も知らないなかで進んだ縁談でしたので、不幸があったと聞いても、ああそうかという感想しかでませんでした。


 新しい結婚相手を探してほしいところですが、相手に不幸があって破談になったのですから、早々に次を探すのは義理に欠けます。


 それなりの時間を置かなければ。


 しかし、だからと言って実家でだらだら暮らすのはしょうに合いません。


 私は王都に戻り、新しい結婚相手が決まるまでの仕事を求めました。


 タイミングがよかったのでしょう。


 私はお偉いさんの目に止まり、スカウトされて五村で働くことになりました。


 現在は、文官娘衆と呼ばれる名誉ある職についています。


 文官娘衆の先輩方は、貴族学園で有名だった人たちばかりで最初は怖かったのですが、それもすぐに慣れました。


 もっと怖い存在がいましたので。


 それも複数。


 ……


 慣れたというより、恐怖に対して麻痺まひしたというべきなのでしょうか?


 まあ、どちらでもかまいません。


 私は文官娘衆として、働いております。


 不満はありません。


 秘匿されていた大樹の村の存在を知り、行けるようになりましたし、村長ともお話ができるようになりましたから。


 誤解がないように強く言っておきたいのですが、私は文官娘衆となれたことを幸運と思っております。


 刺激に満ちた毎日です。


 以前なら会話をしようと思うことすら考えられない高みの四天王の方々とも、肩を組んで困難に対処できるほどになりました。


 遠慮とかしてたら、やっていけませんしね。


 私は文官娘衆になれたことを喜んでおります。




 そんな私は、五村で行われるパレードの開幕を見守っていました。


 フェニックスのアイギスさまが神々しく飛べたことに感動を覚えます。


 アイギスさまの努力を知っているからです。


 大樹の村のパレードが終わったあとから、アイギスさまは毎晩、ここに来て日の出のタイミングを計っていました。


 飛ぶ速度なども計測して、どう飛ぶかを細かく計算して。


 限りのある時間のなか、頑張っていました。


 その頑張りがこうそうしたのか、普段は小さく丸々としている姿のアイギスさまが巨大なフェニックスの姿になったときは、見守っていた鷲さんと一緒に驚いたものです。


 まあ、速度の計算はやり直しになってしまいましたけどね。


 そこは、ご愛嬌あいきょうです。



 アイギスさまの飛翔ひしょうから始まったパレードの先頭を飾るのは二人の騎士。


 人の姿になった白鳥さんと黒鳥さんです。


 村のパレードでは控えるので、こちらのパレードでの先頭が欲しいと要望された結果です。


 まあ、これは村長も認めているので問題はありません。


 問題は、彼女たちがかかげることになった剣です。


 当初は赤と青に輝く剣をそれぞれ持つ予定だったのですが、彼女たちが色について不服を言いました。


 白と黒に輝く剣にすべきだと。


 ……


 正直に言いましょう。


 私としては、どうでもいいです。


 好きな色の輝く剣を持ってくださいと言いたかったのですが、古典が好きな同僚が強く抵抗して一悶着ひともんちゃく


 なんとか白と黒で話がまとまりましたが、問題は続きます。


 赤く輝く剣と青く輝く剣は事前に用意していたのですが、白く輝く剣と黒く輝く剣は用意していません。


 ルーさまに頭を下げ、素材を渡し、鍛冶師のガットさまの協力を得て急造しました。


 急造だったのです。


 白く輝く剣と黒く輝く剣は、ちゃんと輝いているのですが……


 不安定で、爆発の危険がありました。


「大丈夫!

 なにかを斬ったりしなければ大丈夫だから!」


 とは、製作監督であるルーさまのお言葉です。


 さすがに危険な剣を持たせるのもどうかとなったのですが、白鳥さんと黒鳥さんはこれじゃなきゃ嫌だとまで言ったので、安全のために全身鎧フルプレートを着こむことになってしまいました。


 顔が隠れることになり、白鳥さんはとくに残念がっていましたが、それでも白く輝く剣が持ちたかったようです。


 私にはわからないこだわりがあるのでしょう。


 男装姿の二人を見てみたかった気持ちはありますが……


 安全を求めた村長の意向は無視できません。


 そして、その後ろを行進することになった近衛軍の方々には申し訳ありません。


 盾を持って、爆発に備えてもらいます。


 これは、後方を守るためではありません。


 パレードを見守っている方々を守るためです。


「衝撃を与えてから爆発までには時間があるわ。

 そのあいだに剣を捨て、周囲を盾で囲めば大丈夫なはずよ。

 あ、盾を構える角度は大事だから。

 なるべく衝撃を上にそらす感じで」


 試作の剣で爆発実験をしたルーさまのお言葉です。


 大規模な爆発であるなら、村長も所持を許可しなかったでしょう。


 結果、パレードの先頭の緊張感が凄いことになっています。


 まあ、緊張感がないよりはいいでしょう。


 うん、いいと思います。



 楽隊に続き、やってきたのは……無茶振りに無茶振りを重ねてくれた偉い人です。


 満面の笑みですね。


 ふふふ。


 こちらも微笑ほほえんでしまいます。


 他意はありません。


 ええ、ありません。


 実際、このパレードの裏でいくつかの策が進行していることは聞いていますしね。


 それらを聞かされたのは昨日ですが。


 ……


 怒っていませんよ。



 苦労を共にした四天王の方々が続き、ゴールさん、シールさん、ブロンさんの出番です。


 彼ら三人の順番は少し揉めました。


 本人たちは村長の近くを望んだのですが、ティゼルさまが前に位置することを求めたからです。


 三人には魔王国での立場もあります。


 今後を考えれば、このパレードで顔を売るポジションにいてほしいのでしょう。


 村長の近くだと、どう頑張っても目立ちませんからねぇ。


 仕方がないことです。



 獣人族の三人に続いては……


 王都とシャシャートの街のあいだにある街や村の代表ですね。


 あれ?


 困惑していますね?


 おびえている様子もあります。


 ちゃんと参加理由とか説明していないのでしょうか?


 トラブルがあっては困ります。


 同僚に確認します。


 ……


 確認しました。


 原因が判明しました。


 パレードが始まる少し前に、ほかの参加者を見てしまったそうです。


 ほぼ全員が倒れていたところ、パレードの順番が来たので起こされて参加しているとのことです。


 納得です。


 そして、馬車をなんとか用意してあげればよかったなと反省です。


 馬車は奪い合いになるぐらいに不足しており、彼らを乗せるのにちょうどいい馬車がなかったのです。


 歩くだけですので問題はないと思ったのですが……


 五村で確保している馬車を回し、どこかで乗れるように手配しましょう。


 あの様子では、五村で予定されているコースを歩くのも大変そうですからね。


 とりあえず、馬車が来るまでは頑張ってほしいです。



 困惑している彼らを追うように続くのは、魔王国の誇る正規軍の方々。


 ……


 ほぼ全員、指揮官クラスなのですが、大丈夫なのでしょうか?


 ここしばらく戦いがないからと気を抜き過ぎな気もしますが……


 まあ、私が心配することではありませんね。


 正規軍の方々は武器ではなく、農具を持っています。


 おのは武器にもなりますが、本来の使いかたは木を切ることですからね。


 これらは、魔王国は大樹の村に従っているというアピールです。


 大樹の村の旗、貸し出してもらえなかったからの策です。


 仕方なくですね。


 ちなみに、村長には伝えていません。


 どう感じるかは、村長のお心次第ですので。


 余計なことは言いません。


 私は文官娘衆(できる女)なのです。





こちらも分割になりました。

すみません。

後編の更新、急ぎます。


誤字脱字の指摘、ありがとうございます。

助かっています。

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― 新着の感想 ―
全話→前話
2025/09/14 17:54 荒ぶる神々
全話は、関係者視点だから、事情なんて出ないわねー
2025/09/14 17:53 荒ぶる神々
[良い点] それで大盾構えてたのかw 爆発実験してたルー流石。貴族の家を爆破して回ってただけある。
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