超高速 村のパレード 後編
本日、二話更新です。(二話目です)
俺の乗り換えというトラブルでパレードは一時中断になったが、すぐに再開された。
俺の乗る櫓に続くのはアルフレートやウルザ、ティゼルを中心に、村の子供が乗った櫓が三台。
櫓の上にはイースリーの姿も見える。
イースリーは櫓に乗ることを遠慮していたから、ウルザに言われたのだろう。
ヨウコの娘、ヒトエの姿もあるな。
周囲と仲良くやっているようでなにより。
その後ろに、鬼人族メイドたちが真っ白なコックコートを着こんで乗った櫓。
いつものメイド服じゃないので、なかなか新鮮だ。
それに食材を詰め込んだ馬車が数台続く。
たぶん、今朝方に狩った巨大なイノシシなのだろうけど、ちょっと生々しい。
その馬車の後ろに、ドワーフたちの一団と、酒だろう樽が満載された馬車がこれまた数台。
ドワーフたちは鎧を着こんで食材を詰め込んだ馬車と樽が満載された馬車を警戒するポジションなのだが、どうみても樽が満載された馬車のほうが厳重に守られている。
高い場所からだとよくわかるなぁ。
まあ、ここで襲われる心配とかないから、べつにかまわないけどな。
そのドワーフたちに続き……
一村の住人の一団。
二村のミノタウロス族の一団。
三村のケンタウロス族の一団。
四村の悪魔族、夢魔族の一団。
練習の成果を発揮するように、綺麗な行進とパフォーマンスを見せてくれている。
……
四村の夢魔族のみなさん。
もう少し衣装はなんとかならなかったのかな?
動きやすさを重視して、布が少なくなるのはどうかと思うのだが?
あと、紐は駄目だと思うんだ。
あ、四村の悪魔族によってマントを羽織らされている。
よくやった。
四村の一団に少し遅れて続くのが馬車に乗ったフェニックスの雛と鷲、白鳥、黒鳥。
ちなみに、フェニックスの雛のアイギスと白鳥はパレードの先頭を主張していたが叶わず、外のパレードで目立つ位置を振られていることがわかるまで面倒くさかった。
そのあとは、温泉地の死霊騎士とライオンの一団。
……
見慣れぬ怪しい生物というか、骨がいるが……
死霊騎士の仲間らしい。
あとでしっかり紹介してもらおう。
リザードマンの一団。
リザードマンたちは揃いの四メートルほどの長い槍を持っての行進だが、槍の先がほとんど乱れないな。
ずいぶんと訓練したのだろう。
そして最後尾は前方のザブトンたちの一団に加わらなかった、ザブトンの子供たちだ。
身体の大きいマクラたちの上に、小さいザブトンの子供たちが乗って行進している。
レッドアーマーやホワイトアーマーの姿もある。
ん?
即興で糸を編んで、旗を作るのは凄いな。
大樹と蜘蛛か。
かっこいいじゃないか。
しかし、大量に旗を編んでも飾る場所が……
ああ、リザードマンたちの長い槍の先につけるのね。
リザードマンたちの動きに動揺がないから、予定された行動なのだろう。
旗のついた槍を持つリザードマンたちの歩みが速くなり、俺の櫓の周囲にやってくる。
あ、旗のデザインは大樹と蜘蛛だけじゃないんだな。
大樹と竜や、大樹とインフェルノウルフ、大樹と天使族、大樹とハイエルフなど、各種族が大樹と一緒に編まれている。
各種族の特徴を捉えている。
よくできているぞ。
俺はそう、遠くのザブトンの子供たちに手を振り、行進を続ける。
これが今年のパレードの全容だ。
いつもはいる魔王たちや五村、シャシャートの街のマイケルさんたちの参加がない。
外のパレードでバタバタしているからだ。
グラッツだけは二村のミノタウロス族の一団に混ざって行進していたけど。
大丈夫なのかな?
まあ、俺が心配することじゃないか。
ヨウコは参加できたけど、五村が心配だと不参加だった。
パレードは定められたルートを練り歩いたあと、広場に到着した順に解散していく。
今年は派手なことはしない。
派手なのは外のパレードのときに取っておくそうだ。
それに文句を言ったのは天使族の一部だけだったので、問題はない。
パレードのあとはドワーフたちによって護衛されていた食材を詰め込んだ馬車から下ろされた食材を使ってのバーベキューが行われる。
もちろん、馬車に載っていない食材も使う。
馬車に載せていたのは、パフォーマンスだからな。
コックコート姿の鬼人族メイドたちが手際よく調理していく。
大鍋もいくつか出てきたから、バーベキュー以外の料理も出てきそうだ。
獣人族やラミア族も手伝ってくれているな。
助かる。
それじゃあ、手の空いた者はテーブルの用意をするか。
ザブトンたちは、飾り付けを頼めるか?
リザードマンたちは、広場の中央に大きいたき火の準備を頼む。
クロたちは周囲を警戒。
そろそろ日が落ちるからな。
わかっている、ちゃんとお前たちの分は取り置いておくよ。
……ドワーフたちよ。
樽の酒も飲むつもりだが、馬車に積んだからと全て飲む必要はないからな。
ドラゴンたち、ドラゴンの姿で飲むのはなしだ。
あっというまに酒が消える。
邪魔だから、人の姿になってくれ。
あと、山エルフ。
うん、頑張っていたのは知っている。
最後のほうは徹夜続きだったろ?
無理するな。
寝てていいぞ。
食べてから寝る?
まあ、かまわないけど無理はするな。
反省と再設計は明日にしろ。
寝不足な状態でやっても、やり直しになるだけだぞ。
あー、ついでだ。
言っておこう。
外のパレードには、行進のほうに参加するように。
自分たちは裏方が似合うからとか言わない。
文官娘衆たちも、外のパレードには参加するんだから。
……
参加に前向きになってくれたのは嬉しいが、自分たちが乗る馬車ならもっと改造できるとか考えないように。
普通の良さを再認識してほしい。
まあ、細かい話は明日だ。
食べるなら準備の邪魔にならない場所で待機だ。
文官娘衆たちも、休んでいていいぞ。
外のパレードで、また忙しくなるんだろ?
今ぐらいは休んでおくように。
いや、まあ引き受けたのは俺だけど……
はい、助かっています。
違う?
えーっと……
働きに期待する!
こんな感じでいいかな?
ははは、似合ってないのはわかっているよ。
今年の村のパレードは無事に終わり、翌朝まで宴会が続いた。