見慣れぬ怪しい生物と外のパレードの準備
村のパレードが終わった翌日。
宴会の片づけがだいたい終わったお昼ごろ。
温泉地に戻る死霊騎士やライオンたちに、一緒にいた見慣れぬ怪しい生物の紹介をしてもらった。
見慣れぬ怪しい生物の見た目は骨。
死霊騎士みたいな感じなのだが、サイズは死霊騎士の倍ぐらいの三メートルちょっと。
巨人族並みだな。
そのサイズだから、当然ながら骨は太い。
さらに大きな顔が三つに手が六本、足が四本あった。
三面六臂だから、阿修羅?
いや、阿修羅の足は二本だったから違うのだろう。
骨だし。
上半身が骨の阿修羅で、下半身は骨の……なんだろう?
構造的には人間の足のようなのだが、四本の足はそれぞれ四方に向いている。
それでまっすぐ歩けるのが疑問だが、問題なく歩いている。
いや、まあ、骨が歩いている事自体が不思議だが、いまさら言うまい。
魔法は凄いということだ。
この見慣れぬ怪しい生物、つい最近に温泉地に辿りつき、死霊騎士やライオンたちと一緒に生活を始めていたらしい。
俺への報告は、この村のパレードでやればいいやという判断。
なるほど。
まあ、急いで報告する必要もないか。
死霊騎士やライオンたちが連れてきたということは、危険もないのだろう。
それで、えーっと……名はなんというんだ?
名はない?
記憶も曖昧?
気づいたら地中に埋もれていた?
身動きがとれずに過ごしていたら、地崩れでなんとか出ることができたと。
苦労したんだな。
ああ、定住してもかまわない。
温泉地で大丈夫か?
そうかそうか。
ただ、グータラはさせないぞ。
わかっていると思うが、仕事はしてもらう。
死霊騎士やライオンたちと同じく、温泉地の安全確保だ。
よろしく頼むぞ。
えーっと……
名がないのは不便だな。
好きに呼んでいい?
そうだな。
それじゃあ……
アシュラで。
捻りがなくて申し訳ない。
アシュラは死霊騎士たちと一緒に温泉地に戻っていった。
頑張ってほしいものだ。
……
しかし、骨のままなのは見た目的にちょっと貧相だな。
全裸ということにもなるし……
ガットたちに頼んでアシュラの鎧や兜を用意してもらうべきかな?
ん?
ザブトンの子供たちがやってきて、大丈夫だと前足を上げていた。
すでに衣装を渡してあると。
おお、すまない。
助かる。
ただ、武器がないから、ガットたちに頼んでほしい?
そうだな、安全確保をするためには武器が必要だ。
わかった、俺のほうから頼んでおくよ。
どんな武器がいいとか言ってたか?
ちょっと湾曲した剣?
了解。
ガットに頼んで……六本?
なるほど、ちょっと湾曲した剣を六本ね。
わかった。
ただ、数を揃えるとなると少し時間がかかる。
当面は五村で売ってる剣で間に合わせてもらおう。
悪い武器じゃない……はずだ。
ヨウコに連絡して、すぐに用意してもらうよ。
ザブトンの子供たちにそう伝え、俺は屋敷に戻った。
さて、村のパレードは終わった。
続いて外のパレードと行きたいのだが、調整等ですぐにとはいかなかった。
魔王やヨウコ、シャシャートの街のミヨから、十日は待たせないとは聞いているので……
まあ、十日後だろうなと勝手に考えている。
うん、だいたいこういうのは十日後なんだ。
頑張って九日後。
そういうものだ。
しかし、外のパレードを急ぐ必要はないが、いつまでもお祭り気分が続くのは困る。
なにごともメリハリが大事。
あと、山エルフたちの体調が心配。
一応、村のパレードの直後は休んではいたのだけど、いまはパレードの最中に動かなくなった櫓を解体、さらなる原因の追及をしている。
そして、以前作った試作の櫓や馬車を引っ張り出し、改善改良を考えている。
山エルフのことを考えれば、外のパレードは遅いほうがいいのだけど、きっと時間があればあるだけ注ぎ込む。
無茶をする期間は短いほうがいい。
なので、十日後、もしくは九日後と決まったのはいいことだろう。
それに、なんだかんだで間に合わせるだろうし、間に合わなかったとしても普通の馬車に乗ればいいだけだからな。
そういえば、外のパレードに参加するために滞在している者たちが待ち疲れないか少し心配だな。
主に五村の近くで待機しているワイバーンたち。
一応、問題ないとは聞いているけど。
五村の周囲を荒らさないように、狩りを控えている様子がある。
適度に食糧の差し入れをしておいたほうがいいかな。
あと、外のパレードにも参加するユニコーンたち。
角が治療できた喜びを抑えつつ、牧場エリアの片隅で大人しくしている。
本来のユニコーンはもっと自由奔放なのだが、角が折れたユニコーンは臆病になり、森の奥などに引き篭る。
角が治療されても、そのあたりは治らないらしい。
元気な馬たちに気後れしながら一緒にいるユニコーンの姿は、なかなか珍しい。
ただ、そのことに疲労を覚えている個体もいると、世話をしている獣人族の女の子たちから報告されている。
注意して見ててやらないとな。
まあ、タフな何頭かの個体はこの村での定住を希望している。
牧場エリアの拡張も考えないといけないな。
翌日。
屋敷の玄関前に立つ俺の前に、リアたちハイエルフ一同が整列していた。
「それでは行ってまいります」
リアが俺に向かって敬礼し、後ろのハイエルフたちがそれに続く。
リアたちは五村に向かう。
ヨウコの要請だ。
外のパレードを観覧するためのスペース作りが遅れており、その助けが必要らしい。
五村の神社作りで仲良くなった大工たちからの嘆願もあったので、リアたちは快く引き受けてくれた。
助かるが、無理はしないように。
あと、たぶんだけど余計な仕事も頼まれるから覚悟するように。
ちなみに、文官娘衆の大半も五村に移動している。
なんでも、外のパレードの出発場所を五村近くの山の神社にするらしく、そこでやる演出の最終調整だそうだ。
フラウは村に残っているので、ユーリが現場で指揮をしているらしい。
余裕があれば、そのあたりの様子をみてやってほしい。
「承知しました」
リアたちが五村に向かった。
……
それに続くように山エルフたちも五村に移動した。
大樹の村で馬車を完成させても、神社まで運ぶ時間が必要だと気づいたからだ。
神社に泊まり込み、時間ギリギリまで製作するそうだ。
まあ、神社には幸いなことに多くの宿舎が空いている。
生活には困らないだろう。
銀狐族たちに迷惑をかけなければいいが……
んー……
料理する者を派遣しないと駄目かな?
アンやラムリアスが妊娠中で動けないので、鬼人族メイドたちは派遣しにくい。
定期的に様子を見に行くことにしようと思う。