村の外のパレード 五村 後編
五村住人視点です。
本日、二話更新です。ご注意ください。
第五軍団から少し遅れてやってきたのは武神ガルフさまを先頭にした獣人族の一団!
見ていた者たちが大きな歓声を上げた。
パレードの雰囲気が変化したのがわかる。
そして、ハイエルフの一団が続く。
何人かの見物客が倒れたが、すぐに救護所に連れていかれた。
でもって本命。
インフェルノウルフ。
大丈夫だ。
俺は怯えない。
しっかりとその雄姿を見てやるぞ。
そう思ったのだが……
凄い数、いる。
うん、凄い数。
十頭じゃなかった。
二百はいる。
綺麗に並んでいるから、数えやすかった。
もうね、なんだこれってなったね。
俺の周りからは声が上がらず、ただインフェルノウルフの行進を静かに見守っているだけだった。
それを咎めるように、天使族とハーピー族が空を飛んだ。
天使族とハーピー族は、武装をしていた。
高い場所を飛んでいるのでよく見えないが、黄金の装備だ。
俺は綺麗だなと思ったのだが、歳を重ねた者たちが悲鳴を上げ、パニックを起こした。
そうか、天使族とはやりあっていたからな。
あちこちから「大丈夫です。天使族は味方です」と叫ぶ声が聞こえるが、パニックを起こした者の耳には入っていないようだ。
武器になる物を探している。
……
パニックを起こしているのではなく、冷静なのか?
パレードを警備している者たちがやってきて落ち着くように言っているが……
あ、取り押さえられた。
強制的に救護所に連れていかれるようだ。
ご苦労さまです。
そして、そういった混乱があってもパレードは続く。
天使族とハーピー族に続いてやってきたのは、悪魔族の一団。
……
……………………………………
こいつら、ただの悪魔族じゃない!
古の悪魔族だ!
世界を支配していたと言われる古の悪魔族!
それがなぜここにいる?
これだけいる?
俺の周囲では、天使族のときよりさらに混乱が起きた!
俺も混乱している。
歴史では古の悪魔族を打倒したから魔族が台頭したことになっているが、そんなわけはない。
古の悪魔族は勝手にいなくなっただけだ。
そのあとを魔族が継いだ。
みんな知っている。
その古の悪魔族が、なぜパレードに参加している?
魔王は古の悪魔族を従えたということか?
そのお披露目なのか?
さっきの天使族もそれか?
このパレードはそのために行われたのか?
よくよく古の悪魔族の一団をみれば、先頭にいるのは見知った顔。
プラーダさんだ!
おお、プラーダさん!
え?
プラーダさんって、古の悪魔族だったの?
俺は混乱していると自覚しつつも天使族や古の悪魔族がパレードに参加している理由を考えていたのだが、大きな振動によってそれは強制的に止められた。
ドラゴンだ。
神社の正門を通れない巨大なドラゴンは、神社のある山の陰から飛んで着陸した。
その着陸のときの衝撃が大きな振動の正体だ。
そういえばドラゴンもパレードに参加するのだったな。
そんなふうに考えることもできなかった。
俺は固まった。
息をするのも忘れた。
ドラゴン。
一頭でも恐ろしい存在だとわからされるのに、それが十数頭もいる。
それぞれが予行演習のときにいたドラゴンよりも強い。
圧倒的に強い。
どれほど強いかなんて欠片もわからないが、予行演習のときにいたドラゴンは実は子供だったのではと感じる。
それほどの力量の差がある。
そして、絶対に勝てない相手だと理解してしまう。
生き物としての格が違う。
俺はこのドラゴンを見ていいのか?
頭を下げなくていいのか?
そう思うのに、動けない。
指すら動かせない。
死を近くに感じる
生を近くに感じる。
なんだこれ?
神?
そうか、目の前にいるドラゴンは神か。
俺の目から、涙が流れていた。
圧倒的な存在を見たことで感動しているようだ。
……
首がいっぱいあるドラゴンがいる。
ちょっと怖い。
ほかのドラゴンよりも大きいし。
あ、ときどき五村に来るドラゴンもいる。
手を振ってくれているけど、神々しさにやられて動けない。
いつもはもっと親しみやすいでしょうに。
ああ、もう、どうなってしまうんだ。
俺は涙を流しながら、ドラゴンたちの行進をただ黙って見送った。
分割するか、一気に乗せるかで悩む分量だったのですが、分割してすぐに更新することにしました。
ご迷惑をおかけします。
あと、余談ですが……
最終回っぽい展開との意見がありますが、最終回ではありません。
まだまだ続きます。
ご愛読いただけると、幸いです。
よろしくお願いします。